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雷龍&武器庫VS赤い騎士

読んでくれると嬉しいです

 真夏にも関わらず、真冬の格好をしている細身の少年。風凰学園生徒会書記、静岡刃だ。

 その上空を舞うのは一匹の龍。雷を身にまとい、神の威圧を同時に発し続けるのは雷電。

 両者の前には炎のような赤い馬に乗った騎士。

 騎士は鎧の中で不気味な声を上げた。


「汝ら。なぜ、我と戦う?」

「あ? そんなの知るかよ。俺は、龍彦が決めたことの邪魔をするやつが嫌いなんだよ」

「俺様も同じだな。予言だか、なんだか知らねぇが気に食わねぇ」


 刃と雷電はそう言って、笑う。

 純粋に戦闘を楽しむような笑み。目の前の敵に畏怖ではなく、喜びを感じているように思わせるその笑みは騎士に多くの疑問を持たせた。


「愚かな。汝らは負けるというのに、なぜそんな余裕を見せていられる?」

「余裕なんてないさ。俺は人間、周りは神や神の使いの使いだからな。でも、そんな俺が少しでも抵抗できたら、面白いだろ?」

「わからぬ。人間が、我に敵うはずなどない。そこに舞う龍神ならばまだしも、何の力も持たぬ人間風情が、敵うなど……」

「そうとも限らねぇぜ?」


 刃と騎士の会話に入ってきたのは雷電だった。

 雷電は人の姿になり、少年、刃の隣に立つ。


「少なくとも俺様は、神に勝った人間を知ってる」

「ふむ。龍神、それは何やつか?」

「御門恭介、俺様の主様さ」

「……承知。なるほど、我が主を眠りから覚ました人間か。それならば、理解できる」


 騎士は動きはしないが本当にわかったみたいだ。騎士の代わりに馬が頷いたのを見て、雷電は高らかに笑う。

 そして、隣にいた刃を抱き寄せると、言った。


「人間を舐めるなよ? 人間は、神が作り出した禁忌だ。人間は、この世で最もイレギュラーな存在だ。そして、人間は、唯一神に届く可能性を持った者たちだ!」

「お、おい。近寄るな! 俺に抱きついていいのは龍彦だけだって!!」


 高らかに笑う龍神、雷電と違い男性に抱き寄せられたのが随分と嫌だったみたいな刃を見て、騎士は再び悩む。

 そして、再度質問をした。


「やはりわからぬ。人間は神になど近づけはしないのだぞ? 人間は――」

「あーあー! うるせぇ! これ以上テメェと話をしていても始まんねぇんだよ! さっさと殺り合おうぜ、なあ? さっきから、感情が高ぶって電気が漏れてんだよ!!」

「いたっ! イタタタ! ちょ、おま! 電気来てるから! 俺に電気が流れてきてるから!」


 雷電の言葉を合図にして、雷電と刃は地面を駆ける。

 騎士はそのスピードに反応できていない。だが、騎士の手にはいつの間にか大きな剣が握られていた。

 騎士は、剣を握ったままゆっくりと後ろに下がる。


「おせぇよ!!」

「もらった!!」


 雷電と刃の攻撃が繰り出される。

 その対象は、騎士ではない。仲間である両者にだった。

 雷電と刃は仲間に放たれた拳が頬をえぐり、吹き飛ばされる。


「がっ」

「グッ」


 壁に激突して、両者は気が付く。今、自分は仲間に攻撃されたのだと。

 しかし、雷電たちは仲間を攻撃する気は毛頭なかった。というよりも、仲間が騎士に見えていたというのが現実だ。

 これはなぜか。雷電はすぐにピンときた。


「そうか……赤い馬に乗る騎士は、確か戦争をもたらす騎士。つまり、テメェは仲間割れを起こして、擬似戦争を起こそうとしたわけか」

「如何にも。わかったところでどうすることもできぬが、どうする?」

「はっ。どうするも何もない。簡単な話だ。なあ、小僧?」

「ああ。この場でどっちかが完全に倒れれば狙いはお前になるってことだろ?」

「……理解できぬ。汝らは仲間ではなかったのか?」


 つまり、刃たちが考えたのは騎士を殺る前に、目の前にいる仲間をぶっ倒すという荒業を考え出したのだ。

 だが、これが成功すれば苦労はしない。なぜなら、相手が信頼していた仲間であればあるほど、この荒業は困難なものになってくるからだ。

 しかし、次の瞬間、騎士はぽかんと口をかける羽目になる。


「俺様のために死ね、小僧!!」

「黙れ、クソトカゲ! 死ぬのはお前だ!!」


 仲間だと思っていた目の前のふたりが、いきなり真面目な殺し合いをしだしたからだ。

 刃は能力名『武器庫』を使って、体中に張り巡らされている無数の武器を巧みに使いこなし、龍神である雷電の攻撃を遠ざけていた。

 雷電も雷電で龍化して、全身に雷を帯びながら刃の攻撃を避けつつ、高圧の電流を放っている。

 この両者を見て、騎士は唸る他なかった。


「馬鹿な。仲間では、なかったのか?」

「あ? ふざけんな! こんなトカゲ野郎が仲間だと!?」

「同じくふざけるな! 俺様のような誇り高き龍が、こんな弱々しい人間と仲間になるだと!?」


 聞いていて、あっけらかんとなってしまう会話だが、騎士にとっては大誤算だった。

 この能力は相手が仲間であれば至高の異能となる。しかし、相手が見ず知らず同士出会った場合、異能の効力は極端になくなる。

 目の前で戦っている二人を見る限り、能力の効果は後者だろう。

 と、騎士が考えていると、ズシンと体を射抜く攻撃が体を襲う。


「おっとすまねぇ。そこのガキが避けやがるもんだから当たっちまったよ」

「ぬぬぬ。なんという偶然か……」


 偶然。そう、偶然だ。

 相手を殺すために放っていた攻撃が避けられて騎士に当たった。単なる偶然。

 再び、騎士の体を今度は鉛玉が射抜いた。


「ぐぬっ!」

「おおっと、すまねぇ。トカゲ野郎が避けるから、弾が当たっちまったな」


 またも偶然。いや、これは偶然ではない。騎士は、初めてそう感じた。

 確かに、この攻撃が偶然ではない。雷電たちが考えだした、列記とした攻撃だ。

 しかし、その真意はほかにあった。


「愚かですね。目の前の敵だけに目を持って行かれているとは」

「な! 貴様は――」

「ゴルゴンの名のもとに言おう。止まれ」


 背後を取られ、騎士は咄嗟に避けようと体をねじる。しかし、背後に目をやってしまったのが運の尽きだった。

 背後にいたのは弓と気色の悪い蛇の髪をした女性が描かれた縦を持つ女性だった。


「よお。まさか、俺様の攻撃を受けて生きていたとは思わなかったぜ」

「ええ。結構大変だったわ。良くも、レールガンなるものを私に放ってくれたわね? これは貸しにいしておくから」

「へいへい。にしても、ホントにどうして生きてるんだ? ペルセウスさんよ?」

「ふん。私たちには秘策があるのよ。それに、私たちの存在意義はここにあるから」


 ペルセウスと呼ばれた女性は、石化した騎士を見て、静かにこう言った。


「ねぇちょっと、雷竜さん?」

「あ?」

「もう一度レールガンなるものを打ってみてよ。この部屋は鉄分がいっぱいだし、さっきの戦いで粉々になった瓦礫がたくさんあるでしょう?」

「いいけど、その騎士に打つのか?」

「ええ」


 はあっとため息をついて、雷電は宙に円を描き電気を加速させていく。

 鉄分を含んだ瓦礫が宙に浮かんでいき、雷電の円を中央で固まっていく。


「じゃあね、愚かな騎士さん。私と同じく、チリになりなさい」


 ペルセウスの一言の後、部屋の大部分を抉って、レールガンが放たれた。

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