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主人公は話し合う

読んでくれると嬉しいです

 タナトスと龍彦の仲間の女性に連れてこられたのは神崎邸の豪華な一室だった。

 もちろん突如空から降ってきた幼女は俺のそばから離れていない。その光景をさっきから龍彦が睨んでみてくるが気にしない。

 みんなが席に座ると俺はタナトスに状況の説明を頼んだ。


「まあ、何から言えばいいのかわからないんだけどね~。状況は彼らが知っているよ」

「おい、タナトス。そんなんで大丈夫なのかよ……」


 俺がタナトスの名前を口にするとバンッと机を叩き、椅子を倒して立ち上がる人がいた。龍彦だ。

 龍彦は目を見開き、歯を食いしばり、タナトスを殺すかのように睨む。

 対してタナトスは、


「やだなぁ~、情熱的な目で見ても僕は君を好きにはならないよ~?」


 と、いつもの調子で茶化している。

 わかってた。わかってたけど、この緊迫している状況の中でその言葉はないだろう?

 俺はため息を着くわけにも行かず、焦りながら龍彦の顔を見る。

 うわー、怒ってる。タナトスの言葉にめっちゃ怒ってる! 今にも襲いかかってきそうだよ!!


「お前、生きてたのか……!」

「僕は仮にも神様だよ? 信仰する人がいる限り消えることはない」

「くっ……!」

「お、おいおい。待てよ! 話が全くわからないんだけど! お前ら知り合いなのか?」

「知り合い? ふざけるな! コイツは、この神は! 街を一つ危険にさらした張本人だぞ!!」

「……は? おい、タナトス。マジか?」

「マジだよ~」


 屈託のない笑みを見せながらいうタナトスに、俺はいっそ清々しい気持ちになった。

 ジャッジ、タナトスギルティ―! アウトでしょ! 街一つ危険に晒すとかどんな所業晒してんだよ!


「けど、そのおかげで君は異能のメダルを使えるんだよ? 感謝されても非難をされる筋合いはないと思うな~」

「は? おい待てよ。じゃあ、お前はこの世界の街を危険に晒したってことか?」

「お見事! そうだよ~。ちょうど君を探していた時に彼や、彼のように強い存在がいたから適当に能力をもらったのさ。まあ、そこにいる少年は使えない能力だったから貰わなかったけど」

「てめぇ!!」


 怒りの声を上げ、襲いかかろうとする龍彦を冷静な一言で制する女性がいた。


「待ちなさい」

「うっ……でも、会長!! コイツは会長も危険に晒した張本人で――」

「そうだとしても、よ。それに、今は王の前なのよ? 粗相のないようにしなさい」

「王……まさか、本当にこんな高校生が王なのか?」

「悪かったな、こんな高校生で」


 悪口みたいなことは言われたが、まあ女性のおかげで騒動は収まったらしい。龍彦は俺が本物の王様だということを知ってか、椅子に座り直した。

 そして、女性は俺の方に向き直り、言う。


「王。私たちはそこに座っている子供を回収しに来ただけで、あなたの生活を乱すつもりはありません」

「だから、この子が何をしたっていうんだよ」

「何をしたではありません。何かをするほどの危険人物なので監視下に置きたいのです。どうか、その子をこちらに」

「だから――」


 俺が言おうとすると、女性はキッと目を細めて言い放つ。


「渡しなさい」


 瞬間、頭が割れるような痛みを出して、俺は頭を抱える。

 しかし、その痛みは一瞬ですぐに俺は女性を睨む。


「なにしやがった?」

「……私の命令が効かない? 一体、どういうこと?」

「あー。それはきっと、僕が与えた『絶対服従の言霊』の恩恵だね。君の使った異能は『威光』だろう? 高が人間が持つセンスからなる異能なんて、神が与えた異能には敵わないんだよ」

「なるほど。じゃあ、攻め方を変えましょう。王、どうしてそこまでして見ず知らずの子を匿うの?」


 どうやら力を使って何かをしようとしたが失敗したみたいだ。それまでの温厚な言葉使いではなく、多分本来の口調に戻ったのだろう。女性は足を組み、俺を睨みながら聞いてくる。

 怖い。マジで女子って怖い。


「か、匿うって……別に匿ってないだろう?」

「匿ってるじゃない。そうやって膝に幼女を乗せて抱き抱えて。何? ロリコンなの? 小さい子じゃないと欲情すら出来ないの? かわいそうな変態ね」

「待って? なんでそんなに毒舌なの? 泣かせたいの? なあ、俺を泣かせたいの?」


 マジで怖い。これならまだ、うちの悪魔の方が天使に見える。というか正確変わりすぎだろ、この女。二重人格なの? もしそうならさっきまでの優しい方に戻って欲しい。

 俺はビクビクしながらも質問に答えていく。


「例えば、俺がここでお前たちにこの子を渡して、あとはどうするんだ?」

「私たちはこの依頼を頼んできた人にこの子を明け渡す。それだけよ」

「そいつが悪者じゃないと何故言い切れる?」

「国のトップが悪者だとなぜ疑えるの?」

「普通疑うだろ。それが国のトップならなお更な。こいつは仮にも危険人物なんだろ? そんなのをトップに渡したらどうなるか、わからない訳無いだろ?」

「もし、あなたの考え通りになっても、そうなったら私たちがどうにかするわ」

「その時、この子が無事の可能性がどこにあるんだよ!」

「危険人物がいなくなって、国としては嬉しい限りじゃない」

「ふざけるな!! まだ子供じゃないか! なんでそんな扱いをされないといけないんだよ!!」


 俺の言葉を聞いて、少しはわかってくれたのか女性は小さくため息をつく。

 だが、本当は何も分かっていなかったのは俺の方だった。


「わかってないのね。力を持った人は、皆等しく化け物なの。それが大人だろうと、子供だろうと、女だろうと、男だろうと。世界を危険に晒すことに変わり無いわ。恨むなら、そんな体で生まれてきた自分を恨むことね」

「なんで……なんで、そこまで冷淡になれるんだよ!!」

「私だってこんなこと言いたくないわよ!!」

「……え?」


 いきなり大声を上げた女性を見て、俺は驚く。

 俺の目の前には目に涙を浮かべ、歯を食いしばっている女性が俺をきつく睨んでいた。

 その女性の肩に手を置き、抑えている龍彦がゆっくりと俺を見る。


「俺たちだってその子が世界をどうこうするようには見えない。でも、これは国からの依頼なんだ。俺たちみたいな頼まれれば殺し以外はなんでもするような仕事を生業としている奴らには断るに断れないんだよ」

「そ、そうだったのか。そっちの事情も知らずに、すまん」

「いや、かまわない。……これは提案だが、その子はお前が預かってくれないか?」

「は? なんで?」

「お前はこの国の王様だ。つまり、俺らが依頼された人物より高位の立場に居る。そんなお前にその子をあずけていると俺たちが依頼者に伝えれば、依頼者はこれ以上のことは要求できない。なにせ、自分より高位に位置する者から何かを盗むってことは本当の窃盗だからな」


 なるほど。つまり、この子は俺の傍にいるだけでもう二度と狙われないと。

 いい案だ。いい案だが、この案を俺の仲間たちは了承してくれるだろうか? いや、多分、きっと、万に一つもの可能性で了承してくれるさ! うん!

 俺はこの子を守るという名目でこの子を預かることを了承した。


「わかった。この子は任せてくれ」

「一応、俺たちはこのことを伝えるけど、何の関係もない人を使ってその子を誘拐するとも限らない。これから少しの間、お前を監視させてもらうがいいか?」

「いや、それはちょっと――」

「じゃ、俺たちは一度このことを伝えに行く。今日は外を出歩かないほうがいい」


 そう言い残して、龍彦たち一同は部屋を出て帰っていってしまった。

 残された俺は膝に座っている幼女を見る。疲れたのか眠ってしまっている無防備な幼女。それを膝に乗せて、俺は顔を真っ青にする。

 俺、また面倒なことになってない?

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