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 目を覚ますといつものように俺はどこぞのベッドに体を横たわっていた。

 うーん。ホント、ベッドで気が付くことが多くなった気がする。まあ、それは仕方ないことだけど。

 俺は上半身を起こすと、頭を掻いた。体に異常はない。というより、異常がないことが逆に怖いくらいのものだったが、よっぽどのことがないと体に異常が出ない俺の体質を考えれば何のことない。しかし、人をやっている身としては流石に精神が犯されそうだった。

 そんなことより、どうしたものか。

 俺は自分らしくないことを考えているとを他人事のように言っていることに少しだけおかしさを感じたが、実際問題そういう状況なのだ。これは俺の問題であって、その他大勢の問題でもある。


「この力も、どうもきな臭くなってきたな」


 俺はポケットからメダルを取り出して眺めると、メダルは光を反射して俺の目を無情にも焼いてくる。

 自分で考えろってこと、か。まあ、そうなんだけどな。

 これはメダルの力に依存した俺の醜態。それに甘んじてきた全ての人へのダメージ。俺は、この力を使うことに躊躇いという縛りをされたわけだ。

 能力が使えないという絶望的な状況の中、俺は天井を見上げてあまり重要視していないように小さくため息をついた。

 すると、保健室のドアが開かれ、美少女が四人入ってきた。


「恭ちゃん!」

「先輩!」

「恭介先輩!」

「恭介くん!?」


 綺羅、真理亜、薫、春の四人は保健室に入ってきたかと思ったらベッドにいた俺に向かってダイビングしてきた。

 うおふっ!? さ、流石に四人の中学生以上のダイビングは体に悪いぞ……。

 四人の重さで体を圧迫された俺は、少しだけ息苦しいのを我慢しながら大丈夫だと言った。すると、美少女四人は一斉に胸をなで下ろした。

 いや、むしろダイビングで死にそうだったよ。まあ、女の子の柔らかさが感じられたから嬉しかったけれど! でも、苦しさのほうが優っていたから全然感じられなかったよ!!

 俺は見逃した幸せを悔やみながら、俺の体から離れた四人を見て小さく笑った。


「まったく。お前たちは俺を殺す気か?」

「私たちはそれ以上に心配で死にそうだったよ!」

「そうですよ! 学校で喧嘩はしないでくださいとあれほど言っておいたでしょう!」

「いや、喧嘩すんなってのは初めて聞いたぞ? てか、お前たちも心配性だなー。俺は死ねないんだぜ?」


 もしかしたら俺の母親より俺のことを心配していた美少女四人に少しだけ嬉しさを感じながら、わざと呆れたような言葉を言った。

 すると、俺が死なないということを思い出した四人はかぁぁぁ、と顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。


「べ、別に恭ちゃんがどうなろうと関係ないんだけど! た、ただ、クロエちゃんが心配で……」

「そ、そうですよ! 先輩が倒れると契約しているクロエさんが倒れてしまうんですよ!」

「お、おう。そっすか」


 二人の見事なまでのツンデレっぷりに俺は引いてしまった。いや、ヤンデレがヤンツンになったんだよ? デレが消えたよ。痛いだけじゃん。

 そんなことをしていると、いつの間にか俺の体に引っ付いていた薫と春が悪いことを考えているときの笑顔を見せて俺の耳元で囁く。


「二人がそう言ってるってことは、ライバルが大幅減少ってことだよね?」

「そういうことになるよね。そっか~。六人から四人に減ったんだ~」

「お、おい。こ、ここは学校だぞ?」

「「イヤ?」」

「是非ともしてください」

「恭ちゃん!」「先輩!」


 ぶれる事のないやり取りを俺は少しだけ心の支えにしていた節がある。皆なら変わらずに関わってくれると信じていた俺は、変わらない日常に少しだけ安堵した。

 そして、適当にふざけたところで、保健室の先生がいないことを確認してからみんなに俺の能力にデメリットができたことを詳しく話した。

 詳しくと言っても、俺が知っているのは体を乗っ取られることだけだけど。


「なるほど。つまり、主人公さんの意思が先輩の体を使って大暴れしたってことですよね?」

「まあ、そうなるな。ちなみに、真理亜は前に一度だけ会ってるぞ?」

「はい? ……もしかして、あの天上天下唯我独尊の言葉がものすごく似合う豪快な人のことですか?」

「ああ、そいつだ。雷電を倒すときに俺の体を力で乗っ取った奴だ。今回も、俺が負けを認めそうになったら『負けるくらいなら、勝ちやがれ』って言って大暴れしやがった」


 そして、この結果である。今現在、グラウンドは使用禁止。否、使用不可だ。所々に大きな穴や地割れ、真っ黒に焦げ若干溶けているなどの地面に甚大な被害が及んでいる。

 これら全て俺とフレイの二人がしたというのだから自分でも末恐ろしい。だって、俺は本気になればこうすることがいつでも出来るってことだろう? もともといらなかった力だったが、ここに来て本当にいらなく感じてきた。


「にしても、ホントにどうすっかな。この力を操る手が真里奈にはあるみたいだけど、それもまだ教えてもらってないし」

「ま、真里奈……って、お姉ちゃんですか?」

「あっ、ああ。そうなるな」


 真理亜の前でうっかり真里奈の名前を出してしまった。だが、真理亜は少しだけキラキラした目で俺の話の続きを待っていた。


「そ、それで? お姉ちゃんどういう方法で先輩の力を操る気なんですか?」

「い、いや。それはまだ知らないんだ。あいつ、何も言わずにすべて終わらせやがったから」


 まあ、満足して出て行った俺も悪いのだが。


「そう、ですか。天才と呼ばれたお姉ちゃんがどうするのか、少しだけ気になっていたのですが……」

「す、すまんな……ん? 天才?」

「はい。若干9歳にして、神とのコンタクトを完璧にこなして、神降ろしを確立した才女です。私は、お姉ちゃんを一人の巫女として尊敬しているんですよ」


 でも、十年前に死んでしまいましたが。そんな言葉が含まれていそうで少しだけ俺は視線をずらした。

 真里奈が天才。そうだったのか。まあ、昔から考える遊びが子供っぽくなかった気がしていたが、子供でも楽しくできるようにしているところを見ると、天才だったのだろう。

 しかしながら、問題は何も解決していない。力の使用も躊躇われるものになってしまった。敵がいつ現れるかわからない状態で、俺は一体どうやってこれからを生きればいい? もし、敵が現れたらどうやってみんなを守ればいいんだ?

 そんな不安が俺を焦らせている中で、一人の声が聞こえた。


「やあやあ、みんな。お揃いかな? ちょうどいい。みんなで今から校長室に来てもらえないかい? 校長がお呼びだ」


 新たな訪問者は生徒会長の牙獣さんだった。

 牙獣さんはいつものニンマリ顔で強制的に俺たちを校長室まで引っ張っていった。

 なんか、嫌な予感しかしないんだけど。

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