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神様のせいで北半球が消えるそうですよ?

読んでくれると嬉しいです

 カオスの口から明かされた最悪な結末を阻止するため、神崎の裸を一点の曇りなく見まくるために俺は地面を駆ける。

 無限大の力を与えるためには一体どうすればいいか。

 言うは容易、行うは難し。まあ、そんな感じだ。

 要は、生命力をかき消すくらいの攻撃をカオスに与えればいいってことだろ?

 俺は地面を蹴って、カオスの口元まで行き、剣を振るう。しかし、その剣は虚空を切った。


「な、なんだ?」

「おじいちゃんの本性。それは空からの空間。大口を開け、全てを飲み込む者。つまり、ブラックホール。おじいちゃんを止められる者は、いない。人の中には、だけどね」

「つまり、人じゃなければいいんだな?」

「ああそういうことだよ。まあ、そこら辺の動物にはできないだろうけどね。例えば、強大な力を持っていて、尚且つそれを持続的に出せる、まるで主人公みたいな怪物じゃないとできない所業だ。と言っても、そんな逸材は探してもいない……おお、君がいるじゃないか!」

「妙な一人芝居はやめろ。……はっきり言って、どこまでわかりきっていた?」

「何が?」

「お前は、俺がここまでやる奴だとわかって、ゾンビにしたのか? ってことだ」

「……あははははははは! 君は常々おかしいことを言うね! 僕は高が死の神だよ? 未来のことなんて、巫女や女神でないとわからないんだ。つまり、僕は正真正銘、何も知らずに君を選んだ。その結果がこれさ」

「……どうだかな」


 俺はタナトスの言葉を一切信じていなかった。

 存在が消えたあとに俺を蘇らせたのは確実にタナトスだ。つまり、タナトスは存在を取り戻せるだけの力を持っているってことになる。同時に、それは俺が蘇らなくていけないということにもなるんだ。

 タナトスが俺に興味がなければ、本当に遊びで不死を与えられたのなら、俺の存在を戻す必要はない。あの真っ白な空間で、俺に声をかける必要なんでないんだ。

 そもそも、俺が死んだことにだって不思議がある。

 思い返せば、収まることを知らない疑問点。俺はきっと、タナトスによって何かに選ばれた。それだけが俺がたどり着けた真実に最も近い仮説だった。


「まあ、今はそんなことは関係ないか」

「う~ん。僕にとっては、おじいちゃんが何をしようと関係ないんだけど、君にとっては違うみたいだね。そんなに故郷を消されるのが嫌なのかい?」

「そんなんじゃねえよ。ただ、気に食わない」

「それまたどうして?」

「じゃあ、お前は一生外で暮らすか、一生家の中で暮らすか、どちらか選べって言われたら選ぶか?」

「……意味わからないけど、多分選ばないかな」

「だろ? 同じだよ。人生を人の勝手で決められたくない。今、カオスはこう言った。逃げろ。さもなくば死ぬぞってな。なんで二択なんだ。なんで人に決められた選択肢を取らなくちゃいけないんだよ。まったく、気に食わねぇぜ」


 俺は肥大していくカオスを見ながら、奥歯を噛み締めた。

 だとしても、流石にあれをどうにかするってのはかなりキツそうだ。現に、既にダメージを与えられる場所にカオスは存在しない。

 いっそ、最強の人間に切り替えるか?

 俺がメダルに手をかけると、


「おお、主様。元気してたか?」

「……雷電。ちょっとは空気読もうか?」

「がはははははは! そんな減らず口が叩けてりゃあ、大丈夫だ! さて、話は聞いてるぜ? あいつに攻撃するんだろ? 任せな!」


 そう言って、竜化している雷電の口から高圧電流が放たれた。

 それはカオスの口の中に吸い込まれ、無力化されていく。


「足りぬ。微塵もエネルギーになっていないぞ」

「……おいおい。マジかよ。流石に貯まるかと思ったのに、雷電の電撃はダメなのか?」

「いや、溜まってるよ。少しだけどね。おじいちゃんは特性上、ありとあらゆる力を吸い込んでしまう。つまり、一回の攻撃でどれだけ圧縮できた攻撃を与えられるかが問題なんだ」


 タナトスの話を要約すると、雷電の攻撃でカオスのエネルギーは溜まっているけど、もっと圧縮して濃密な攻撃を与えたほうがいいってことか。

 圧縮。どうすれば、一回の攻撃でエネルギーを大量に稼げる?

 見渡せば、廃墟と化した住宅街。

 忘れてたけど、俺が戦っていたところって俺んち込の住宅街なんだよなぁ。後で請求とかされないよな? 大丈夫だよな?

 おっと、話がずれたか。壊れた住居。雷電の電気。広範囲かつ大量のエネルギーを溜める方法。

 ……待てよ?

 俺は壊れた住居に近づきコンクリートを触る。コンクリートは少し触っただけでボロボロと軽く崩れて、その中から鉄骨が見えた。

 鉄骨。電気。……行けるかもしれない。


「雷電!」

「なんだよ、主様! 俺様は今忙しいんだが!」

「電撃をやめろ! それから……空中で自分の尻尾噛んで円を作れ!」

「なっ……血迷ったのか、主様!」

「うるせぇ! 早くしろ! 噛んだら、体中に電流を流して回転しろ!」


 雷電は不審がりながらも、俺の言うことを聞いて行動し始める。

 すると、コンクリートが中に浮き始め、だんだんと雷電の周りに集まり始めた。


「ど、どうなってるんだ!?」

「電磁石……先輩、何をしているんですか?」

「あ? いいから見てろって。雷電、そのままゆっくりと集まってきたものを中心に寄せていけ」


 住宅街の廃墟はあらかた空に浮かび、それらが一点に集まったことで、空に大きな弾が出来上がった。

 これは、全て電気を帯びており、決して離れることのない鋼鉄よりも硬い弾丸になっている。

 頭のいい人ならわかるかも知れない。これは、『レールガン』を模して作ってみた、まがい物だ。

 本物なら、もっと理論が通っているかもしれないが、緊急時、しかも知識がない状態でのぶっつけ本番だから上手くいくかもわからないという不安要素だらけの代物だが、まあ仕方ない。


「カオス。今からドデカイのを食らわせてやるぜ」


 俺はメダルを取り、空に向かって弾いた。


「俺、御門恭介が願い奪う。信念を突き通し、偽善を破壊し、自身の力を困難という名の壁を破壊し続ける最強の力を。今、俺のもとに来い、真実を貫く拳!」


 全身に強烈な痛みを感じる。

 一応のために剣も並行して使っているのだが、普通に最強の人間の力を使うよりもダメージを受けているようだ。

 つまり、二枚重ねは得策じゃない、か。

 が、今はその痛みに耐える必要があるんだ!

 俺は地面を蹴り、空中を蹴りながら、雷電の元まで飛ぶ。

 そして、


「喰らえやぁぁぁぁああああ!!」


 コンクリートと鉄の塊と化した元住居の弾丸を思いっきり蹴り飛ばした。

 すると、弾丸は加速に加速を重ね、音速を超えそうなくらいの速さで高熱を帯びながら飛んでいく。


「なるほど、加速をされた鉄が空気との摩擦熱で、熱を帯びたのか。他にもエネルギーがあるようだね。もしかして、君って頭いいの? そんなわけないか」

「バーカ。俺は頭なんて良くない……って、馬鹿にしてるよな? お前、俺を馬鹿にしてるよな?」


 レールガンがカオスに衝突。全て終わったかのように思えたが……。


「まだだ。まだ、足りぬぞ、人の子よ」


 カオスは意外にもMなのかもしれない。てか、攻撃されてまだだ、とか言う奴は大概Mだ。

 そうじゃない! そうじゃないよな!? まだ足りないのか!?

 俺は予備で取っておいた剣の力を注ぎ込み、数千本の剣をカオスに放つ。

 同時に、


「神崎!!」

「はい!」

「聖槍を投げろ!!!!」

「分かりました! ――――魔を打ち払う聖なる槍よ。この巫女たる我が身に、永劫の光を灯し給え。魔の怪物どもを打ち払う聖なる力を与え給え!」


 聖槍がカオスの口に飲み込まれたのを確認してから、俺は数千本の剣たちに向けて命令した。


「爆ぜろ!」


 すると、一斉に剣が爆発していく。その威力、もはや核爆弾の百倍。確実に北半球が半壊するレベルのものだ。

 その攻撃が終わった瞬間、


「治まった……危機は去ったぞ、人の子よ」

「や、やっとかよ……」


 それを聞いて、俺は地面に仰向けで寝転がる。

 そして、一回伸びをすると、


「んー! あー。終わったー」


 倒れた俺を見て駆けつけた神崎のムチムチとした柔らかい太ももで膝枕をされながら、俺は世界の窮地を救った余韻に浸っていた。

 ホント、主人公も疲れるわー。

まあ、結局世界を救っちゃうのが主人公なんですね。はい。

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