頭痛の種は分かっているが、それを取り除くための方法を俺は知らない……
遅くなりました! すみません!
読んでくれると嬉しいです
憎たらしい朝の光。俺はいつものように幼馴染に起こされるまで目を開けまいとずっと寝ていたのだが、どうしてだろう。綺羅のやつ、来ないぞ?
流石に、時間的に厳しいと判断した俺は目を開けると、そこには目を閉じて顔を近づけてくる黒髪美少女がいたんだ。
……ホントだよ?
「……差し支えなければ、この状況を説明してもらいたいんだけど?」
「はうわぁあ!! せ、先輩!? なんで起きてるんですか!?」
「いや、なんで一生寝てなきゃいけないの? 俺、死んでるの? まあ、ゾンビだから死んでいるんだろうが」
「い、いや、そういうんじゃなくて! 今まで起きなかったじゃないですか!」
俺の上にいたのは神崎真理亜。こないだ、俺が運悪く助けてしまった友人だ。……たぶん。
「……ん? もしかして起こしに来たのか? それはすまないことをしたな。俺は綺羅のムカつく声じゃなきゃ起きれないんだ」
「自慢しているのか、暴言を吐いているのかどっちかにしてくださいよ……」
いやいや、俺は自慢、もとい褒め称えているんだぞ? ほんと、綺羅のあのムカつく声じゃなきゃ俺の眠りを妨げることは誰もできないって。
俺は伸びをして、大きなあくびも付け加えて頭の回転を上げる。
そして、
「神崎」
「はい?」
「俺のことが好きなのはわかってるんだ。でもな? そろそろどいてくれないと、俺の息子が起きちまうんだよ」
「す、すすす、すす、好きなわけないじゃないですか!」
「うん。どっちかな? それはどっちを指してるのかな?」
「先輩のバカ――――!!」
「ちょ、その槍はダメ――がはっ」
朝から鮮血が俺のベッドを汚していく。まあ、その鮮血も俺のなんだが。
体が回復してから、俺は立ち上がり息を上げているドSエロエロボディ美少女巫女にここにいる理由を聞こうと方に触れると、スッと何かが俺の目の前の通った。
壁の方を見ると、そこにはよく研がれた包丁が一刀。
その反対側には、怒りの形相の幼馴染。また、俺の目の前にはバツが悪そうな美少女巫女。
問おう。お前ら、この修羅場は何なんだ?
一応、幼馴染が怒っている理由は予想できる。神崎がいるからだ。そして、この場合、神崎がいることによって俺にもとばっちりが来ていると考えられる。
つまりだ。
「全て神崎が悪い」
「ええ!?」
「そう驚くことじゃないだろ? ほら、お前が帰ってくれれば、俺にもとばっちりが来ないんだし?」
「そ、そんなぁ!」
「か~え~れ~よ~」
「そ、そんなに言わなくても……」
とうとう、神崎は目に涙を見せてしまった。
さ、流石にやりすぎたかな?
そう思って、俺が謝ろうとすると、スッと再び包丁が俺の前を通った。
「あの、綺羅さん? 包丁は危ないと思うんですけど。そこのところどうお思いで?」
「大丈夫。当てるつもりだから」
「それ、全然大丈夫じゃない! むしろ危ない! 俺の命がまず危ない!」
「大丈夫。私は痛くないから」
「俺は痛ぇんだよ! すんごい痛ぇんだよ! 死んじまうわ!」
「……もう、いっそ死んじゃえばいいのに」
何だろう。最後の一言は聞こえなかったけど、殺気だけがひしひしと伝わってくるよ。これがあれか。俺の後ろに立つな、とかいう伝説の殺し屋の感じていた殺気か!
俺はそんなことで思考を紛らわせ、平常心を保っていた。
しかし、今度は神崎が動いた。
「先輩を殺すのは困ります!」
「か、神崎。その言葉は今だと誤解を受けるんだけど……」
「……恭ちゃん。この子、バラバラにしていい?」
「怖いよ! 怖すぎるよ! そして、怖いよ!?」
ちょっと、なんで綺羅さんは怒ってるんです!? 俺のせい!? まさかの俺のせい!?
神崎と綺羅が火花を散らしながらにらみ合って、まさしく一触即発の空気の中、俺は深い溜息をつきながら、そっと部屋を出た。
リビングに向かうと、そこにはいっぱいのコーヒーを片手に新聞を見るダンディな大人が一人。
「おお、主様じゃねぇかよ。がっはっはっは、朝から大変だねぇ!」
「お前は朝からテンション高ぇんだよ。雷電」
そう、このダンディなおっさんはこないだの事件で俺が倒した一匹の龍なのだ。
あのあと、飼うにはデカイ。でも、家には入らないと色々考えていたら、急にあの龍が一人の人間に変身したもんだからびっくりした。
どうやら、本人は昔人間だったらしく、普段は格好いいという理由で龍の格好をしていたらしい。
「そういえば、ニュース見たか? どこぞの海が一時期沸騰して消えたらしいぞ?」
「は? 海が沸騰? 消えた? なんだよ、そのファンタジーは。元●玉でも投下されたのか?」
「いや、どうやら原因はわからんらしいぞ? がははは、これは面白いことが起こりそうだな!」
「……勘弁してくれよ、もう」
俺は本日二度目の溜息をして、手近にあったコップでコーヒーを作って口に持っていった。
「……苦ぇ」




