もう一つの来訪者……!?
短い……ホントにすみません
読んでくれると嬉しいです
「んー! なんとかジャパンに着いたぁー!」
所々溶けたり、焦げていたりする船を降りて、金髪の少年は伸びをする。
「まさか、炎をジェット代わりにして船を動かすとは……死ぬかもしれなかったぞ?」
「まあ、結果オーライじゃね? こうやってジャパンに着いたわけだし」
「命知らずとは、お前のような奴のことを言うのだろうな」
「え? 何? ごめん、聞いてなかった」
「……」
少年は相棒が深い溜息をしている理由が真面目にわからないで首をかしげていた。
まあ、自分には関係ないことだろうと勘違いして、少年は着いたばかりの新しい景色に目移りのようなものをしながらも街に向かった。
「おお、これなに?」
「それはうどんと言うやつだ」
「ああ! この麺は? うどんより細いよ?」
「それはそばだ」
「おっと! ここはゲーセンというやつか!」
「待て待て、我らは遊びに来たのではないぞ?」
「え……?」
「……まさか、遊びに来ていたと思っていたのか?」
「お、おお? そ、そんなことないよ! た、確か……え? あれ? ええっと……待て、今思い出すから!」
「はあ……お前というやつはまったく……」
少年は頭をひねるが一向に目的が出てこない。
目的が思い出せない、ということはだ。
「遊びに来たんだな!」
「おおぅ。まさか、初めに戻るとは……本気で我はお前の育て方を間違えたらしいな」
「じゃあ、あれだ! か、か、か……そう、観光だ!」
「観光も遊びも同じなのだが?」
「……嘘だ! だって字が違うじゃないか!」
「お前というやつは……」
「あれ? なんで泣いてんの? もしかして、俺の成長に涙して――――」
「お前の馬鹿さ加減に涙しているのだ」
「ああ、そういうこと。照れるなぁ」
「褒めてなどない! むしろ呆れてるのだ!」
「え……? お、あのアイス美味しそう!」
そう言って、少年は相棒の言葉など聞かずにアイス屋に向かって全力疾走していった。
その場に残された相棒こと、プロメテウスは深く深く溜息を着いた。
と、そこに女子のパンツ目当てで浜まで来ていたタナトスがプロメテウスに気がついた。
タナトスはプロメテウスに近づき、
「やあ、プロメテウス」
と、声をかけて、海水を頭からぶっ掛けた。
炎の神であるプロメテウスはこれにはびっくりした。
なぜか。簡単だ。自身の炎をかき消す水を不意にかけられたのだ。認識している時ならまだしも、不意打ちだ。船の上の時のようなあの業火を発生させていなかったプロメテウスは、変な声をあげて飛び上がってしまった。
「ひやぁぁぁぁぁああああああああ!!」
「あははははははは! なんだよ、ひやぁって! ひやぁって! あははははっはは!」
「誰だ……って、タナトス!? 貴様、何をして!」
「もう一発いっとこう!」
「ひやぁぁぁぁぁああああああああ!!」
「わーははははははっは! くくくくくかははははっはははああ!! ああ、ダメ! もう、腹筋、が! あはははははっははははは!」
タナトスのイタズラに、流石に頭に来たプロメテウスは天上の業火を焚き浜の砂を焦がしていく。
しかし、これほどの炎を見て、タナトスは未だに笑っている。
そんなタナトスにブチギレて、プロメテウスは炎を投げる。
炎は砂を燃やしながら、タナトスに向かって飛んでいく。
「無駄無駄。君の炎は僕には届かないって」
「くっ」
そう言って、タナトスは手を前に出す。
すると、手から冷気が溢れ出し、飛んできた炎を『凍らせた』。
ニヤッと笑うタナトス。対して、プロメテウスの怒りは絶頂に達していた。
「貴様というやつは……いつもいつも我で遊びおって……今日こそは燃やし尽くす!」
「あはははは、プロメテウスは面白いなぁ。無理なことを簡単に口にするなんて、バカがすることだよ?」
「無理かどうかは、我の炎が決める!」
「あははは。君のその傲慢さは変わんないなぁ」
神々の大それた喧嘩が今、始まろうとしていた。
が、しかし。
「あれ? 何してんの、プロメテウス?」
「止めるな。これは我とコヤツの喧嘩だ!」
「ん? それはいいけど……ああ、やっぱダメ! お前が戦ったら俺がせっかく買ったアイスが溶ける!」
「そんな理由で止めないでくれぇぇぇぇええええ!!」
「あはははははっは。これだから人生は楽しいんだよね!」
うん。やっぱり喧嘩は始まった。
後日談だが、この日。この浜の海が干上がるという世にも奇妙な現象が起こったのだが、その事実を知るのは誰もいない。