女の子は空から降ってくる……?
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女の子は空から降ってくる。
そんなことをどこぞのアニメで見たことがある。だが、そんなのが実際に起こったら、降ってきた女の子は確実にショック死するだろう。もしくは落下時の衝撃で体が粉々……ごほんっ。つまりだ。もし万が一、空から女の子が降ってきたとして、それを見事にキャッチしたとしても、女の子はショック死、キャッチした人は確実に腕を外されることになる。
そしてなにより、面倒だ。これらのことによって、俺はこう思う。
頼むからそんなファンタジーは起こらないでくれ、と。
学校が終わり、別段誰と話すわけでもなく俺はフラフラと一人で寂しく家に向かっていた。
後輩の二人は部活。綺羅と春はもう一時限目まであって、幼女二人は真理亜の家に遊びに行ってしまったので、本当に寂しい帰り道だ。
しかし、だからと言って何をいうわけではない。どちらかというと一人の方が楽な気がするのは気のせいだろうか?
「まあ、毎日毎日みんなで帰ってりゃこう思うのもしょうがないか。いやホント、みんなで帰るとロクなことにならないからなぁ~」
ついこないだも河川敷に行かされ、そのまま川遊びをした。その際、クロエの魔法が盛大に川を吹き飛ばし、いそいそと逃げる羽目になった。
そういえば、薫がクレープを一口くれると言ってなぜかキスをされた時も真理亜と綺羅とで狂気の沙汰になって……あ、これは思い出さないほうがいい。俺のメンタルが死ぬ。
ということもあってか、俺は少し心の拠り所を求めていたのかもしれない。
しかし。しかしだ。
神様というのは意地悪なもので、
「ふわぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!」
「は? え? ……え?」
確かに女の子の叫び声が聞こえるのだが、その姿は全く見えない。
空耳か?
そう思って足を進めると、
「どいてどいてどいてぇぇぇぇええええ!!」
「ん? ……おい、マジかよ」
どうりで周りを見てもわからないわけだ。
だって、叫んでいる女の子は空にいるんだもん! しかも、パラシュートもつけずにすごい勢いでこちらに向かってきている。
さて、ここで問題だ。
このままではあの子は一体どうなるでしょう?
はい。地面にぶつかりぐちゃぐちゃ……死ぬでしょうね!
なら、見事にキャッチしたら? 俺の腕が外れますね!
しかしですね! この俺はただの高校生ではないんです! なんと、死ねない体を持っていて、変な異能まで持ち合わせるハイブリットゾンビ! これなら行ける!
俺はポケットに手を突っ込み、真実を貫く拳のメダルを取って、宙に弾く。
「俺、御門恭介が願い乞う。理念を貫き、世界を否定し、自身の力を夢の為に、仲間の為に使い、全てを圧倒し続ける最強の力を。今、俺のもとに来い、最強の人間神谷信五の力!」
瞬間、筋肉細胞を死滅させる痛みが体を襲う。
しかし、力を全開にしなかった分、体への硬直はさほど無くすぐに動けた。
地面を蹴り、俺は落ちてくる女の子の元まで飛ぶ。
「大丈夫か?」
「うぅ……え? あれ!? じ、地面に落ちてない、です!?」
「あ、えっと……大丈夫そうだな」
「え? あああ、はい! 助けていただきありがとうございます、です!」
元気いっぱいの少女(いや、幼女?)は敬礼みたいなポーズをして笑顔でそう言う。
まあ、何事もなければそれでいいんだ。うん。それでいい。
「じゃあ、俺はこれで」
「あ、待ってください、です! わ、私を助けてください、です!」
「無理」
「だ、大丈夫、です!」
「いや、無理だから。絶対嫌だから。面倒はこれ以上はいらない……」
抱きついて離さない幼女をどうにかして引き剥がそうと一生懸命になっていると、何やら良くない感じになって俺は周りを見回す。
どこを見ても何もいない。平穏な住宅街だけがここにあった。
気のせい?
そう思って、俺は再び幼女を引き剥がそうとすると、
「その子をこちらに渡して欲しい」
さっきまで何もなかったところに高校生と見受けられる制服を着た少年が立っていた。
おかしい、ここは一本道だぞ? 見落とすわけがない。そもそも、人が通らない道で隠れようとしない限り見落とすはずがないんだ。
じゃあ、コイツは一体何だ?
一瞬にして、目の前の少年に対する疑問が浮かび、それを捨てた。
こういう場合。かなりの確率で面倒なことに巻き込まれる。
相手は戦う意思を見せていないなら、さっさとこの幼女を引き渡そう。
思って、俺は幼女に手をかけて、やめた。
幼女が、見知らぬ俺の服を掴んで震えていたんだ。
「お、おい……」
「さあ、早く」
「い、いや、早くって、離れてくれないんだけど……」
まずいまずい! 相手の人がかなりお怒りですよ!? なんとかしないといけないよ、これ!!
だが、震えている幼女をはいそれと渡せるほどのメンタルを持っていれば俺は今日ここを一人で歩いていないだろう。絶対複数の友人やらを引き連れて家まで下校しているはずだ。
それだけが理由ではない。さっきから何やら目の前の少年にこの子を渡しちゃいけない気がしてならない。目の前の少年は危険な匂いを発し続けているのだ。
「あ、えっと。この子がなにかしたの?」
「お前がそれを知る必要は皆無だ」
「いや、一応巻き込まれている身だから状況は把握したいかなぁって」
「……そいつは世界を破壊する存在だ」
はい、アウト! この人やばい人だよ!? 頭が銀河の苑までイっちゃってるよ!?
幼女が世界を破壊するってどんな嘘……でもあながちなさそうだな。うん、家に一人そういう魔女がいた気がする。危うく北半球が吹き飛ぶ大惨事を起こしそうになった麒麟児がいましたね!
だからと言って、この幼女もそうとは……
「まあ、何だ。この幼女が絶対そうだとは限らないだろう?」
「お前……ロリコンか? だからそいつを庇うのか? ならやめとけ、そいつはな。国家級の危険人物だ。お前のような高校生にどうこうできるやつじゃない」
「ロリコンじゃないし、庇ってもない。こいつがどんなに危険な奴だろうが知ったことじゃないし、どうこうするつもりもない。ただ、俺はお前のそんな態度が気に食わない」
さっきから証拠のないことをバンバン言うだけの中二病(笑)の少年には流石にムカっときていたのだ。
俺は幼女を背後に隠し、構える。
能力の使用時間は残り約一分。目の前の少年を倒すには十分だろう。ただし、相手が普通の高校生だったらの話だけど。
「一応、お前の名前を聞こうか」
「名乗ってから聞けよ。それが礼儀ってもんだろ?」
「……俺は、河西龍彦。風凰学園二年、生徒会副会長だ」
「俺は御門恭介。つい最近にこの国の王様とやらを押し付けられた不幸少年だ」
俺と龍彦の視線がぶつかり、火花を散らした瞬間、
「そこまでよ」
「そこまでだよ~」
唐突に現れたタナトスと、龍彦の知り合いらしき綺麗な女性が勝負を強制的に終わらせた。
見れば龍彦の後ろには数人の仲間が居る。俺の横にも雷電とヴリトラ(人型に変身中)が俺を抑えていた。
一体、何がどうなってるんだよ……。俺は訳が分からず頭を抱えた。
いや~、実は今日、学園祭の最終日だったんですよ!
楽しかった日々を思い出しながら今、ハイスペックゾンビの番外編の学園祭編を短編として書いてます!
近々投稿すると思いますので、少しながら期待していただけると嬉しい限りです!