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魔女の一存は呪いとともに――

読んでくれると嬉しいです

 アマテラスのせいで二日酔いの俺は学校がなくて良かったと安堵しながら、自分の家に向けて足を運んでいた。


「ったく。あのアホ神が……未成年にマジで酒飲ますとか頭大丈夫か?」


 愚痴りながらも、神崎の婆さんが俺の家を直してくれるというので安堵していたのだが、俄然不安が残ったので見に来ていたのだが……


「おいおい。マジかよ……」


 家について、俺は深くため息を着いていた。

 家に誰もいない。直しに来ている人も、解体しに来ている人も、もちろん匠も。

 現在時刻、午前十時。誰もが仕事に手を焼いている時間だ。なのに、家に誰もいない。

 つまり、あの婆さんが嘘をついているということになるのだが……。

 そこまで考えて、家の中から変な音がしたので崩壊している家に入ってみると、


「雷電……お前、こんなところで何してたんだ?」


 そこには、訳のわからないと言った顔で上半身を起こしている雷電がいた。

 いや、訳のわからないのは俺のほうだから。お前が、そんな顔する意味わかんないから。


「お、主様じゃねぇか。どうしたんだ?」

「いや、お前の頭の方がどうしたんだよ。ここ、廃墟だぞ?」

「ん? 主様の家だろう? ……あれ? どこだここ?」

「元、俺の家だ。まさか、ずっとここにいたのか?」

「いや……おかしい、記憶がなくなってる。確か、あのガキが天井を突き破って来て、それから……」


 おいおい。マジかよ。やめてくれよぉ、記憶喪失とかぁ。面倒だからさ。

 しかし、こんな記憶喪失が存在するのだろうかととも思うのだが、医学に知識のない俺ではこの状況があり得るのか、ありえないのかの判断はできなかった。

 でも、ひとつだけ確かなことがある。

 雷電は嘘をついてはいない。つまり、ホントに記憶がないのだ。まるで、あの青年が来てからここにいなかったかのように……。

 ここにいなかった?


「おい。雷電」

「ん? なんだ、主様?」

「お前、あの時どこにいた? あのバカが来たときだ」

「……いなかった。ここには。……思い出してきたぞ。俺様は、現存世界にはいなかった! 俺様は、殺されていたんだ!!」

「……なるほどな」


 つまり、コイツは馬鹿だ。とはならない。なぜなら、あの場で、こいつを殺すことができた人物は何人もいた。そして、一番可能性がでかいのは――


「あ~あ。バレちゃった?」

「後ろから声かけるなよ、マジで怖いから」

「だって、アタシのこと、わかったんでしょ?」

「何のことでございましょうか? 私めは何も存じておりませんが?」

「なんか、すっごいムカつくんだけど?」

「うっせ。どうせお前なんだろ、この事件の発端は。クロエ」

「ほら、わかってんじゃん」


 クロエは、悲しそうな目で俺を見下す。

 あの場で、唯一誰も意識を向けていなかった人物はコイツだけだ。あの時、俺たち全員はあのバカに視線を向けていて、気がつかなかった。

 コイツが、俺の仲間を殺したんだ。


「どうしてだ?」

「何が?」

「とぼけるな。お前は、なんで俺の仲間を殺した?」

「……わかんないよ。自動的にやっちゃうんだから。理由なら、カオスに聞いてよ」

「逃げるのか?」

「本当のことだもん」


 クロエはそっぽを向いてしまった。

 俺は、クロエの背後にいたカオスを睨み、無言で答えを待つ。


「人の子よ。わかってくれとは言わぬ。しかし、見逃してくれぬか。この子は――」

「黙れ」

「人の子よ」

「そんなことを聞くために待ったんじゃない。見逃せ? ふざけるな。訳も聞かずに見逃せるか」

「訳を言ったところで、分からぬのだよ。人の子では」

「なら安心しろ。俺は、もう人じゃない」

「……そうか、ならば話してもよかろう。この子の現実を。世界という理不尽を」

「……」


 そこから、カオスは話し始めた。

 悲しそうに、辛そうに、開けてはいけない蓋を開けるように、記憶の蓋を重く持ち上げる。


「我が、この子と出会ったのは十年前だ。当時、不治の病に犯されていたこの子は死を待つだけだった。それが、不便でたまらなくなった我は、この子に生きるために力を与えたのだ。延命の術を、かけたのだ。それからだった。この子が笑うようになったのは。この子は初めて笑い、初めて外で遊び、初めて友達を作った。しかし、問題はあったのだよ」

「問題? 何が問題なんだ?」


 幸せな話じゃないか。

 だが、問題というのは非常に大きいものだった。


「この子が生きるには、他の犠牲が必要だったのだ。一緒に遊んでいた友達は間もなく死に、遊んでいた公園は破壊され、この子の笑顔は再び絶望へと変わった。わかるか? この子は不幸に愛された子なのだ。絶対に幸せなど来ない。ひと時の幸せが、後に自信を苦しめるだけだったのだ。それが、貴様にわかるか!!」

「……わっかんねぇな。そんなこと」

「だから言ったのだ! 言ってもわからないと!」

「わかんねぇよ。抗いもしない奴の気持ちなんて」

「……何?」

「最初も最後までも、抗ってねぇじゃねぇか。最初から諦めて、最後までも諦めて、何もせずに今までを過ごしてきたんだろ?」

「抗うことのできない事実だってあるのだ。それを、貴様が体感してないだけだ!!」

「してる。抗っても絶対に敵わない事実があることだってわかってる。俺が不死だと言ったな? 俺は、死ぬことができない。どう抗っても、死ぬことなんてできない」

「いいことではないか。死ぬよりも生きることのほうが――」

「よくなんてないさ。考えても見ろ。俺は死なないし、老化もしない。だが、周りは老いていく、死んでいく。いずれ、俺の周りは全て消える。一人ぼっちになるんだよ。俺は」

「……」


 カオスは絶句する。

 そう、俺は死ねない。どう死のうとしても、どう頑張っても、死ぬことができない。それが呪いだというのなら、いい呪いではないな。

 俺は真っ直ぐにクロエを見て、静かに言った。。


「お前は死んで一人ぼっちだ。でも、みんなが追いかけてきてくれる。いつかは、一緒になれる。だけどな。俺は、置いてかれるんだ。みんな消えていく。長生きなんて、したくない。みんなと一緒がいいと、思わないか?」

「あ、アタシは……それでも、生きたい。まだ見たこともない景色が、関係があるはずだから。だから、こんなところで、死んでなんてあげられないんだよ!」


 クロエは空中に飛翔し、空を飛んでいた。

 その姿はまさに魔女。魔法使いといったところか。

 俺は、ポケットに手を入れ、メダルを掴んで飛ぼうかと思うと、


「さぁて。この先は行かせないよ。君には借りがある。ここで、死闘を繰り広げようじゃないか!」

「なんで、お前がここにいるんだよ。今は、お前の相手なんて――」


 言うと、俺の頬に雫が落ちてきた。

 雨じゃない。空は晴れていて、雨になることは絶対にない。

 じゃあ、何か。空を見ると、クロエの顔が一番に入ってきた。その表情は、雨が降っていた。

 ポツポツと、少量ながらも、雫が落ちてくる。

 なんだよ、その顔は。そんなに、苦しかったのかよ。

 飛んでいってしまったクロエを見ながら、俺は拳に力を入れていた。

 なんで……なんで、俺の平穏にあんな雨が降らなくちゃいけないんだ。なんで、誰かが犠牲にならなくちゃいけないんだ。

 そんな平穏なら、いらねぇよ。

 ポケットに入っていた最強の人間の力以外のメダルが強く光りだした。

 それを掴んで、俺は空中に弾く。


「俺、御門恭介が願い乞う。理不尽を嫌い、日常を愛し、仲間を救う強い力を。黄金に輝きし英雄の剣を。来い、アーサーの意思を継ぎし剣、磯崎京介の力!!」


 メダルをキャッチすると、メダルは変化し、黄金の光を放つ一本の剣となった。

シリアス感がぁ!!

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