一難去ってまた一難、それは単なる嫌がらせ
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「……は?」
クロエはわけがわからないと言いたげな目で俺を睨む。
あの、マジで怖いです。ちびりそうなくらい怖いんですけど。
てか、なんで高校生の俺が幼女にこんなに睨まれないといけないの? 俺にそんな性癖はないぞ?
「俺の仲間になれ。そうすれば、きっとお前のその呪いは解ける。死という概念は無くなるんだよ」
「……本当に? 本当に、アタシは自由になれるの?」
「ああ、もう人を殺して延命をする必要も、一人で寂しいこともない。だから、俺の仲間になれ」
俺が手を差し伸べると、クロエはその手に触れようと頑張って手を伸ばす。
手と手が触れた瞬間、鎖は契れ、契約は完了した。
契れた鎖がまるで流れ星のように一線を描き、クロエに蔓延っていた死の呪いを打ち消していった。
「ど、どうして……」
「ん? ああ、これは予想なんだけど。多分、俺の持つ三種の神器のひとつ『絶対服従の言霊』は俺が死ぬまで、仲間は死なないっていう誓約があるかもしれないんだ」
「……?」
「えっと、簡単に言っちゃえば、俺が死ぬまでお前は死なないってことだな。んでもって、俺は不死だから一生死なない。ほら、簡単だろ?」
「簡単すぎて、わかり易すぎよ。まあ、いいけど」
「ん? なんでそんなに頬を赤くしてんだ――ちょ! なんで炎投げてくんの!?」
「うるさい、バカ!!」
「なんで!?」
俺は理不尽な攻撃を避けつつ、怒った顔の奥の嬉しさ万点の笑顔を見抜いて、安堵していた。
これで、コイツは自由だ。もう、嫌なことはさせなくて済む。
クロエはそんな俺の顔を見て怒りを大きくさせていくが、それはそれで嬉しい一面でもあった。
「人の子よ。まずはよくやってくれた」
「随分と上からだな。まあ、それでもいいけどさ」
「これで、貴様の貸しは返してもらったということでいいのだな? クロエよ」
「うん」
……貸し? ああ、菓子ね。あれ? でも俺、こいつにお菓子なんてあげたっけ? いや、返してもらったということは、俺がもらった? んん~、よくわからん。
俺が変な言葉に頭を悩ましていると、カオスからまた意味のわからないことを言われた。
「そして、逃げろ」
「……はい? なぜに?」
「貴様はホントによくやってくれた。だが、元々この子の中には数千年の生命力を蓄えてあったのだ」
「……つまり?」
「貴様にもらった永遠は、その生命力でさえも拒絶している。行き場のなくなった生命力が我の体内に逆流しているのだ。あと、数時間で北半球がなくなるぞ」
「それを冷静に話せるお前がすごいと思うよ! 大事件じゃねぇかよ!! なんでもっと早くに言わねぇんだよ!」
「すまぬ。この事は、我にも予想できなかったのだ。残り数時間、これだけの時間で南半球に逃げろ。決して振り返ってはならぬぞ」
ふざけんなよ! 北半球が消えるとか、逃げろとか! はためんどくさいことを押し付けんじゃねぇ!!
俺はカオスに訴える。
「どうすれば止まる!? どうすれば、その事件は収まる!?」
「この無限大の生命力を相殺できるだけのエネルギーがあれば、止まるやも知れぬ」
「無限大のエネルギーを渡せばいいんだな!?」
「しかし、それは叶わぬのだ」
「なんでだよ!?」
「無限のものなど、この世にはないからだ。ゆえに、この事件を止めることなど、いくら貴様にでもできることではない」
カオスはそういうが、俺は一向に諦めていなかった。
何か、何かあるはずだ。クロエだって助けられたんだ。今度は世界だって救えるはず! スケールがでかいけど、そこはやる気と根性と、サービスシーンでなんとかなる!
後で、神崎に裸になってもらうというお得感バリバリのサービスシーンを用意すれば、世の男たちはなんでもできる。否! 美少女の裸のためなら、男はたとえ致死率百パーセントの世界でも生還できるはずだ!!
「神崎!!」
「は、はい!」
「俺がカオスに勝てたら、裸を見せてくれるかな!?」
「え? い、いいとも!!」
「ねえ、恭介。それって死亡フラグって言うんじゃない?」
「言うな! 知らぬ存ぜぬだ! やる気と根性! 上等じゃねぇか! ここまで来たら、世界だろうが、裸だろうが、なんでも救ってやんよ!!」
この瞬間、神崎とクロエの頭の中では、『ああ、男ってなんて馬鹿なんだろう』という思考が横切ったが、それが自身が興味を出し始めている男子だとわかって、諦めた。
同時に、神崎はこうも思った、『あ、私ついノリでいいともなんて言ってしまったけど、どうしよう……』。どうやら、神崎に関しては北半球が吹き飛ぼうが、恭介が勝とうがどの道青い顔になる未来が決定した瞬間でもあった。
「よっしゃああああああああああ!! 行ったるわ!! 神崎、服を脱ぐ用意をしとけ!!」
威勢のいい掛け声とともに、俺は走り出す。 最低最悪の目標のために。
大丈夫! 男というのは、女の裸のためならたとえ死亡フラグを立てようとへし折ってまで生き残るから。
……大丈夫だよね?
少しばかりの迷いを感じながらも、俺は春休み最後の大決戦に向かった。
いつの間にか、春休みという設定が入っていますが、そこはご了承ください