戦争の終結
地面に伏した未来の俺を見つめて、俺は絶対的な力を持って一歩ずつ近づいていく。
「もういいだろ? こんな戦いに何の意味があるっていうんだよ」
「意味だと? そんなもの……考える必要すらないだろ」
言って、未来の俺は辛い表情を見せながら立ち上がる。どうやら、まだ戦うようだ。
俺も応戦するように拳に力を込める。だが、未来の俺の体はすでに限界だったのか、すぐに地面に沈んでしまう。
もう、戦える体ではない。それは目に見えていた。俺は、拳に込めていた力を解いた。
「なんでだよ。なんでお前は戦うんだよ。お前は、どうして俺を殺そうとするんだよ!」
「人が人を殺すのに、理由が必要か?」
「必要じゃない。必要じゃないけど、お前のそれは殺意に感じられないんだよ」
そう、未来の俺の考えには、行動には俺に対する殺意が感じられなかった。未来の俺の強さは規格外だ。俺がこうして進化しなかったら、太刀打ちすらできなかっただろう。
それはつまり、未来の俺はすぐに俺を殺せたのに、殺さなかったことになる。その理由が俺には理解できなかった。
「殺意を伴わない殺害が不思議か? たまにはそういうのもいいもんだろ? いや、昔の俺ならそういうのは嫌がるのか。まあ、いい。それでも、俺のやることに変わりはないんだ」
再び、未来の俺が立ち上がろうとする。対して、俺は何もせず、悲しい顔を見せるだけだ。
当然、未来の俺は立ち上がれなかった。体が完全に悲鳴を上げているからだ。それを知っていた俺は、もうやめろと心で叫ぶ。なぜ戦うのだと、どうして争うことしかできないんだと叫び続ける。
だが、その思いを裏切るように未来の俺は立ち上がろうと奮起する。
「もういい。もういいじゃないか。俺の勝ちだ。お前は負けたんだ。もう、諦めろ」
「諦めろ? ふざけるな。お前は他人に言われて諦めるのかよ。違うだろ? 俺なら、諦めるわけがなんだよ。それが御門恭介ってもんだろ」
「でも、そのままだと死んじまうぞ! お前は……お前は不死身じゃないんだろ!!」
俺の言葉を聞いて、未来の俺は渋い顔をする。どうやら、知られたくなかったことらしい。それでも俺は知ってしまった。目の前の俺は、死ぬことができるのだと。
「お前はどうしてそこまで……」
「そこまで知っちまったのか。はぁ、だからやりにくいんだ、俺は。他人のことは疎いくせに、自分のことはすぐに勘付きやがる……仕方ないな。もう時間もなさそうだ。俺の負けも確定したし、過去の俺が強くなったのも確かだ。ならもう、隠すことはないか」
何を言っているのだろう。わからないが、どうやら未来の俺は真実を包み隠さず話すらしい。
俺は、地面に座り込んでいる未来の俺を見ながら、真実を耳にする。