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自意識過剰じゃないが、背後から殺気を感じる

読んでくれると嬉しいです

 合宿三日目。どうやら、俺たちは誰かに監視されているみたいだ。

 ……いや、中二病とかじゃないから。冷めた目で俺を見ないでくれます? あ、それと、俺はMじゃないから。ドMでもないからね?

 しょっぱなから何を言っているのかと自分でも思うのだが、仕方ないのだ。勉強をするときも、トイレに入るときも、風呂に入るときも、いついかなる時も誰かに見られているような感じがする。

 最初は綺羅や真理亜が監視しているのかと思ったが、そこまで変態ではないと思いたい。思いたいというだけで確信はないが、きっと二人じゃない。かといって、生徒会長や薫でもない。ということは、どこかに第三者が存在していて、俺たちを監視しているということになる。

 だがまあ、相手がせめて来ない限り、こちらから攻撃を仕掛けることはない。

 何事もなく収まることなら、無駄な火種を作らないのが俺のポリシーだ。よって、俺は沈黙を貫くことにしたのだが……。


「むにゃむにゃ……」

「すーすー」

「ん、ふー」


 大の字に寝る俺の腕に頭を置き、胸に頭を置き、自由に寝ているウチの美少女さんたちは、一体どういう神経をしているのだろうか。

 いやね? 重いとかそういうんじゃないんですよ。むしろこんなに軽くていいのかって感じだが、女の子の体に詳しくない俺はそれ以上の議論を出すことはない。

 そんなことより、この状況の中で、俺の隣に居るインドラさんの目が怖いです。血走っているとかそういうんじゃないんです。明らかに、美少女さん達に殺気のこもった目を向けてます!


「お、おい。インドラ?」

「何かな?」

「怒ってるのか?」

「何にかな?」

「こ、この状況に?」

「いや、怒ってなんてないよ。むしろそこに寝ているる少女たちを切り刻んでやりたい気分だ」


 怒ってるじゃん! めっちゃ怒ってるじゃん!

 俺はインドラの不敵な笑みが怖くて怖くて仕方ありません! 誰か! インドラさんの気分を取り繕って! そうじゃないと、また俺が切り刻まれるパターンだから! Mとか言われちゃうから!

 天を仰ぎたい気分だが、生憎両腕が塞がっておりそれはできない。代わりに、神に懇願しようと思ったが、寸前で神タナトスのことを思い出し(ついでに、アマテラスなどのことも思い出し)、神というものは碌でもないと気がつき、懇願することを諦めた。

 それにしても、この頃は面倒という面倒が流れ込むように襲いかかってくると思うのは気のせいだろうか。

 この体を手に入れてからというものの、龍と殺りあったり、神と喧嘩したり、神の使徒と喧嘩したりとで毎日が忙しい。休んだという感覚がないのだ。

 まあ、休めないのには他にも理由があるのだが。それは、俺の立場であったり。それは、俺の腕で寝ている美少女たちであったり。様々な理由で俺は休むことができない。

 それが楽しいと、半年前の俺は果たして知っているだろうか? 半年前。俺には友人と呼べる人がいなかった。学校がひどく薄っぺらく見え、世界が理不尽に感じられた。

 だが、半年前に俺は死に、この体を手に入れた。『死ねない体』。物理法則、生物の限界を無視した超回復力を発揮し、細胞一つでも残っていれば、いや残っていなくても体が復活するという恐ろしいものだ。

 そのおかげで、俺は人を守る事ができるようになった。それまでにない方法で、誰も実践できない方法で、俺は無理矢理にでも事実を捻じ曲げ、勝利を手にしてきた。

 今の俺がいるもの、あのふざけた神様、タナトスが俺に力を与えてくれたからだ。だからと言って、感謝はしないが。

 そういえば、俺が死んだ原因になったダンプカーは、今も持ち主が出てこないらしい。というよりも、あんなダンプカーは存在していないとも言われた。

 ナンバーで調べても持ち主が見当たらないダンプカー。ここにも何か関わってきているような気がするが、今の俺にはどうすることもできない。

 情報が入ってきたとき、対処すればいいさ。今までもそうしてきたじゃないか。

 天井を見上げながら俺はそう自分に言い聞かせる。


「ん……」


 小さく息を吐きながら真理亜が寝返りを打ち、俺のそばに転がってくる。ふにょんと中学生にしては以上に大きい……が、男にしたらとてつもなく夢の宝物の胸が俺のわき腹あたりに無造作にぶつけられる。

 や、わらかい……だと……?

 危うく鼻血を出してしまいそうになったが、なんとか素数を数えて押さえつける。

 だが、


「んぅー……恭介先輩の、おっきぃ……」


 もう、ね。どうすればいいの?

 腹の上で小さく丸まっていた薫が、反応してしまった俺の息子を触ったようで寝ているにも関わらず笑顔で頬を赤らめながらそんなことを言ってくる。

 これに、俺は冷や汗が止まらない。こういう場合、あいつが来るはずだから。俺の幼馴染にして、ヤンデレになってしまった綺羅が。


「恭……ちゃん……」


 思ったとおり、綺羅が動き出す。俺は腹をくくり、何をされても動じないと心に決めて、綺羅の動向を見守った。

 ……が、さすがにこれには動揺するだろう。

 転がってきた綺羅は、止まることを知らず、しかも転がって来るタイミングが良かったのか、顔と顔、もっとよく言えばマウス・テゥ・マウスというものになってしまったのだ。


「んっ……」

 

 キスというものは初めてではない。だが、それは別の女の子、今俺の腹の上で寝ている薫の場合だ。綺羅とは幼馴染だが、こういうことにまで発展したことはなかった。つまり、俺と綺羅とのファーストキス……じゃない。よく考えたら異能を使う際にキスしましたすみません。

 しかしながら、戦いも、敵も関係ない、ただ純粋なキスというのは二度目だ。一回目が薫で、二回目は綺羅。寝ていたとは言え、まさかしてしまうとは……。


「ちょっといいかな、マイマスター?」

「オーマイゴッド……ちょっと待て、これは不幸な事故だ。見てただろ? 俺のせいじゃ――ぎゃー!」


 怒り狂ったインドラが俺の頭をありえない握力で掴み、ベッドから引っ張り出す。

 そのまま持ち上げられ、俺は宙ぶらりんになってしまう。


「待て待て待て! 俺じゃない! 俺じゃないですよ!!」

「問答無用だよ」


 いや待て! なんで俺のそばにはヤンデレが多い――あっ……

 まあ、なんだ。そんなこんなで、今日も俺はハイスペックゾンビだ。殴られたり、握りつぶされたり、焦ったり、困ったりと忙しいが、そこはご愛嬌。

 さて、さっさと宿題終わらせようか。その前に、まずは生き返らないとな……。

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