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絶対の支配者&邪龍VS黒き騎士

読んでくれると嬉しいです

 既に勝ちを確信したかのように威風堂々と立つ少女、風凰学園生徒会長と、その後ろで実態をぼかした様な黒い龍が佇む。

 目の前には真っ黒な鎧に身を包み、無言のまま敵を見据える騎士。


「あなたには恨みはないわ。負けてくれれば、荒っぽいこともしないつもりよ」


 会長が静かに伝えると、騎士は少しの動きを見せて、言う。


「ならず。その願いは叶えられない」

「なぜ?」

「まず、貴様らがこの城の侵入者だからだ」

「それはおかしいわね。私たちはむしろ呼ばれてきた側よ?」

「次に、我に貴様らを守る理由が見当たらない」


 騎士の言葉に会長が深い溜息を漏らした。

 つまりだ、と。会長は言葉を言い始める。


「あなたは、戦いたいだけなのね」

「ならず。貴様らは死ぬのだ」


 言って、騎士は辺りを深い闇で覆っていく。

 その光景を見て、ヴリトラは感心したように唸った。


「ほう。まさか、黄泉を実現するとは。流石は予言の騎士といったところか」

「万物の行き場は既に決まっている。最終的に行き着く場所に、今から行ってもらおうか」


 ヴリトラと黒い騎士の会話に会長がついていけるはずもなく、会長はつまらなさそうに腕を組む。

 会話はわからなかった。しかし、今騎士は確かに会長に向かって死ぬといった。それが、会長の怒りを買わないかと思うのは、少々安直すぎだ。


「黙りなさい」


 会長の一言で騎士、ヴリトラまでもが口を閉ざした。

 それほどまでに会長の異能は効力を上げていたのだ。万物の行動を制限、命令する異能。発動すれば、神未満の全てのものを意のままに操ることのできる絶対の支配者たる器を持つ女性。それが会長だ。

 そして今、目の前の二つの個体は会長の怒りを十二分に買った。


「ねぇ、騎士さん? 私がこの世で一番嫌いな事って知ってる?」

「……」

「私以外の他人に命令されることよ。私は一番上でなければ満足なんてしない。たとえ相手が私より強い相手でも、ね?」


 会長の目に、冷たい視線が現れる。

 それはまるでこの部屋の全てを凍らせてしまうほどのこの上ない殺気。熱さを通り越した絶対零度の怒り。両者は今、その真意を目の当たりにする。


「その前に、黄泉からの脱走者がいるみたいね」


 会長が目を細めて見る先には、実態のぼやけている戦士のような男がいた。


「おお、嬢ちゃん。俺のことが分かるのか」

「ええ。実態を持たない戦士。いえ、負けた相手は察してあげるわ」

「フッ……面白い嬢ちゃんだ。ああ、俺は訳あって実態を持てない。体は鉄に替えられたからな」


 ぼやけている戦士は自身に気がついた会長が気に入ったのか、戦士はぼやけた手でぼやけた剣を持つ。


「おい、ヴリトラ。俺のことは覚えているな?」

「ああ。あの時、我が主に鉄に替えられた英雄だろう? よもや、黄泉の世界から脱出してくるか」

「当たり前だ。俺は英雄で、お前は邪龍。敵対同士なんだ、蘇っても来るさ」


 戦士の言葉にヴリトラは微かに笑う。

 会長はそんな二人を見て、小さくため息を付く。


「戦闘狂なんて興味はないけれど、今は目の前の敵の抹殺をして欲しいものね」

「ふむ。わかっておる」

「ああ、承知だ。だけど、俺の体はないんだけどな」

「そのことなら、安心しろ。我が主が貴様の体を元に戻しておいたそうだ。ほれ、これであろう?」

「うおっ。なんだこれ! ヨダレだからけじゃねぇか!」

「ふむ。先程まで食べておったからな。当たり前だ」

「ああクソ! なんで、テメェはこう汚いことをして――」

「黙るか、死になさい」


 ヴリトラと戦士の会話は会長の一喝で強制的にお開きとされた。

 戦士はヨダレだからけの自身の体に魂を憑依させ、体を起こす。


「あらず。我が貴様らに負ける可能性など皆無」

「……いい二人共? 今、私たちはケンカを売られたわ。なら、どうする?」

「殺す」

「ぶっ飛ばす」

「そう、ね。さあ、行きなさい。ここから先は一方的な虐殺よ」


 会長の命令を聞いてか、ヴリトラと戦士、ジークフリートが駆ける。

 騎士は右手を前にだし、言葉を発しようとするが、


「黙って死になさい」


 との会長の命令のために能力を開放できず、呆気なくヴリトラの最上級の呪いに体を蝕まれていく。

 加え、ヴリトラは騎士の体に巻き付き、身動きできないように取り押さえる。


「ほれ。早う逃げないと、死ぬぞ?」

「……」


 バキバキと騎士の鎧から嫌な音が響く。

 既に上での部分はぺちゃんこにされ、胴体もいつ潰れるかわからない。馬に至っては既に外見を止めていなかった。


「何も語らずに死ぬか。それも良かろうて」


 言って、ヴリトラは一気に鎧を潰した。

 その余波で吹き飛んだ甲を走っていたジークフリートがニンマリと笑いながら、凶悪なほどの大きなバスターソードを振りかぶって、地面に落ちようとする騎士の甲を貫いた。


「もらったぁぁぁぁぁあああああ!!」


 鎧、甲はともに消滅。馬も既に息はしていない。

 騎士のいなくなった部屋には、ヴリトラ、会長、ジークフリートが力強く佇んでいた。

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