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リフォームの匠は家を再建してくれるだろうか?

読んでくれると嬉しいです!

 さて皆さん。家を無くした御門恭介です。

 大変なことになってしまいました。いや、ホント、今にも泣きそうなのだがそうも言っていられない。

 なぜか。学校があるからだ。

 行かなくてもいいじゃないか? だから、そうもいかないんだって。

 俺の家が燃える少し前、俺は綺羅に先に学校に行けといった。そして、俺も後で行くから、とも言ってしまったのだ。

 つまり、何が問題かというと、綺羅だ。全て、綺羅なんだ。

 後で行くと言った俺のことを信じて綺羅は学校に向かった。だが、俺が学校に行かなければ、多分、いや絶対報復が起こる。

 正義の包丁が、顔面に突き刺さる。

 ということで、名残惜しいが、家を後に俺は学校に向かった。


「はあ、憂鬱だ」

「せ、先輩。なんか、黒いオーラが、満ち満ちてますけど」

「あ? そりゃそうだろ。家が燃えたんだぞ? おやじに殺されそうなんだぞ?」

「い、いえ、学校が、です」

「はい?」


 何を言っているんだ、このエロボディは、と一瞬前の俺は思っていた。

 しかし、目の前の学校を見るとびっくり、学校が真っ黒なオーラで包まれているではありませんか。

 しかも、その発生源は俺の教室の窓から外を覗き込んでいる女の子。き、綺羅様です。


「俺、今日一日生きていられるかな?」

「そ、そんなこと私に聞かないでくださいよ。わ、私は先に行きますからね!」

「あ、おい! 逃げんな!」


 そそくさと神崎は俺を置いて学校に行ってしまった。

 ……どうしよう。綺羅に電話で今日はやっぱり学校行かないと言おうか。ダメだ。めっちゃこっち見てる。綺羅がすんごい目でこっち見てます。


「やっぱ、学校行かなきゃダメか」


 俺は先程よりも深い溜息を着いて、重い足取りで教室に向かう。






 教室のドアの前まで来て、俺は迷っていた。入るか否かを。

 普通、学校に来て教室をドアを開けようかなどと考える奴はいないだろう。いたら、すぐさま病院に行くことをオススメする。

 しかし、しかしだ。俺は、この中にいる魔物(綺羅)に会いたくはない。会ったら最後、息の根を止められかねない。

 でも、入らなくても余命が少し伸びるだけで結局殺されるんですけどね!

 そう思って、俺は意を決してドアに手をかけた。


「ワーオ」


 ハローを言い間違えたわけではない。ただ、俺の教室がいつもと違う緊張を帯びていたことに心から驚いていたのだ。

 ちなみに、今は休み時間だ。つまり、健全な学校であったら勉強するなり友達と話したりするだろう。しかしだ。俺の教室では今、皆座って何をするでもなく精神統一をしていた。

 なぜか。魔物(綺羅)の真っ黒さに飲まれないようにである。

 俺は一度ドアを閉めて、深呼吸をする。

 俺は何も見なかった。俺は全然これっぽっちも見てない。綺羅が何人かを失神させてたなんて見てなんかいない。

 これは夢だ。悪夢だ。きっと頭でも吹き飛ばせば覚める。

 試しにやってみようかと思ったが、頭を吹き飛ばすなどカバンしか持っていない高校生にはできない処遇だとわかり、早々に諦めた。

 そして、何事もなかったかのように俺は再びドアを開ける。

 すると、目の前にすごい形相の綺羅が立っていた。

 バタンっ!

 俺はドアを勢いよく閉め、その場から走り去った。


「恭ちゃん。なんで逃げるの?」

「あなたが怖いからですよ!」


 綺羅は閉められたドアを開け、俺を追いかけてくる。

 ああ、きっとバイオハザードって本当にあったらこんな感じなんだろうな。でも、ゾンビ百体より、綺羅一人の方が怖いのは気のせいでしょうか。いいえ、誰でも。

 現実逃避も程々に、俺は現実に帰ってきた。


「恭ちゃん。止まって。止まらないと包丁を投げるよ?」

「包丁は投げるものじゃありません! 切るものです!」

「じゃあ、切るよ?」

「頼むから野菜を切ってくれ!!」

「じゃあ、恭ちゃんのキュウリを――――」

「言わせねぇよ!?」


 尚も、綺羅は笑顔で包丁を持って俺を追いかけてくる。

 怖い怖い怖い! 笑顔って、笑顔ってなんだよ!

 その日、俺は半泣きのまま学校中を走回った。







 放課後、俺は神崎に呼ばれていい記憶のない体育館裏に来ていた。


「なあ、神崎」

「はい?」

「もしかして、また槍で俺を刺す気か?」

「そ、そんなことしてませんよ!」

「いや、したよな? つい先日したよな?」


 しかも、今も槍を装備してるし。殺る気まんまんじゃねぇーか。

 俺は肩を落として、そこら辺に座り込んだ。

 すると、神崎が俺に近寄ってきて、なぜか俺の隣に座る。

 待て待て待て、なぜ俺がドキドキしなくちゃいけない。なんで、俺の心臓はバクバク言っているんだ?

 そんなことを考えても、もっと心臓がバクバクと高鳴るばかりで収まる気配がない。

 不意に神崎を見ると、上気した頬、つぶらな瞳、何かを言いたそうで言えない口元。全てが可愛らしい女の子そのものだった。

 それを見た瞬間、俺の脳内は爆発した。

 可愛すんだろうが、コンチクショウ!

 何だ。何なんですか、この状況!? 告白か? 告白なのか? 俺にも春が来るのか!?

 そんなことを考えていると、神崎はスッと俺の横に立ち上がり、俺を見ないで話し始めた。


「せ、先輩、今晩……」

「……」

「今晩、私の家に泊まりません?」


 ええ、わかっていましたとも。俺に春など到来しないことくらい……。


「……はい? はいぃぃぃぃっぃぃいぃぃぃぃ!?」

「えっと、ど、どうかしました?」


 俺の驚き用に神崎は少し引いていた。

 だが、そんなことを問題ではない。今、神崎は家に泊まらないかと言ったのか? 言ったよな? 俺の腐った耳の聞き間違いじゃないだろうな!?


「か、神崎。今、なんて言った?」

「え? だから、今晩私の家に泊まりませんか? それとも、家が治るまで――――」

「ああ、神よ! お前がいたことを感謝する!」

「ん? 呼んだ?」

「お前はお呼びじゃねぇ!!」


 急に飛び出てきたタナトスを一蹴し、俺は嬉しさのあまり飛び跳ねていた。

 女の子の家だ! 幼馴染の家でなく、れっきとした女の子! まさに、勝ち組! 俺の明日に希望が出てきやがった!

 真っ赤な夕日の中、俺はガッツポーズを取り、背後で神崎はそんな俺を見てクスクスと笑っていた。

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