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最も新しい神話

シリアスが、困った……


読んでくれると嬉しいです。

 予期せぬ事態、ヨハネの唐突な攻撃に臆することもなく、俺たちは走る。

 壁を破り、第一の部屋に足を踏み入れると、そこはさっきの部屋と同じ構想をしていて、まるで同じ部屋に来たみたいだった。

 だが、部屋に入るなり、ヨハネの声が響く。


「第一の封印を解く。その姿は白い馬、それに乗る騎士。能力は勝利の上の勝利、ゆえに『支配』なり。その姿異能を持って世界を終わりへと導け。我はヨハネなり」


 瞬間、凄まじい威圧と風格を持つ白い馬に乗った騎士が優雅に目の前に立つ。

 騎士は何も言わない。だが、ここから先には行かせないという強い意志を感じて、俺たちは足を留めた。

 どうする。ここで倒しても、きっと次に何か来る。一体一体殲滅して行ったんじゃ時間と体力の消耗でヨハネの思うツボだ。

 歯噛みする俺を前に、スサノオが堂々と立つ。


「ここは我が相手になろう。何、勝利は必ずしも決まっているものではない」

「す、スサノオ……でも――」

「それに、我が妃は我よりもお前に来てもらった方が喜ぶ。だから、絶対に助け出せ」

「……わかった。ここは任せたぞ」


 スサノオを残し、俺たちは騎士を避けて通り、壁に穴を開けて部屋を移動する。

 すまない。全部終わったら助けに来るから。

 俺は心の中で言い残し、この場を後にした。

 第二の部屋。そこもあいも変わらず違いのない部屋だ。

 そして、俺たちが入るなりヨハネの声が響く。


「第二の封印を解く。その姿は赤い馬、それに乗る騎士。能力は己の力を持って戦争を起こす。その姿異能を持って、世界を終わりへと導け。我はヨハネなり」


 瞬間、目に悪い赤い馬に乗る騎士が雄々しく立ちふさがった。

 やっぱり、敵がいたか。さっきはスサノオが任せろといったが、今回はどうする。

 俺が考えていると、答えを出すよりも先に龍彦の横を通って、刃が前に出た。


「へへ。ここは俺に任せな。風凰学園生徒会書記、静岡刃。推して参る」


 そう言って、あとは任せろと言わんばかりに構えを取る刃、しかし、それに邪魔するものがいた。


「高が人間に毛が生えた程度の強さしかないガキが一人で敵うわけねぇだろ。俺様も加勢してやるぜ」


 宙を飛ぶ雷龍。雷電だ。

 雷電は体中に雷を走らせ、戦いたいと身震いをするかのように唸った。

 それを見て、俺はここを任せてもいいと判断し、再び騎士を避けて通って壁を破り次の部屋へと向かう。

 次の部屋は少しだけ仕様が変わっていた。

 二つの部屋を突破したことにより心臓部に近くなったのかもしれない。

 そして、再びヨハネの声が響く。


「第三の封印を解く。その姿は黒い馬、それに乗る騎士。能力は人に飢餓をもたらす。その姿異能を持って、世界を終わりへと導け。我はヨハネなり」


 瞬間、真っ黒な馬に乗った騎士が異様な空気を纏って立ちふさがる。

 今回は考えるまでもなく、俺たちの前に一人の女性が立った。


「まあ、順番で行けば私でしょうね」

「会長……俺でもいいですが?」

「バカを言わないで。あなたは王と一緒に最上階まで行きなさい。そこの黒い竜さん?」

「なんだ?」

「私のサポートをよろしくね。私も強くはないから」

「……嫌だと言ったら?」

「言わせないわ。私の異能はそういうものだから」

「ふむ……足を引っ張るなよ、人の子よ」

「ええ、そっちこそ」


 これは……なんだか、即興にしては相性のいいパートナーが作れたものだ。

 これで負けるわけはない。俺は龍彦を連れて次の部屋に向かう。

 次の部屋は先ほどと変わらない部屋。

 つまり、ここもまだ中心ではないのだ。


「第四の封印を解く。その姿は青ざめた馬、それに乗る騎士。能力は黄泉を連れて人を死に追いやる。その姿異能を持って、世界を終わりへと導け。我はヨハネなり」


 瞬間、俺たちの目の前に死んでいるような姿の馬と冷たい空気を身に纏う騎士が立ちふさがった

 クソ。ここでも出てくるのかよ。

 もう、誰かを置いて先に進むことができない。ここは撃破するか――。

 構える俺に、ふと危険な予感を思い起こさせる。

 こういう場合。こういった戦いの場合。必ずと言っていいほど、あいつが来る。炎を身にまとい、世界を恐怖の混沌に落とすことのできる罪人が。

 その名前は――


「この俺、フレア・フレイを忘れないでもらおうか!」

「やっぱ来たか……」

「お、おい。あいつは何なんだ!?」

「いい。いいんだ。ここはあいつに任せよう。あいつなら間違っても死ぬことはない」


 出てきて早々に暴走しているフレイを置いて、俺と龍彦は次の部屋へと向かう。

 背後から轟音と爆音が混ざったような耳に悪い音が繰り広げられているが、聞こえないフリをする。

 ここまで、仲間たちに任せて俺たちは来た。

 五番目の部屋。そこは、間違いなく中心部だった。


「ヨハネ……なんでこんなことをした?」

「全て、お主のためじゃよ。お主は、忘れてはいけないものを忘れている」

「そんなことのために、ここまでしたのか! 俺の仲間に手を出して! あいつらを危険にさらして!」

「仕方のないことじゃよ」

「仕方ない? 仕方ないだと? そんな言葉で済ませるか! お前は、俺が止める!」

「――いや、俺たちだ」


 俺の隣に立つ龍彦。その目にはヨハネに向けられていたが、意志ははっきりとわかった。

 ああ、そうだな。『俺たち』で止める。ヨハネは、間違えている!


「そうか、まあいい。妾よりも、先にこっちの相手をしてもらおう」


 そう言って、ヨハネは手をかざす。そして、


「存在を許可する。その姿は七つの頭を持つ龍。能力は憤怒と傲慢を司る悪魔、サタンの虚実。その姿異能を持って、世界を終わりへと導け。我はヨハネなり」


 瞬間、炎のように赤い巨大な龍が俺たちの居る大きな部屋を存在だけで埋めていく。

 それを見て、俺ははあっとため息をついた。


「なんで……なんで戦わないといけないんだ」

「それが運命じゃ」

「運命…………なら、俺はその運命をぶち壊して、お前を助け出す」

「何?」

「お前の間違いだからけの答案を真っ白にして突き返すってことだよ!」


 ポケットに手を突っ込み、強引にメダルを引っ張り出すと、俺はヨハネと対峙した。

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