閑話 僕らの真理亜さん その②
今回はシリアスかも……
読んでくれると嬉しいです
少女、真理亜はいつにも増して長くお風呂に浸かっていた。
それもその筈、真理亜がこの頃気に始めた男子、御門恭介が自身の家に泊まりに来ているのだから。
恭介は先輩でありながら、馬鹿であり、アホであり、助けようのない傲慢を持った人だ。
命を投げ打った自分を、何の利益も求めずに助け出し、尚且つ事件を解決させてしまうという、今まで会ってきた中でダントツ訳のわからない人種だ。
だからこそ、恭介に興味を示しているのだが、それの本意を真理亜は知らない。
「ああ……なんで、私は先輩を家に呼んだんでしょう。茶化されるのは分かっていたのに……」
真理亜は肩まで湯に浸かり、頬を赤らめて呟く。
「そもそも、先輩の不注意で家がなくなったんですし、私が助けを出す必要なんてないじゃないですか。……それに、先輩には幼馴染の綺羅さんがいますし……」
ズキンっ。
何でもないのに胸が苦しくなる。そんな感じを真理亜は一瞬感じた。
恭介のことを考えると、いつもあの幼馴染の顔が一緒に思い出される。その度に、胸が苦しくなって、辛くなる。
一体、これは何なのだろう。
真理亜は体感したことのない痛みを噛み締めながら、湯船に顔を沈める。
前に、自分は先輩のことが好きなのかもしれないと思ったが、そんなことはない。ありえないのだ。
だって、先輩は人ではない。死を超越した存在。神に今のところ一番近い存在なのだ。
対して、自分は人間だ。人なのだ。普通、人は人を好きになる。
しかし、私が好きだと勘違いした者は、人ではない。人の形をした何か。
だから、先輩を好きだというこの感情は勘違いなのだ。
「なのに、この痛みはなんですか。まるで、恋をしている人が味わうような痛みじゃないですか。……バカバカしい。私は、一度あんなことをされただけで、人でない者を好きなってしまうのですか」
そうは言うが、真理亜は気づいている。
自分は、先輩である御門恭介のことが……。
そんなことを考えていると、お風呂に誰かが入ってくるのを感じ、ドアの方を見ると、そこには巫女の花宮薫がいた。
「あれ。真理亜様、お入りでしたか。では、時間をずらして――」
「薫。お風呂の時くらい、敬語はやめてくれますか?」
「……その言葉、そのままお返しするよ」
ニコッと笑って、薫は振り返った。
真理亜と薫は幼馴染である。昔から仲の良い姉妹のように育ち、今に至る。
「薫は知ってるでしょう? 私が、こういう話し方の方が慣れてるってこと」
「それでも、敬語はやめようよ。私もやめるからさ」
「そう、言われても……」
薫は真理亜が入っているお風呂に侵入し、肌を寄せ合う。
白い肌と、白い肌が重なり互いの温もりを感じる。
「か、薫……」
「ん、なに?」
「こ、こういうのはどうかと思うんですけど……」
「あはは。昔はこうやって一緒にお風呂入ったじゃん?」
「それは昔の話でしょう?」
「まあまあ、固い事言わないでさ。ほれ!」
「きゃっ! ちょ、ちょっと、そこは胸――ぁんっ」
薫の細い女の子らしい腕が、真理亜の体を抱きしめる。
いたずら好きの薫はそんなところで止まらない。真理亜のよく育った胸を鷲掴みし、優しく荒々しく揉み砕いていく。
そのせいで、真理亜は一層顔を真っ赤にして、変なことを出さまいと抑えるが出てしまっている。
「か、薫!」
「きゃっ。……おおう、真理亜が反撃してくるとは考えてなかったよ」
「反撃くらいします! なんで、私の胸をも、揉むんですか!」
「だって、可愛んだもん。真理亜さ、あの男の人のこと好きなんでしょ?」
「は、はあ!? あ、あの人はひ、人ではありません!!」
「……それって、どういうこと?」
何も知らなかった薫に事情を話し、ついでに相談相手になってもらうことにした。
話を聞いた薫は少しの間びっくりしたような顔をしたが、さすがここの神社の巫女だ、こういうことには慣れているらしく直ぐに状況を飲み込んだ。
「なるほどね。だから、あの荒れていた雷龍を倒せたんだね」
「そうなんです。あの人は人ではないんですよ」
「でもさ。好きなんでしょ?」
「だ、だから! 人は人を好きになるんです! あの人は人ではないので、好きになるなんて――」
顔を真っ赤にして真理亜は自身の論を話していると、薫は首をかしげて不思議そうにいう。
「なんかさぁ。真理亜って勘違いしてるよね?」
「え? 先輩が好きだってことですか?」
「そうじゃなくて。って、好きなんだ」
「す、好きなわけないじゃないですか!」
「ねえ、それ好きって言ってるからね?」
「き、嫌いです! あんな変態!」
クスクスと、真理亜の動揺を可笑しそうに笑う薫。
そして、なぜか真理亜の頭を撫でながら、お姉さんぶって言う。
「いい? 確かに人は人を好きになるかも知れない。でも、絶対人を好きにならなきゃいけないわけじゃないんだよ。人っていうのは、案外曖昧で、自由なんだよ」
「何を言っているのか、わからないですけど」
「だから、別に真理亜があの人を好きになってもいいってこと」
「べ、別に好きなわけじゃ――」
「あー、はいはい。好きじゃない好きじゃない」
「からかってますよね!?」
「うん♪」
「かーおーるー!!」
「あははは、真理亜が怒ったー」
お風呂場は女の子たちの若々しい声で満たされ、呆れるくらいの元気さでいっぱいだった。
その中で、真理亜はある言葉が心に刺さっていた。
『人っていうのは、案外曖昧で、自由なんだよ』
薫が言ったこの言葉が、恭介が言った言葉に似ていて、なんだか晴れないモヤとして心を覆い始めていた。
その頃、恭介は……。
「あ、あのぉ、部屋に戻って寝たいんですけど……」
「ダメじゃ! 私の酒の付き合いをせんか!」
「いや、酒って……俺未成年ですけど」
「関係などない! さあ、飲め! 酒はうまいぞ!!」
「ごぼっ、やめ、おま、ちょ!!!!」
酔った天照に無理やり酒を飲まされていた。
シリアスが続くのかな……頑張って、コメディも入れていきたいと思います!