表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/167

ゾンビは病院とは縁がない

読んでくれると嬉しいです

 目覚めると、そこは和風の部屋だった。

 ……あっれぇ? おっかしいなぁ。普通病院じゃないのかなぁ?

 しかし、この部屋。一体どこだ?

 俺は体を起こして周りをみると、


「起きたか。御門恭介」

「……なんで婆さんがここに?」


 俺に声をかけてきたのは神崎の婆さんだった。

 婆さんはお茶を飲みながら、深くため息をついた。


「お前は馬鹿なのか? 神と言われるスサノオに素で挑むなど、愚かな行為をしおって」

「……ああ。俺は負けたのか。にしては、すっきりしてんなぁ」

「何を平和な考えをしているのだ。状況は悪化したのじゃぞ? お主、もうあの娘には手を出すな」


 婆さんが言ったことがなぜかすんなり理解できない。

 綺羅を諦めろと言っているのだろう。だが、俺はそれをできそうにない。

 俺は立ち上がって、


「すまん。それ、できそうにないわ」

「待ってください。先輩」


 俺を呼び止めたのは神崎だった。

 しかし、格好がおかしい。なんで、全身ビッショリなんだ?


「神崎……風呂でも入ってたのか?」

「前にもそんなこと言われましたね……じゃなくて、待ってください」


 神崎のその反応に、俺は少し違和感を感じた。

 同時に、綺羅の家に行くときに会った神崎にソックリな人にあったことを思い出す。

 まさか、あの偽物か?


「お前、誰だ?」

「神崎真理亜ですよ。歳は違いますが」

「おいおい。あの時は話さなかったのに、今日はすんなり話すじゃねぇか。ホントに神崎なのか?」

「本当ですよ。その人は本物です」


 俺は神崎と話していたはずなのに、横からまたしても神崎が現れ、目が点になる。

 おおう? これは……なんかおかしい気分になるな。

 俺が困惑していると、偽物神崎が口を開く。


「混乱するのもわかりますが、まずは聞いてください。綺羅さんはあのままにしておいたほうがいいと思ういますよ?」

「……な、なんでだよ」

「これは未来のあなたのことですが。三年後、あなたは時間を操る相手と対峙し、殺されます」

「……は? 俺は死んでも死なないゾンビだぜ? なにかの間違いだろ?」

「いえ、本当のことですよ」


 偽物神崎は真剣な眼差しで俺を睨むように見る。

 どうやら、嘘ではないようだ。だが、どういうことだ? 

 目の前にいるのは神崎と、偽物の神崎。偽物の神崎は未来のことを知っていて、綺羅を助けるなと訴えてくる。

 混乱する頭に、それらを正確に理解できるはずもなく、俺は行動を止める他なかった。


「まず。お前は未来から来たってことでいいんだな?」

「まだそれは言ってませんが、よくわかりましたね」

「当たり前だ。未来のことを話すのは未来人くらいだ。それで、お前は未来の神崎だと?」

「ええ。まあ」

「んでもって、未来で俺は死んだと? ったく、何が何やら、全くわからねぇ」

「それでも、行ってはいけないということくらいわかりますよね? ここが分岐点なんですよ。あなたは、綺羅さんを助けに行ってはいけない」


 ったく。何だって言うんだ。未来の神崎は馬鹿な事を言うし、神崎もそれを理解しているみたいだ。

 みんなグルってことか? だとしたら、何が目的だ? 俺を死なせないため? 意味がわからないぞ。

 俺はわけがわからないことは後回しにして、今理解できる範囲での答えを出すために頭を回す。

 現状、綺羅は何もされてはいない。だが、きっと、いつか被害を被る時が来る。

 なら、助けなくちゃいけないんじゃないのか? でも、助ければ未来、俺は死ぬ。

 一体、どうすればいいんだ?


「先輩……」

「お、おい!? か、神崎さん!?」


 この時代の神崎がなぜか俺に抱きついてきた。

 神崎の体の柔らかさで、思考が焼ききれ何も考えられなくなる。


「先輩が綺羅さんを大事なのはわかります。でも、でもですね? わ、私だって、先輩のことが大事なんですよ。傷ついて欲しいとは、思いません」

「か、神崎……」

「真理亜です」

「え?」

「真理亜って呼んでください、先輩」


 神崎……いや、真理亜は甘い声で強請るように俺を見上げながら呟く。

 こんなの、反則じゃね?

 男とは、昔から可愛い女の子には弱い。というよりも、可愛い女の子のためなら命だって投げ出せるほどの馬鹿だ。

 よって、目の前で可愛い真理亜がこんなことをすると、


「ぁ……ああ」


 彼女いない歴=年齢の男子にとってどうすればいいのか分からず、脳内がお花畑になる。

 完全に何も考えられなくなった俺は、嗚咽にも似たものを吐き出すことくらいしかできなかった。

 その日、俺は結局、布団から出ることはできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ