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御門恭介は間違えない

今回のタイトルのネタは汐ノ宮綾音は間違えないという作品で、発売中の漫画です。

よかったら読んでみてください。


私の作品も読んでくれると嬉しいです

 一本の剣を手に、俺は目の前の敵に目を向ける。

 青年は剣を見て嬉しそうに笑って、両手に炎を召喚し、俺を見る。


「あはははは! 君はそんなこともできるのか!! 楽しいねぇ!! さあ、死闘の始まりだ!!」

「クソがっ。戦闘狂ってやつか?」


 投げられた炎を何とか避けて、荒い息を何とかしようとするが、焦ってペースが乱れる。

 なんでだ。なんで、今回は何も起こらない? なんで、主人公の記憶が読み取れない?

 最強の人間、神谷信五の記憶は流れるように入ってきたのに。今回はそれがない。つまり、この剣の使い方がわからない。

 剣なんて、ファンタジーゲームでしか使ったことがない。よって、現実に居る俺は触れたことすらないのだ。そんなものを、どうやって扱えというのだ。


「って、愚痴ってても始まらねぇ! なんとかしねぇと!」


 しかし、使い方が分からなければこの剣を最大限使うことなどできない。

 そして、今気がついたが、どうやら体への影響は今回何もないみたいだ。強くもなってなければ、痛みも感じない。今回はこの剣だけが能力なのか?

 考えるが、今までこういった摩訶不思議なものなんて二次元だけのものだと考えていた俺には、どう足掻いても能力なんて使えない。

 ああ、くそ! 俺がもっと中二病だったら、上手く使えたかもしれないのに!!


「それそれそれ! あははははは!」

「ったくよ! もうちょっと優しく攻撃しやがれよ! 死んじまうだろうが!!」

「嫌だね! こんなに楽しい戦いは久しぶりだ! もっと、もっと俺を楽しませてくれよ、ジャパニーズ!!!!」


 ああもう嫌だ、この外国人。どうにかして!

 しかし、そんなことを考えても始まらない。

 どうにかして、あいつを倒さないと――


『力が欲しいか?』

「なん……だと……?」


 目の前に騎士の残像が見える。

 俺の意識はそれに引っ張られ、青年から投げられる炎を受けても痛みなど感じなくなってしまった。

 どういうことだ、これは。これが、能力なのか?


『力が欲しいか? あいつを倒すための力が』


 騎士の残像は俺に右手を差し出してくる。


『我の右手を取れ。さすれば、貴様に力を与えてやろう。あいつを倒すための力を――』


 俺はその右手に手を伸ばし――弾いた。

 騎士の残像は驚いたように後ずさり、目の前から消えていく。

 すると、一気に体が悲鳴をあげだした。どうやら、意識が戻ってきたらしい。そのせいで、ダメージもフィードバックしてきやがった。


「いらねぇよ。あいつを倒す力なんて。俺が欲しいのは、あの幼女を助ける力、俺が認めた世界にする力だ!!」


 叫ぶと、今度は高校生らしい青年が立っていた。

 青年は優しく微笑むと、拍手を俺に送ってきた。


『正解だ。お前が欲しいのは目の前の敵を倒す力じゃない。未来永劫、お前の平和を犯そうとする奴らを倒す力だ。決して、今に満足しちゃいけない。今よりももっといい平和を探せ、そしてそれを邪魔するものを何をしてでも倒さなくちゃいけない。そのために必要な力なら少ししか与えられないが、使ってくれ』


 青年が言い終わると、右手に収められていた剣が黄金の光を再び輝かせた。

 同時に、記憶が頭を駆け巡る。

 そうか。この力は、こうやって使うのか。

 俺は剣を振り上げ、振り下ろすという簡単な動作をする。

 すると、地面は割れ、斬撃が炎を扱う青年を切り刻んだ。


「なっ……」


 しかし、青年は炎に包まれ直ぐに体が再生した。

 そして、嬉しそうに笑う青年は、目を充血させて俺のもとに走ってくる。

 不死って、敵に回すと面倒なんだな。

 そんな簡単な感想を述べて、俺は再び剣をなぎった。


「がっ……」

「諦めろ。お前はもう、俺には近づけない」

「……ふ、ふざけないでもらおうか。近づけないのなら、遠距離から――」

「学べ。長距離でさえも、俺の射程だ」


 連続で剣をなぎる。すると、俺から距離を取った青年の体が無残にも切り刻まれていった。

 今思ったんだけど、これってチートだよな?

 考えると相手が惨めになるので、考えるのはやめた。

 そのあとも何度も切り刻んだが、相手も不死ということもあって戦闘は難航の色を見せ始めた。


「あははははは! 楽しい、楽しいよ!!」

「気持ち悪んだよ! そろそろ倒されろよ!」

「君に切り刻まれると、なんだか昔を思い出すよ!」

「どんな過去だよ! もう死んじまえよ!」

「ああ! 君との戦いは楽しすぎるよ!」

「キモイ!! マジキモイ! 死んで! もしくは消えて!」


 俺は若干泣きそうになりながらも剣を振り続けた。

 しかし、それに隙が生じ始めた。その一瞬の隙を、青年は一気に間合いを詰め、反撃に出た。

 が、何かに気がついたように突然棒立ちになった。


「はあ。なんか、君さ。本気出してないよね?」

「は? ……何言ってんだ? これでもいっぱいいっぱいだぞ?」

「うそだね。こないだは俺をあれだけの力で吹き飛ばしておいて、それはないと思うよ?」


 あれは、最強の人間の最大限の力を詰めた力だったんだから当たり前だろ。

 だが、青年はそのことを知らない。

 つまり、俺があの力を無限に出せると勘違いしているみたいだ。

 どうする? もう、この力も時間が限られてきてる。持って、あと一分が限界だ。

 このままだと、力が抜けて殺されるのは俺のほうだ。

 ならいっそ、最強の人間の力に切り替えて――

 ダメだ。俺はこのあとクロエを探さなきゃいけない。場合によっては戦わなくちゃいけない。そのために、掌握できている力は極力使いたくはない。

 なら、どうするか。

 俺は剣を地面に突き刺し、力を込めた。

 すると、砂煙が辺りを密集し、前が全く見えなくなる。

 

「何のつもりだい?」


 何も見えない状況で、ただ青年の声が響く。

 俺はそれを無視して、跳躍しこの場から離れた。

 離れる瞬間、こういった。


「俺は、御門恭介だ! この決着はいずれ付ける! だけど、今は見逃してくれ! 俺には、やらなくちゃいけないことがあるんだ!!」


 何も見えないが、攻撃が飛んでこないところを見ると了解してくれたみたいだ。

 その証拠に、返事が返ってきた。


「俺の名前は、フレア・フレイ! お前を消し去る人材だよ! 覚えておくといい!!」


 そんな返事を聞いて、俺は肩を落とすが、物分りのいいやつで助かったと安堵してクロエの後を追った。

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