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幼馴染は悩みでキャラを忘れてる?

読んでくれると嬉しいです

 なんだかんだで、今日は死なずに帰れるようだ。

 そう安堵しながら、俺は大きく肩を落とした。

 もっと喜べばいいじゃないかと思うか? なら、この現状を見てみろ。

 俺に肩車されているクロエ、それを睨む綺羅、微笑ましそうに眺めている神崎。

 ほら、喜べるか? んん? 喜べますか? 無理に決まっている。


「はあ……」

「どしたの? もしかして疲れた?」

「それもある。お前って意外とおも――イダダダダダ! 痛い痛い! 髪の毛引っ張るな!!」

「あ、ごめん。で? どしたの?」

「だから、お前がおも――おっと、同じ手は食わないぞ? ゴホッ! か、神崎さん? なんで肘で俺のアバラを……」

「いえ、なんとなく、その……えへっ♪」


 クロエの攻撃と、綺羅の八つ当たりに気を向けていたため、神崎に気づかず食らってしまったが、どうしたのだろう。待ってはいないが、綺羅の攻撃が一向に来ない。

 変に思って綺羅の方を見ると、当の本人はあさっての方向を見てボーッとしていた。


「おい、綺羅?」

「……え? ごめん、何か言った?」

「いや、何も言ってないし、何もしてないけど……どうしたんだ?」

「ううん! 何でもない! じゃ、じゃあね!」

「あ、おい! 俺の晩飯は!?」

「適当に作って食べて!」


 なん……だと……?

 俺は走り去る綺羅の信じられない言葉を聞いて、その場に固まってしまった。

 晩飯を、適当に作って食べろ? 無理だ! 俺には料理をする技術などない!

 引き止めようと足を動かした瞬間、俺は気がついた。

 綺羅の姿は……もうないということに。

 終わった……飯が、ない。

 綺羅の唯一の価値が、今の一言で崩壊した瞬間だった。

 俺は救済を求めるように神崎の方を見ると、


「な、なんですか?」

「神崎。お前、確か料理得意だったな?」

「ま、まあ、人並みにはできますけど……それが何か?」

「今日、俺んちで飯を作る気分じゃないか? ほら、アマテラスのお世話よりマシだろ?」

「……反論できないのが不思議なくらい反論できませんが、いいんですか? 私、殺されませんか? 綺羅さんに」

「安心しろ、何とかする」

「先輩の安心しろは全く安心できませんね……」


 神崎は口元を引き攣らせながら、仕方ないというふうに承諾してくれた。

 助かった! これで今夜も飯にありつける!

 本気で祈る勢いで、俺は家までクロエを肩車して歩いて行った。








 美味しそうな匂いがして、キッチンに来ると、神崎がエプロンをして料理をしていた。

 どうやら、今日は生姜焼きみたいだ。どうりで、さっきからいい匂いが……。


「もう、先輩ったら。まだご飯じゃないですよ?」

「その姿で言われると、なんだか若奥さんみたいだな」

「え? ええ!? わ、若奥……先輩のバカ!!」

「……ごめん。なんで殴られたのか説明してくれる?」

「先輩なんて知りません!」


 顔を真っ赤にして、神崎が再び料理に集中してしまった。

 ほんと、なんで俺殴られたんだろう? 心にもないこと言ったから? それとも、変な目で神崎を見ていたから? う~ん。心当たりがありすぎてどれが理由かわからないな。

 殴られたのでつまみ食いを諦めた俺は、一人で遊んでいるクロエの方に向かった。


「クロエ、何してんだ?」

「え? お人形遊びだけど?」

「おお、それは幼女に似合いそうな……ごめん、このわら人形何?」

「だから、お人形遊びだって。こうやって柱にわら人形を合わせて……おりゃ!!」


 そう言って、笑いながら楽しそうにわら人形を柱に叩きつけるクロエ。


「ちょ! それ使い方違うから! 本当の使い方より無残だから!」

「はははは! どうだ! これがジオン軍の力だよ!」

「誰の真似だよ!? 少なくとも、そんなシーンはなかったよ!?」

「もう、うるさいなぁ。お人形遊びの邪魔なんだけど?」

「お人形がかわいそう! それ、お人形がかわいそうだから!」

「むぅ……じゃあ、今度は火炙りに――」

「絶対にやめてくれ!!」


 クロエが片手に炎を灯らせた瞬間、俺は呪われたわら人形を取り上げ、丁寧に扱った。

 まさか、人生で初めて呪いのわら人形を触るのが、誰かを呪うのではなく、呪われたわら人形を守るためだとは誰も考えられないだろう。しかし、それが現実だ。

 人形を取り上げられ、クロエはムッと怒って、目に涙を浮かばせていた。

 え? 待って。この場合、被害が来るのは……。


「先輩? なんでクロエさんが泣いているんですか?」

「か、神崎!? いや、これは……」

「それに、その手に持っているのは呪いの藁人形ですか? ……なるほど、それでクロエさんを怖がらせたんですね?」

「いや、これはクロエの持ち物で……な、クロエ?」

「違うよ? 恭介のだよ?」

「……先輩?」

「は、はい?」

「いっぺん、死んでみます?」

「丁重にお断り――」

「ダメです♥」

「ですよねー」


 笑顔の裏に隠された、黒い感情が俺の目にハッキリと写る。

 ああ、これは……死んだな。


「じゃあ、先輩。ちょっと……超痛いですからね?」

「ちょっとじゃダメなの? ねえ? ちょっとがいい――あ……」


 こうしてまた、俺は心臓を一突きされ、天に召されることもなく、現世に戻るのだった。

 ほんと、なによこの生活。心臓に悪いわー。むしろ、刺されて悪くなっているって感じ? まあ、完全無欠に蘇るのですが。

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