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俺と彼女

そろそろ終盤かな?


読んでくれると嬉しいです

 日が昇り、人々は目を覚ます時間。俺たちはいつものように起きて、いつものように平和を過ごそうとしていた。だが、そういうのは大抵の場合壊される。

 今日も、そういった理不尽で俺の、俺たちの日常は非日常と化していった。


 いつものように朝食をとっていた俺は、朝早いにも関わらず訪問者が来たことに特には不思議に思わず、どこかの新聞の勧誘だろうという考えで玄関に向かった。

 しかし、招き入れたはずもない少女は片手にパンを持ち、もう一方の手には血だらけのインドラを手にしてムシャムシャとパンを頬張っていた。

 ……なにこれ、ホラー?

 血だらけのインドラよりもこの状況が恐怖でしかない俺にとって、頬を引き攣らせながら驚いた顔をすることしかできなかった。

 すると、パンを頬張っていた少女は俺が来たのを見計らってパンを食べるのをやめて、ポイッとインドラを投げつけきた。

 や、やめろよ。血が付くだろ? てか、インドラは何をやらかしたんだ?

 俺はどうせインドラがどこぞの神軍に手を出したのであろう程度の考えしかなかったが、少女をじっくりと見た瞬間、どこかで会ったことがある気がして首を傾げていると、少女も首を傾げて、


「覚えてないの? 昔、会ったことあるんだけど……」

「昔……? えっと、それっていつごろ?」

「確か……暑かった日?」

「あ、暑かった日って……」


 いつのことだよ! とは流石に言えなかった。なぜか。それは少女の目が人の目としてはとても暗く、意識を飲み込まれそうになったからだ。

 ハッと、我に返ると俺の横に薫と真理亜が冷たい目で女神の力や槍を装備して臨戦態勢を取っていた。

 これは……どういうことだ?


「あ、あなたは! ど、どうしてここに!」

「……誰だっけ? ……あぁ、お腹すいたー。食べていい?」

「真理亜。この子、あの時の女の子だよね? しかも、とっても嫌な空気を纏っていた子」


 待て待て待て。俺をおいて話を進めないでくれませんか? この子は誰で、なんで真理亜たちが戦闘モードになってるんですかね!? 敵? この子は敵なんですか!?

 俺はまったく状況がつかめないまま、何かに巻き込まれたという自覚があるだけで何もできなかった。

 すると、状況を判断できていないのが分かってしまったのか、真理亜が大声で俺に伝えてきた。


「この人は、未来の先輩の仲間です!」

「……マジ?」

「マジマジ。夏休みのとき出くわした中にこの子もいたよ!」


 全然覚えてないんですけど。まあ、あの時は未来の俺との話に夢中でほかが全く見えていなかったのが原因だけど。

 状況が少しは掴めたので、俺も戦闘に加わろうかと思ったが、そうもいかなかった。

 ずんっ、と外から大きな音と家を大きく震わせるほどの地震が俺たちの行動を押さえつけた。

 こ、今度はなんだ?


「俺様を待たせるなよ、犬っころ。そろそろ消し飛ばしてもいい頃か?」

「け、消し飛ばす!? ちょ、危ないワード出たんですけど!?」


 喋るだけで十分家を震わせることができるだけの声が危険すぎるのに対してツッコミを入れてから、俺は少女の横を通って外を見る。すると、外には高層ビルといい勝負をするくらいの大きい三つ首の龍があぐらを掻いていた。

 ま、待ってくれよ。未来の俺の仲間にこんな奴いたっけ?

 こいつらが今度の敵だとはわかったが正直骨が折れそうだ。だって、強そうじゃん。俺、死にそうじゃん。やめてくれよ……。

 返事がないことに焦れったさを覚えたのか、巨大な龍が立ちあがった。その動きだけでも地面を震わせるあたり、コイツがどれだけ人騒がせな龍かがわかるだろう。

 そして、立ちあがった龍は咆哮のような声で話しかけてくる。


「殺っちゃうぞ? 返事がないから、殺っちまうからなァー? ――――最終試練発動、コード『絶対悪』。文献に則り『終末論』を発動する」


 瞬間、三つ首の龍の一つの頭から明らかにダメなパターンの高圧縮エネルギーが生成されていく。

 ……昨日の俺は一体何を考えていたんだ。こいつらとマトモにやりあったら命がいくつあっても足りねぇよ。

 そんなことを言っても、止めなくては俺の家どころかこの街が消し飛ぶのは目に見えていたので、玄関を蹴破って俺はポケットから一枚のメダルを弾いた。

 もう、異能のデメリットとかそういうの考えてる暇はねえ! とにかく、体が乗っ取られようとあのエネルギーを消し飛ばす!!

 頭に流れる言霊を紡いでいく。


「俺、御門恭介が願い奪う。信念を突き通し、偽善を破壊し、自身の力を困難という名の壁を破壊し続ける最強の力を。今、俺のもとに来い、真実を貫く拳!」


 瞬間、俺の体を莫大な力が縛り付ける。だが、それをグッと堪えて俺は地面を蹴った。

 頼む。あの攻撃を阻止するまででいい! それまでちゃんと動いてくれ、俺の体!!

 空気を蹴り、ありえない跳躍力で龍の頭まできた俺は全力で龍の頭を蹴り上げた。すると、それと同時に龍の口から高圧縮エネルギーの塊が大空へと雲をなぎ払いながら通過していった。

 あ、あっぶねぇぇぇぇええええ!!!! あんなの受けたらホントに終末しちまうよ! 一体何考えてんだよ、こいつは!!

 だが、今行ったのはあくまで攻撃を阻止しただけ。龍には一切のダメージはなかったらしい。龍は蹴り上げられた場所を掻きながら落ちていく俺を見下して、


「俺様の攻撃を阻止するとは。さすがは、マスターの弱体版だ。そこまではできるってことだな? じゃあ、これはどうだ?」


 言って、今度は三つ首全てに高圧縮エネルギーの塊が生成されていた。

 おおう。マジか。

 地面に着してから直ぐに地面を蹴って跳躍するが、見るまでもなく時間が足りない。

 クソッ! もう、ダメなのか!?

 そう思った瞬間だった。いつぞやに感じた『あの感覚』が俺の意識を吹き飛ばそうとする。

 くっ、来たか……。


『負けを認めるのか? じゃあ、俺に殺らせろよ』


 元々の力の持ち主、神谷信五の意識が俺を引きずり込もうとする。ダメだ。今意識が飛んだら、みんなを守れない。それだけは、絶対にダメだ!!

 必死に意識を保とうとするが、俺自身が負けを認めてしまったからか意識が安息を求めて消えようとする。

 頑張れよ。頑張ってくれよ、俺!! みんなを守るんだろ? 大好きだと気が付けたみんなを守るって決めたんだろ!! どうして、どうして俺は……。


――――こんなにも弱いんだ!!


 最後の力で叫んだ時、パンッと俺の中で何かが弾けた。


『大丈夫だよ。私と、一緒に闘おう』


 女の子の声。どこか懐かしくやさしい言葉。俺は、この声の主を知っていた。


「まり、な? ……真里奈!」

『さあ、手をとって。みんなを、私たちの仲間を助けよう?』


 死んだはずの真里奈が今、目の前で俺に手を差し伸べている。俺は意識が刈り取られる前にその手に希望を描いて必死に求めた。

 あと少し。あと少しなんだ……。

 主人公の柵を振りほどいて真里奈の手を取ると、体が断然軽くなり、同時に武術の知識がどんどん流れ込んでくる。

 これは……真里奈の記憶、か?

 温かく、やさしい感情が俺を包み込む。ああ、これは真里奈の温かさ。これは真里奈の優しさだ。

 感じなくてもわかる。俺に戦う力をくれたとだと。だから、俺はそれに応えるために与えられた武術の知識の全てを活用してあいつを呼んだ。


「来やがれ、天叢雲劍」

「おせェんだよ!! 死にやがれぇぇええ!!」


 俺が剣を持った時にはレーザーは俺の体から十センチも離れていなかった。これは避けることはできない。なら、切ってしまえばいい。

 覚えたこともないことを平然としようとする俺の体に、俺は少しの不思議も感じなかった。何故なら、これは真里奈の記憶と、剣と化した薙の力を利用すれば困難なことではなかったから。

 俺の腕は尋常ではない早さで動き回り、向かい来るレーザーを『切り倒した』。


「なっ……」

「遅いのはそっちだよ」


 天叢雲劍を向けて、俺は静かに龍に言ってやった。

いいえ、まだまだ続きます

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