渡る世間は間違いだらけ
読んでくれると嬉しいです!
放課後、俺は神崎の家に来ていた。
なぜか。それは一話前を見てくれ。……わかったよ! 家に泊まりませんか、と言われたからなのであるが、何か? んん? なーにーかー?
「せ、先輩?」
「ん? 何?」
「いえ、その。なんでそんなにニヤニヤしているのかと思って……」
「気にするな。お前の体には全くこれっぽっちも興味なんてないから」
「……それはそれで、気になりますけど」
実際、ニヤニヤが止まらないのは本当だ。
だってさ! 女の子のお部屋ですよ!? 普通の男子高校生ならひーひーとか、ハーハーとか言い出すレベルですよ!? 俺なんて、まだいいほうでしょ!
と、変な言い訳を考えていると、いつの間にか神社に来ていた。
「……おい。神崎」
「はい?」
「お前、なんで神社に……?」
「なんでって……私、巫女ですし」
「……」
そうでした! こいつ、こんなムチムチな体で巫女でした! そして、並行して嫌なことも思い出してしまった。
そうだ。コイツは巫女で、俺が通う高校の校長の孫娘だった。
つまりだ。今から行く場所には当然、校長がいる。あの、いけ好かない表情をする校長が。
「お帰りなさいませ、真理亜様!?」
「ど、どうして、そんなに驚いているんですか!」
「い、いいい、いえ! だ、だって、真理亜様が男性の方とお帰りになったもので……」
俺たちを迎えたのはそんなに年の離れていないように見える女子だった。
しかし、なんでこんなに驚いてんだ?
あ、俺がいるからか。
「と、とにかく! これは急いでおばあさまに――――」
「あー! やめてください! あの人に言うと面倒くさいことに!!」
「ほう。わしに聞かせられないことがあるのか。お前も成長したのゥ」
「「おばあさま!?」」
おおっと! ここであの婆さんが出てきやがった!
俺は別に隠れるということをせず、鳥居に寄りかかっていると、婆さんが俺に気がついた。
そして、嫌な笑みとともに近づいてきやがった。
「ほう。ほうほう。お主、やはりわしらの仲間になりとうなったのか?」
「馬鹿言え。婆さんの仲間になんてなるかっての」
「なんじゃ。じゃあ、どうしてここにいるのじゃ? まさか、真理亜の婿にでも――」
「おばあさま!!」
神崎は婆さんの襟首を掴んで奥に引っ込んでいってしまった。
残された俺と、迎えてくれた女子はきょとんとしてしまったが、直ぐに女子の方が動いた。
「あの」
「ん、なに?」
「あなたは、あの雷龍を倒したと言われるお方ですか?」
「……そうだけど」
「わー! あ、私、花宮薫って言います! 私、あの雷龍を倒した方にずっと会いたかったんです!」
「あ、そう。それで? 幻滅でもしたか?」
「いえ! 幻滅はしてませんけど、少し残念です!」
「ねえ? それを幻滅って言うんだよ? わかるかな?」
そのあとも女子、薫は目をキラキラさせながら俺に質問してきた。
他愛もない話をしていると、中から巫女装束を身につけた神崎が出てきて、少し赤くなりながらも俺に話しかけてきた。
「せ、先輩」
「おう、神崎。意外に長かったな。それに着替えてたのか」
「はい。その、おばあさまにこの姿でいろと言われまして。その……変じゃないですか?」
「いや? 似合ってると思うぞ?」
巫女なんだし。
そういう意味で言ったはずなのだが、なぜか神崎は先程よりも顔を赤くさせて俯いてしまった。
それを見ていた薫はニコニコと笑って奥の方に行ってしまった。
う~ん。何だったんだ? 俺、何か変なことでもしたかな?
全く覚えのない空気の変わりように俺は少し考えたが、面倒になったのでやめた。
そうこうしているうちに辺りは暗くなり、少し肌寒くなってきた。
「あ、寒いですよね。その、こっちです」
「ああ」
俺は神崎に案内されるがままに歩き、神社の裏まで来た。
すると、そこには意外に大きな家が立っていた。
あれ? でも、この大きさだと神社の表側から見えちゃうんじゃ……。
「大丈夫ですよ。天照様が加護で家を見えないようにしているんです。ある程度近づかないと見えないようになっているんですけど、やっぱり普通じゃないですよね」
「そういうことか。まあ、いいんじゃないか? 面白そうだし」
「そ、そうですか……」
神崎は表情豊かに話していた。
俺も、なんだかわからないがあるがままに答えていると、神崎が喜んでいたのでそのままの答え方で答えていると、家の目の前まで来た。
家に上がると、中はすごいことになっていた。
何がかって? まず、天井にシャンデリアがあるんだ。もう、そこからわかるように金持ちなのだろう。
試しに聞いてみると、
「なあ、神崎」
「なんですか?」
「その、お前って金持ちなのか?」
「……はい? 私の家はお金持ちなどではありませんよ。ただのおうちです。みんなそうでしょう?」
「……お、おう」
そうか。シャンデリアは普通なのか。俺の家にはなかったのはきっと付けてなかっただけなのだろう。そう信じたい。
そんなこんなで歩いていくと、リビングに着き、俺は椅子に座らされた。
どうやら、ご飯のようだ。
「先輩。ちょっと待ってくださいね。直ぐにできますから」
「あ、ああ」
なんだか、こうしていると夫婦みたいだなぁと思うのは俺だけか? いや、きっと俺だけなのだろう。
非リア充はこういうのには弱い。なぜなら、女子との接点がないからだ。
ちなみに、綺羅は女子ではない。化け物だ。
「はい、先輩。できました」
「お、おう。煮物なんだな」
「好きじゃなかったですか?」
「いや、俺は普通なんでも食べる。好き嫌いはないんだ」
「良かった。あとはお口に合うだけですね」
嬉しそうに、安心したように笑みを浮かべる神崎。
そんな神崎を見て、俺は綻んでしまいそうになる。後ろにいるあいつらがいなければ。
「おい。なんで後ろからニヤニヤしながら俺たちを見ている?」
「いやぁ。新婚夫婦ってこんなんだろうなぁって思ったらついねぇ」
「そうじゃのぅ。どうじゃ? 婿にこんか? んん?」
「あは♪ 真理亜様の可愛らしい格好を見られるのは私的に嬉しいですしね!」
とても嬉しそうに話していた神崎の表情が徐々に引きつっていくのを見ながら、俺たちの夜は深まっていった。