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これはゾンビですか?

読んでくれると嬉しいです

 クロエとカオスとの事件の終わりに、俺はとんでもないことを思いだした。

 事件解決後、残り一日で春休みが終わりだったのだ。そして、それを最終日である今日思い出した。

 もちろん。思い出したからには宿題というものが浮上してくるわけだが、俺は事件のことと家の焼失のせいですっかり忘れていた。

 つまり、最終日にも関わらず宿題は溢れかえるほどあるのだ。


「……先輩、まさか忘れてたんですか?」


 神崎に助けを求めに行くと、静まり返った(もしくは冷え切った)目で見られ、正直怖かった。

 忘れるもなにも、全部クロエが悪いんですよね!? そうですよね!?

 ということで、今度はクロエを問い詰める。


「おい、クロエ! お前のせいで宿題が終わらないんだけど!?」

「……そう、それは悪いことをしちゃった。手伝ってあげるから見せて?」

「おお、お前は神様だ!!」


 クロエは話が通じるいい子だった。俺は泣く泣く宿題を見せる。

 すると、


「……言いにくいんだけど、あ、アタシ、高校の勉強わかんなかったんだよね」

「……オーマイゴッド」

「呼んだかい?」

「お前はお呼びじゃねぇ!」


 なんてこった。心優しいクロエは頭の方は宜しくなかったようだ。


「……今、妙にカンに障ることを言われた気がするんだけど?」

「何かの間違じゃない? もしくは間違いだ」


 クロエの追求も面倒なのでスルーし、宿題をどうするべきか考えていると、神崎が俺を呼び止めた。


「あの、先輩」

「あ? なんだよ、神崎。俺宿題で忙しいんだけど?」

「そのことなんですけど。さっき、おばあさまに言ったら事と次第によっては免除するそうです」

「ほ、ホントか!? で? 何をすればいい!?」

「そ、そのことなんですけど……」









「ウェイターさん」

「はい」


 見知らぬ女性に呼ばれ、俺は空になったコップを下げる。

 何をしているかって? パーティーのウェイターですけど? 何か?

 そう、これがあの婆さんが出した条件だった。


『今日、パーティーがあるんですけど、そこでウェイターをすると、宿題は免除だそうです』


 神崎のあの言葉には流石に耳を疑ったな。だって、高校生の俺がウェイターですよ? できるとお思いですか?

 俺が小さくため息を付くと、空のコップを指定された場所に持っていった。

 にしても、テレビで見たことがある人たちでいっぱいだな。政治家なんかもいやがるよ。

 俺はパーティーの部屋を隅々まで見て、その凄さを知る。

 ホントに神崎は金持ちだったんだな。まあ、でなきゃ家にシャンデリアなんて付けないか。ふぅ、俺んちが貧乏だったわけじゃないんだな。

 俺は一息入れてから再び仕事に向かった。


「せ、先輩」


 現在ウェイターである俺にこんな下から呼んでくるのはただ一人しかいない。


「ん? ああ、神崎か。どした?」


 そう神崎だ。だが、神崎と呼んでいいのか一瞬ためらった。

 なぜなら、神崎がいつもと違うパーティー用の衣装を身に纏っていたため、少し身分の差というのを感じてしまったのだ。

 髪はきれいに整っていて、胸元が大きく開いたドレスからはみ出そうな大きな双丘が赤い液を噴き出そうと襲ってきそうだ。

 そして何より、そんな格好の美少女がもじもじと恥ずかしそうにしている格好は……眼福だ。誠に眼福であるぞ!!


「あ、あの……すみません」

「……え? はい? ああ、え? 何が?」

「その、家の手伝いをさせてしまって。先輩の宿題の免除としても、これは少しやりすぎですよね?」

「ああ、そのことか。別に、そんなことないぞ? 元といえば、巻き込まれた俺が悪いんだし」

「で、でも……」

「まあ、気にすんなって。そんな顔してると、せっかくの美しいドレスが台無しだぞ?」

「う、美しい? はわわわわわ……」


 動揺しまくって、神崎は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。

 うん。なんか、これはこれで面倒だな。

 俺は笑顔の裏でそんなことを考えていた。


「先輩。ちょっとこっち来てください」

「でも、俺は仕事が――」

「大丈夫ですよ。私が引っ張っているんですし」

「そうか? なら、まあ……」


 ちなみに、このパーティーは神崎家が所有するいくつもの別荘の中の一つで行われている。

 神崎の本家は神社の裏でしかも見えない壁とやらで隠されているから誘おうにも誘えないのだが、この別荘も本家に負けず劣らず素晴らしい家だ。

 長期休暇でまさかこんなところに来られるとは思っていなかったので、いい思い出になる。

 逆に、そう考えないと心が折れそうだ。


「先輩、こっちです」

「おい、待てよ」


 神崎に引っ張られ、俺はベランダに出る。

 時刻は午後五時、夕暮れが来る時間帯だ。


「……おお」


 よく、海などに夕暮れのオレンジが反射してきれいに見えることがあるが、ここは生憎にも山。しかし、春ということもあって山の花々が咲き乱れ、それを夕焼けのオレンジが染め上げているという、なんとも神秘的な景色が一望できた。


「すごいですよね。私、この景色が一番好きなんです」


 桜が散り舞う中で、夕焼けに照らされながら神崎はにこりと笑って、俺を見ていた。

 その姿がとても綺麗で、なぜか俺の頬が熱くなった。


「あ、ああ。そう、だな」


 まったく、全く全く全く。

 ――――まったく、ハイスペックゾンビも楽じゃないな。

 春休みも終わり、花々は顔を見せ始める。

 俺たちもまた、新たな一面を見せ始めた……のかもしれない。

次章予告

ミサ●さん「学年が変わり、心の平穏も少しずつ変わりゆく中、御門恭介は幼馴染、仲嶺綺羅の異変に気づく。そんな中、またしても事件が勃発。何も知らない綺羅を巻き込まれ、恭介は止むなく事件の中心へと足を踏む入れる。大切な人のために秘密を明かすのか、明かさないのか。はたして窮地に立たされた幼馴染に、御門恭介は自身の正体を明かすことができるのか……?


次章、『ヤンデレは秘密を許さない編』

次章もサービスサービス!」

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