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預言者の災厄の序章

読んでくれると嬉しいです

 世界は滅びの一歩を歩んでいた。という夢を見た後、俺は頭を抱えて上半身を起こす。

 何とも年甲斐もない夢を見てしまった。どこの中二病だよと夢の中でツッコミを入れたが、そこは夢、何が起きても修正されてしまうものである。

 だが、さきほど見た夢も、あながち夢ではないらしい。


「おいおい……一体何があったんだ?」


 冷静に言っているが、事態はおかしいことになっている。

 目が覚めた瞬間、目の前にあったのは家ではない。真っ黒な要塞の中、窓がなく、一切の通信を遮断しようとする空間。

 その中で、俺はやっと自分が何かに巻き込まれていることに気がつく。


「……となると、元凶はヨハネ、だよな?」


 決めつけてしまうのはどうかとも思うが、どう考えてもそれがシックリくるのだからしょうがない。

 だからと言って、俺が何をすると聞かれれば何もしないのだが。

 俺は自分がさっきまで寝ていたベッドに横になり、静かに二度寝を決め込む。

 しかし、そんなことは許さないというかのように、天井がぶち破られ、そこから一人の少年が入り込んでくる。

 もちろん、龍彦だ。


「おい。なんでそんなに優雅に寝てられる? 事は一刻を争うんだぞ?」

「何が一刻を争うって? まあ、俺には関係ないことだろうけど」

「あれを見ても、そう言えるのか?」


 そう言って、龍彦が指差す方向にはぶち破られた天井、そこから覗くのは微かだが俺の仲間たち。少なくとも平和な環境に居るとは思えない格好をしている。

 破られた服。滲む血が艶かしい。それらを見て、俺は一気にキレる。

 ああ、ったく。どうしてこうも俺が頭に血が上りやすくなっちまったんだ?

 言い得て妙で、俺は昔はそんなんじゃなかった……はずだ。記憶の欠損があるのは昔から知っていたけど、まさかここまで侵食しているとは思わなかった。

 とにかく、今は仲間の救出が最優先だろう。

 俺は一枚のメダルを握り、宙に打ち出す。


「俺、御門恭介が願い奪う。信念を突き通し、偽善を破壊し、自身の力を困難という名の壁を破壊し続ける最強の力を。今、俺のもとに来い、真実を貫く拳!」


 全身に力と痛みが走り、俺の体は仲間を助けるという名目の上で力を発揮する。

 飛び上がり、仲間のもとに向かおうとする俺に、龍彦の手がそれを制する。


「待て!」

「くっ! なんでだよ!」

「あれを見ろ。この状況を作り出した本人が何か言いたそうだぞ?」

「本人?」


 再び示された場所には今度は可愛らしい幼女。使徒聖ヨハネだ。

 ヨハネは俺を静かに見下ろし、言う。


「御門恭介。汝に今一度機会を与えてやろう。この試練を超えて、妾のもとに来い」

「嫌なこった! お前のところになんて行ったら面倒なことがあるだけだろうが!」

「ふむ、参った。これでは人質として生け捕りにしたお主の仲間が必要なくなってしまう。その先はわかるな?」

「……お前、俺に何をさせようって言うんだよ」

「妾の元に来い。一人でとは言わん、そこにいる人間を連れてでも良い。さあ、始めよう。世界の終わりと、二度目の再臨を!」


 言って、ヨハネの姿は見えなくなる。

 俺は小さく舌打ちをすると、龍彦に振り返る。


「おい」

「なんだよ」

「お前はタナトスとの戦いでほかの主人公と共闘してタナトスを追い返したんだろ?」

「殺したつもりだったけどな」

「……俺と、一緒に闘ってくれ」

「それは、王としての言葉か?」

「いや――――御門恭介という怪物としての言葉だ」


 俺の言葉に、龍彦はニヤッと初めての本物の笑いを見せる。

 そして、龍彦は俺から目を離すと、背後に居る龍彦の仲間に声をかけた。


「だ、そうです。会長の意見を聞かせてください」

「私よりも、あなたの意見を聞かせなさい。あなたは、どうしたいのかしら?」

「俺は……この男を、御門恭介という怪物を信じるに値すると思います。いや、それ以前に、こいつからはあいつらの匂いがする。昔、共に戦った。あいつらと同じ匂いが」

「そう。で、結局どうしたいのかしら?」

「戦います。俺はコイツと一緒に、ヨハネの元までたどり着いてみせます」

「なら話は早いわ。王、いえ、御門恭介。私たちはあなたの武器、あなたの知恵。でも、此度はあなたの友人として、微力ながら力添えさせてもらうことをお許しいただきたい」

「そう畏まるなって。俺たちは仲間、なんだろ?」


 深く頭を下げる会長さんに、俺は笑顔で手を出す。友情の証、握手だ。

 会長さんは俺の手を笑顔で受け、強く握る。

 これで、即戦力になる人材は手に入れた。あとは――


「お前たちがいなきゃ始まらないよな」

「そういうことだ! 俺様たちもお手伝いするぜ、主様!」

「我は戦えればそれでいい。あの娘のことなど、二の次だ」

「あそこには、我が妃もいるみたいだしな。我も力を存分に披露せざるを得ないだろうな!」


 雷電、ヴリトラ、スサノオ。過去の敵が、今の心強い味方になり、今の俺の力となっている。

 さあ、こっちの準備は終わったぞ、ヨハネ! 始めようじゃないか、このふざけたケンカを!


「行くぞ、明日もみんなで笑い合うために。あいつの、ヨハネの間違いを正しに!」

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