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後日談、それでも俺は苦悩する……?

うん。なんかめちゃ伸ばした感が……


次章予告はあの人が……!


読んでくれると嬉しいです

 カンナカムイこと、雷電を倒してから、約束通り俺は自分の教室に戻ることにした。

 教室のドアを開けると、一斉に視線が俺に向く。まあ、当然だろう。集中していたらいきなり変な音がなったんだから……あれ? なんかどうも様子がおかしいぞ? なんかみんな不審な目で俺を見て……。


「よぉ、御門……お前、どこでトイレしてたんだ?」

「え? 嫌だなぁ。女子トイレに決まって――ああ! すみません! 嘘です! 男子トイレですって! だから、女子のみなさん、そんな冷たい視線を向けないで!!」

「そうかそうか。じゃあ、もう一度だけ聞くからな? どこで、お前はションベンしてたんだ?」

「だ、だから、男子トイレだって……」

「よし。本当のことを言うつもりはないらしいな。質問を変えよう。なんで上着がない? そして、ワイシャツがそんなにボロボロなんだ?」


 どうやら、みなさんの視線の理由はこの格好にあったみたいだ。

 まあ、そうだろう。トイレに行っただけで、ボロボロの格好で帰ってくる生徒はまずいない。だが、安心しろ。この程度の質問は、予想範囲内だ。

 俺は考えておいた言い訳を披露すべく、口を開く。


「実はですね、トイレに野良犬――」

「本当のことを言わないと、退学だからな?」

「……」


 終わった――――!! 言い訳もなにもねぇ! 道が潰された!!

 俺は考えておいた言い訳を一瞬で潰された悔しさでノックダウン寸前だった。

 こうなったら……こうなったら本当のことを――――

 そこで俺は気がついた。

 果たして、ちょっとそこら辺にいた龍を殴ってきました。なんて言って、信じる人がいるだろうか?

 いや、いないだろう。いたとしたら、そいつは頭がイってる。

 ということはだ。本当のことを言おうにも言えない状況になってしまった。

 仕方なく、俺はよくありそうな言い訳を瞬時に考え、それを話した。


「いやちょっとこの頃、遅めの中二病に目覚めてしまってですね。さっきも上着を脱ぎ捨てて、自分でワイシャツもボロボロにしてグラウンドを駆け回ってたんですよ」


 恥ずっ! なにこれ、俺ってチョー馬鹿みたいじゃん! なんだよ、遅めの中二病ってよ!

 俺は自分で考えた言い訳に言い切ってから後悔をした。

 教室からは冷え切った空気が、教師からはかわいそうな子を見るような視線が俺を襲う。

 あー! これも全て神崎のせいだ! あいつがパパッと雷電を倒せばこんなことにはならなかったのに!

 俺が泣きそうなのを我慢していると、教師がニコッと笑い、


「そうか。俺はてっきり、龍と戦ってたんですって言うと思ったよ。いや、中二病ならそれくらい恥ずかしがらずに言うべきだね」

「誰がそんなこと言うかよ! てか、なんであんた知ってんだよ! 見てたのか!? 見てたんだろ!?」

「……いい精神科を教えてやろうか? どうやら、お前は中二病の亜種を患っているみたいだ」

「なんだよ、中二病の亜種って! てか、あんたの方が中二病だよな!?」

「はぁ。そういえば、さっき校長からお前を寄こすように言われたんだっけ」

「なんで、そういう重要なことをうろ覚えなんだよ! しっかりしろよな!」

「うるせぇ。さっさと行け。同族嫌悪とはこのことだな。なんか、お前と話してるとムカついてくるよ」

「結局、中二病の自覚あんのかよ!!」


 俺は半ば強制的に教室を追い出され、しぶしぶ校長室に向かった。

 校長室。それは意味もなく無駄に悪いことをした感が満ち満ちている部屋である。職員室に入るのにも勇気が必要なのに、校長室はその数百倍の勇気がいる。

 簡単に言えば、フリ●ザが第一形態から一気に第四形態に変身するようなものだ。

 マジで恐ろしいからな、あれ。

 そんなこんなで俺は今、校長室の前で入ろうかどうか迷っていた。


「てか、なんで俺が呼ばれてるわけ? 別に留年するわけじゃ――――可能性はゼロじゃない。うん。ゼロじゃなかった」


 急に心臓がばくばくと心拍数が増えていく。

 なにこれ。マジで緊張するんだけど。もしかしたら、彼女と手を繋ぐ以上に緊張するんじゃない? まあ、彼女いないからわからないけど……。

 と、少しの気晴らしをしてみた結果、緊張は解けたものの心へのダメージが深刻化していった。


「はぁ……こうしてても始まらねぇよな」


 俺は溜息を着き、仕方ないと割り切って扉を開けた。

 すると、そこには半裸の神崎が……あっれー。どうしたんだろ。目がおかしいや。

 目を擦り、再度見る。

 うん。神崎だ。あ、顔が真っ赤になった。

 神崎の攻撃。槍で突く。俺は致命傷を受けた。


「……って、死んだわ!!」

「生き返ってるじゃないですか! なんで、ノックもせずに入ってきてるんですか!」

「はー? ノックって何? 美味しいの? てか、お前こそなんでこんなところで着替えてるんだよ。ここは更衣室じゃねぇっての」

「こんな血だらけの服を更衣室で着替えられますか! 殺人者だと思われるじゃないですか!」


 ちょ、それをお前が気にする? お前、何回俺を殺してると思ってんの? まあ、その分蘇ってますけど。

 神崎が血で染まったセーラー服を胸元まで持ち上げて見えないようにしているようだが、これはこれでいやら――如何わしいぞ?


「なんか。先輩の目がいやらしいです」

「いや、お前のその体に言われたく――ああごめん! いやらしくない! 全然これっぽっちも魅力無いから!」

「先輩のバカ!」

「なんで!? グフっ」


 再び腹を裂かれ、内蔵がこんにちわした。

 おいおい。痛みはあるんですよ? 可愛そうだと思いません?

 と、そんな痴話喧嘩(?)をしていると、校長室のドアが開いた。


「いやはや。孫が世話になったのゥ」

「……いや、あんた誰だよ? ……ん? ちょっと待て。あんた校長か? 待て待て待て。じゃあ、孫ってのは神崎のことですか!?」

「お、おばあさま。なんで先輩をお呼びになったんですか?」


 なんと。神崎のお婆さんはこの学校の校長だったのか。

 ん? じゃあ何? お礼の品でももらえるの? やったね、ラッキー!

 俺が浮かれていると、神崎の婆さんはニコッと笑って、


「そこでじゃ。わしの孫を嫁にやるというのはどうじゃ?」

「お礼、マジ感謝……はい? 嫁? 誰を? ……こいつを?」

「こ、コイツとはなんですか! 私はれっきとした女の子で――って、そういうんじゃないですよ! おばあさま! これはどういうつもりですか!」

「ふぉっふぉっふぉっふぉ。お前たち、傍から見れば息ピッタリじゃったからな。嫁にでもやればいいかと思ったのじゃが、どうやらアマテラスがキレそうじゃからやめたわ」


 どんだけいい加減な人だよ! いや、そもそもアマテラスがなんでキレる?

 困惑する中、突如として厄介な奴が現れた。


「皆さんご存知、タナトスだよぉ! ……あれ? どしたの? 何この修羅場。面白そうだねぇ」

「お前はいきなり現れて何してんだ? 面白くもなにもねぇよ。修羅場でもないぞ?」

「なーんだ。つまらない。まあ、そのお婆ちゃんは少しは面白そうなものを抱えているけどね」

「ほぅ。さすが神といったところか。ほれ、これは草薙の剣じゃ。持ち主が家出してしまっての。今探しておるのじゃが……まあ、そんなことはいいか。さて、御門恭介と言ったか。お前、とんでもないやつじゃのぅ。まさか龍をその拳で文字通り吹き飛ばしてしまったのじゃから。はてさて、お前は味方か敵か。はっきりしてもらおうかのぅ」


 なるほど。そういうこと、か。

 考えれば分かることじゃないか。手に負えない龍を吹き飛ばしたのは自分の育ててきたであろう孫ではなく、見ず知らずの少年ときたら、まず敵か味方を区別する必要がある。そして、この集まりの意味はそれを見極めるといったところか。

 さて、どう答えたものかな。

 俺が迷っていると、神崎が一歩前に出て口を開いた。


「おばあさま。先輩は敵ではありません。現に私を助けてくれました。それに、こんなことをするのは失礼ではないでしょうか?」

「それもそうかもしれぬ。しかしじゃ。事は一刻を争うのじゃよ。ここで敵か味方を決めてもらわねば、最悪の場合は……のぅ」


 おいおい。危なっかしいなぁ。最悪の場合何されんの? ねぇ、なんで剣に手をかけているわけ?

 脅しを受けている中、俺は溜息を着いて、振り返った。

 あーあ、やってらんねぇ。なんだよ敵か味方とか。

 俺が一歩歩くと、


「それがお前の答えか?」

「答えもなにも、何もしちゃいねぇよ。こちとら、トイレついでに邪魔だった浮遊物を倒しただけだ。そこに神崎がいて、偶然助けちまっただけだ。俺は、何もしちゃいねぇ」

「しかし、現にお前は――」

「だから、それは結果だ。結果的に倒しちまった。結果的に助けちまったということだ」

「つまり、お前は我々の敵になると、そういうことだな?」

「なんでそうなるかなぁ。俺はただの高校生だぞ? 敵もなにもないだろうがよ」

「じゃあ、味方なのか? なら、なぜ背を向けた?」

「だ・か・ら! 俺は敵でも味方でもねぇっつの。俺はただの高校生だ」


 神崎の婆さんの言い分もわかる。でも、俺は本当にただの高校生だ。いや、そのつもりだ。

 だから、敵でも味方でもない。ただの友達なんだよ。


「友達を助けんのがそんなに悪いことなのかよ?」

「と、ととと、と、友達!? はわわわわ……」

「ねぇ。なんでそんなに顔真っ赤なの? 嫌なの? 嫌なんだな? それ以外に顔が真っ赤になる意味がわかんないもんな……」

「ち、ちがっ! ……べ、別に嫌なわけでは……」

「ああ、わかってるよ。お前は俺のこと大好きだもんな」

「なっ……なんでそのことを――――って、うわぁぁぁぁああああああああ!!」


 えー。何その反応。俺、フラグ立てたつもりないんだけど……あ、それと槍で腹を刺さないで? マジで痛いから。

 俺は本日何度目かわからないほど殺され、痛みにも少しの慣れを感じ始めていた。

 いやぁ。慣れって怖いね! 死すらも慣れたら、なんでもできる気がするよ!

 と、そんなことをしていると、学校の下校のチャイムがなった。

 俺は校長室のドアを開け、


「あ、そうだ」


 と、ドアをコンコンっと二回ノックする。

 そして、


「ほら、ノックしたぜ? 神崎」

「……遅いですよ。先輩は」

「あっそ……じゃあ、また明日な」

「え? あ、はい。また明日、先輩」


 と、友達同士の簡単な、でもとても絆が繋がっている挨拶を交わして、校長室のドアを閉めた。

 俺は伸びをして、教室にカバンを取りに戻った。


「あれで良かったのかい? あちらの味方になれば成績だって免除だったかもよ?」

「んー。まあ、いいんじゃね? 成績なんて、結局は勉強だろ? 俺、高校生のつもりだからさ。勉強なんて、なんとかなるさ」

「そうかい。まあ、君の人生だ。どうやろうと僕は関係ないけどね」

「ははは。神様に言われるとなんか変な気分だな。でも、受験の時はちゃんとしてくれよ?」

「もちろんさ。耳元で答えを囁いてあげるよ」

「うん。それ反則だからな? 嬉しいけど、やめてくれよ?」


 そんなつまらないことを話しながら、俺はオレンジに染まった廊下をタナトスと一緒に歩いた。

 またこうして、一日が終わる。そして、また明日がやってくる。

 そして、俺の苦悩もまた、やってくるのだろう。でも、それはそれで面白い。

 どうせ死ねない体を持ってんだ。人生はアクティブでエキサイティングな方がいいだろう?

 ということで、俺はこれからも苦悩するらしい。

 空を飛ぶ一匹の龍を見て、俺は深く深くため息を着いたのだった。

ミ●トさん「死ねない体を持つ御門恭介は、ある朝行き倒れそうになっている幼女と出会った。その幼女にはどうやら妙な力があるようで、恭介は再び事件へと誘われる。頭を抱え、嘆いている間にも問題の日は近づいてくる。果たして、恭介が出す答えとは……?

 次章、ひとりぼっちの災厄編

 次章もサービスサービス!」

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