なぜか、俺はエロエロボディの美少女に狙われる
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俺の体がゾンビになって一夜が明けた。
一日経って、わかったことがいくつかあった。
一つ、俺は死ねない体を手に入れた。それは決してゾンビになったというわけではないようだ。その理由は『俺が今、生きている』からだ。
どうやら、死んだ体で動いているのではなく、死んだ瞬間の時間を巻き戻していると言ったほうが正確ならしい。つまりだ。実質、俺は死ぬ。死ぬが、体が勝手に再生すると言うことだ。
二つ、俺の目の前でクルクルと回りながらムカつく顔を俺に向けている少年、タナトスは本物の神様ならしい。これは立証などはできないが、そう思うしかない状況なのでしょうがない。
三つ、俺がもらった三種の神器の一つのメダルだが、あれは訳がわからない。
使おうとすると全く反応を示さない。それどころか、タナトスにも使い方がわからないらしい。そんなものを渡すなよと言ってやりたいが、相手は神様で言っても聞かなそうなので諦めた。
「お、君が昨日、パンツをガン見した女の子が家に入ってくるよ!」
「あれはお前が仕組んだんだろうが!!」
「あっはっはっはっは! 面白い冗談だ!!」
「どこがだよ!! どこが冗談なんだよ!!」
そして、もう一つわかったことがある。
コイツは馬鹿だ。タナトスという神様はどうしようもない馬鹿だ。面白さのためならなんでもするし、犠牲だって厭わない。
まあ、そんなコイツが俺の中で気に入っているということもあるんだが……。
「おや? なんだか鳥肌が立ったね。もしかして、君。僕のこと好きなのかい? 愛しちゃってる?」
「馬鹿言え。誰がお前なんか好きになるんだよ。冗談じゃねぇよ」
「またまたぁ。そんなこと言っていいのかな? また、パンツ見せちゃうよ? それも今度は男の子だよ?」
「やめろ! 女子ならともかく、男子のパンツ――」
「パンツがどうしたって?」
俺の部屋のドアが開き、笑顔で綺羅が入ってくる。
どうして、とも思ったが先ほどタナトスが家に入ってくると言ったのを思い出してそれほどの驚きはなかった。
しかし、
「なんでそんなに笑顔なんだ? 怖いぞ? ああ!! すまん! なんか知らないけど――――ぎゃぁぁぁぁぁああああああ!!」
「ねぇ? 恭ちゃん、パンツがどうしたって? んんっ?」
「なんでもねぇよ! ホントマジやめてぇぇぇぇぇぇええええええ!!」
何が起きているかだと? 聞いて驚くな、綺羅のやつどこからか取り出した包丁を俺のいたベッドに向かって投げてきやがったんだよ!
あと少し遅かったら死んでたぞ! いや、蘇るけどさ! きっと死ぬほど痛いんだよ、包丁!!
俺は床を転がりながら、迫り来る包丁を避けなんとか綺羅に抱きつくことができた。
綺羅の黒化を止める唯一の方法、『抱擁』を使ったおかげで包丁は飛んで来なくなった。
「まったく。お前は俺を殺すつもりか」
「……うん」
「なあ、少し恥じらいながら頷くのやめてくんない? いやマジホント。めちゃくちゃ可愛い表情で殺人未遂を肯定しないでくれよ」
「か、可愛い……」
「いや、そこじゃないからな? 確かに嬉しいかもしれないけどさ、もうちょっと人の話を聞いてく――待て! なんでビンタの体勢に入ってんだよ!!」
「バカ――――!!」
「なんで!?」
至近距離だったおかげで、ビンタはいつもの半分くらいの威力で収まったが、なぜビンタされた? 俺、なにかした?
「お楽しみのところ悪んだけどさ。君、狙われてるよ?」
は? 楽しみ? どこが?
……狙われてる? 誰が?
「おま、それって誰――――」
俺がタナトスに狙われている相手を聞き直そうとすると、綺羅の頭のすぐ後ろを何か棒的なものが過ぎ去って、ありえない音とともに俺の部屋の壁に突き刺さった。
なんと、それは槍だった。しかも、明らかに俺たちを狙ってる。
槍が飛んできた方を見ると、ムッチムチのわがままボディをしている美少女が怒りの形相で人んちの屋根の上で、次弾の槍を構えていた。
おいおいおい! なんで、綺羅が狙われているんだ!?
「誤解がないように言うけど、明らかに君を狙っているからね?」
「は!? なんで!?」
「いや、知らないよ。でね、その槍だけど。君の体の再生を抑制する効果があるみたいなんだ」
「つまり?」
「全力で逃げてね♪」
ふざけんなよ! てか、次弾が飛んでくる!!
「移動手段は!」
「ないね」
「即答かよ! 相手の目星は?」
「残念ながら」
つくづく使えねぇ神だな!! でも、俺が狙われているってことは、綺羅はその巻き添えか?
俺は俺の腕の中で抱かれている綺羅に目をやると、綺羅はまだ現状が理解できてないのか、それともまだ槍が飛んできたことすら分かっていないのか、そのどちらにしても顔を真っ赤にして俯いていた。
綺羅が、巻き添え。しかも、俺のせいで。もしかしたら、このまま死んでしまうかもしれない。
それは……ダメだ。綺羅はこんなことで死んじゃいけない。
ならどうする? 俺に、何ができる?
俺が考えていると、机の上に置いていた神器、メダルの一枚が光りだした。
「メダルが、反応した! 光っているメダルは使えるよ!」
「ホントか! クッ、間に合え!!」
俺は綺羅を部屋の外に投げ飛ばし、机の上のメダルに手を伸ばす。
メダルを掴むと、頭に映像が映し出された。
これは……このメダルの、記憶……なのか?
その中にはメダルの使い方まであって、瞬時に俺はそれを執行した。
俺は親指でメダルを宙に弾き、頭に流れてくるものを言葉にした。
「俺、御門恭介が願い乞う。理念を貫き、世界を否定し、自身の力を夢の為に、仲間の為に使い、全てを圧倒し続ける最強の力を。今、俺のもとに来い、最強の人間神谷信五の力!」
ドクンッ。
心臓が脈打つ。激しく、雄々しく、猛動に。そして、俺の体にありえないほどの力が流れ込んでくる。
今なら、やれる。
俺はこちらに飛んでくる槍を見定め、それに向かって、
「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!」
思いっきり拳を突き出した。
普通、拳の方が砕けるはずだが、今は違った。飛んできた槍は、俺の拳の前にひれ伏し、崩れ去っていった。
これが、最強の人間の力の一部。全ての逆境を己の拳でねじ伏せる力。
俺は落ちてくるメダルをキャッチし、槍を投げてきた美少女の居た場所を見る。
しかし、そこにはすでに誰もいなくなっており、攻撃を受けた俺だけが残っていた。
なんだったんだ。さっきのは。
「ど、どうしたの? いきなり私を突き飛ばしたりして。おしり打っちゃたんだけど」
すると、綺羅が文句の言葉を俺に飛ばしてきた。
怪我は……どうやらしてないみたいだな。
綺羅が怪我をしてなかったことにひとまず安心していると、綺羅が窓の方を見て目をに開き驚きの声を上げた。
「わあああ!! ま、窓が割れてる!? な、なにしたの、恭ちゃん!!」
「俺じゃねぇよ! よく見てみろ、窓の破片が部屋の中に入ってるだろうが!!」
「あ、ホントだ……え? ていうことは、恭ちゃんいじめられてるの?」
「どうしてそうなった!? 普通、誰かに襲われたとかだろ!?」
「そんなことない! 恭ちゃんは襲われるほど、近所の人とかと親しくないもん!」
「くっ……当たってるから何も言えない」
そうだよ! 襲われる理由も、関係性も持ち合わせてませんよ! 悪いか、コンチクショウ!
そんなこんなで口喧嘩をしていると、体から力が消えた。
「え?」
「だ、大丈夫、恭ちゃん!? まだ、体がおかしいとか? もしかして、頭!?」
「頭じゃねぇよ! ……心配すんな。なんでもねぇよ」
俺は立ち上がると、体を軽く動かしてみる。どうやら、最強の人間の力が消えたせいで、バランスを崩したらしい。
でも、いきなりどうしたんだ?
「どうやら、メダルの力は三分しかもたないみたいだね。それに、次に使えるのは一日後みたいだ」
タナトスがメダルを見て、ニヤニヤと笑っていた。
三分。どこぞのウルトラマンか? まあ、次を使うことはないことを祈りたいよ。
俺は、嫌な予感が拭えない中、槍が刺さっていたり、壁に傷ができていることを騒いでいる綺羅を説得し、学校へ向かった。
いやホント、何もないのが一番だよ。