浮気を許さない妻は幼馴染と共に夫を追い詰めるために戦う決意をすると運が向いて真に愛する人を知る
暖かな風、穏やかな日々。そんな日常も望めないというのか。
「はあ……また?香水の匂いも違うし。最低」
メロディスは、豪華な寝室でため息をついた。
隣にはいけ好かない夫、ビシアンの寝顔。白い結婚ってやつで愛なんてかけらもない。それなのに、ビシアンは毎日遊び歩いて愛人までいる。
(許せない!この家、めちゃくちゃにしてやる!)
メロディスは、前世の記憶を持っている。若者だったメロディスは、こんな不誠実な男に我慢するなんて考えられなかった。因みに主婦だった記憶はあれど誰と結婚したとかは、さっぱりわからない。
「そうだ!」
昔からずっと一緒にいた幼馴染のレオナルに手紙を書くことにした。レオナルは魔法使いで今は没落した貴族の跡取り息子。なんとかなりますように。
数日後、メロディスはレオナルと秘密の場所で会った。
「レオナル、お願いがあるの」
「メロディス?どうしたんだ、そんなに真剣な顔をして」
真剣なこちらに驚く様子。
「私の夫、ビシアンの家を……あの忌々しい屋敷を、財産ごと全部潰したいの!力を貸してくれない?」
レオナルはさらに驚いた顔をしたけど、すぐにいつもの優しい笑顔に戻った。
「君がそう望むなら、喜んで協力するよ。僕もあの傲慢なビシアンのことは好きじゃないからね」
「ありがとう、レオナル!あなたしか頼れないわ!」
メロディスとレオナルは、綿密な計画を立て始めた。にんまりと笑う。ビシアンの会社の情報を少しずつレオナルに伝え、レオナルは魔法を使って裏で工作していく。
「まずは、小さな噂を流してみようか『ビシアンの会社は危ないらしい』ってね」
「そうね。じわじわと信用を落としていくのよ」
二人は、まるでゲームを楽しむかのように、着々と計画を実行していった。レオナルの魔法とメロディスの現代知識が合わされば、怖いものなしだ。
数ヶ月後、ビシアンの会社は傾き始め、屋敷の価値もどんどん下がっていった。ビシアンは焦りまくって、毎日イライラしている。
「一体どうなっているんだ!誰がこんなことを!」
メロディスは、そんなビシアンを冷たい目で見下ろした。
(自業自得。あなたが勝手気ままに生きてきた報いよ)
ついに、ビシアンの家は完全に没落。豪華な屋敷は差し押さえられビシアンは全てを失ったのだ。
「メロディス……お前は一体何をしたんだ!」
最後にメロディスに詰め寄ったビシアンにメロディスは冷たく言い放った。
「私を疑うの?なーんて、私がやった。あなたみたいな最低な男に、この家はもったいないんだから」
「メロディス!」
(おっと)
追いかけられたが手に持っていた激辛撃退スプレーを噴射。
「ぎゃあああああああ!!!」
相手が痛みに呻いている間に逃げる。
「じゃーねえ。私の結婚をめちゃくちゃにした報い。楽しかったでしょ〜?」
全てが終わった後、メロディスはレオナルと二人、静かな場所で話をした。
「ありがとう、レオナル。あなたがいなかったら、きっと泣き寝入りしていた」
「気にしないで。君のためなら、僕はいつでも力になるよ」
レオナルは少し照れたように微笑んだ。優しさにキュンとなる。
「ねえ、レオナル。これから、私たちはどうしよう?」
「そうだな……君が良ければ、僕と一緒に暮らさないか?質素な暮らしになるかもしれないけど」
メロディスは嬉しくて思わずレオナルに抱きついた。待っていたようなもの。
「ほんと!?うん!喜んで!」
こうして白い結婚は終わりを迎え、メロディスは新たな人生をレオナルと共に歩み始めるのだった。
「質素な暮らしも悪くないわね。あなたがいればどこでも幸せよ」
腕の中で呟いた。ビシアンの豪華な屋敷とは比べ物にならないけれど。レオナルと二人でいる空間は不思議と温かくて居心地が良かった。
数日後、二人は小さな古い家で暮らし始めた。レオナルは得意の魔法で庭に花を咲かせ、メロディスは前世の知識を生かして料理や家事をこなす。
「メロディスの作る料理は、本当に美味しいな。僕の村では見たこともないものばかりだ」
レオナルはメロディスの作った簡単な朝食を美味しそうに頬張りながら言った。
「ふふ、そうでしょ?現代には色々な食べ物があるのよ」
メロディスもまた、レオナルの淹れてくれるハーブティーの香りに癒されていた。魔法で沸かしたお湯で淹れるお茶は格別な味がする。レオナルは少し真剣な顔でメロディスに話しかけた。
「メロディス、君はこれからどうしたい?もしよかったら、僕の故郷の村に来ないか?静かでいいところだよ」
メロディスは少し考えた。ビシアンのことはもう過去のことだ。これからはレオナルと共に新しい生活を築いていきたい。
「うん、行くわ。あなたと一緒なら、どこへでも」
レオナルは嬉しそうに微笑み、メロディスの手をそっと握る。
数週間後、二人はレオナルの故郷の村へと旅立った。そこは、豊かな自然に囲まれた本当に静かで美しい場所。村人たちも温かく二人を迎え入れてくれた。
「レオナル、素敵なところね」
メロディスは村の景色を見渡しながら言った。
「ああ。ここでなら、二人でゆっくりと暮らせるだろう」
レオナルはメロディスの隣で優しく微笑んだ。村での生活は決して楽なことばかりではなかったけれど、メロディスとレオナルはお互いを支え合いながら少しずつ新しい生活を築いていった。
レオナルは村の子供たちに魔法を教え、メロディスは得意の料理を村人に振る舞う。二人の周りにはいつも笑顔が溢れていた。
そんなある日。村の長老が二人に言った。
「お二人を見ていると、心が温まるよ。どうか、これからもこの村で仲睦まじく暮らしてください」
メロディスとレオナルは顔を見合わせ、微笑んだ。
「はい、ありがとうございます」
二人は、この穏やかな村でゆっくりと愛を育んでいくことを誓った。手を取り合って生きていくのだろう。
(これで、終わり、かな?)
レオナルの温かい手に包まれながら、静かにそう思った。
(やっぱり、もうちょっとだけあの男に言ってやりたいな……)
メロディスは穏やかな村での生活を送る中で、ふとビシアンのことを思い出した。
全てを失って今頃どうしているだろうか。少しだけ、ほんの少しだけ彼の落胆した顔が見たいと思ってしまった。
「レオナル、ちょっとお願いがあるの」
ある日の夕食後、メロディスはレオナルに切り出した。
「どうしたんだい、メロディス?何かあった?」
「ううん、別に。ただ……あのビシアンが今どうしているか、少しだけ知りたくなったの。もし魔法でこっそり見ることができたら……なんて」
少し困ったような顔をしたけれど、メロディスの気持ちを察してくれた。
「わかった。少しだけなら……あまり深入りはしない方がいいと思うけど」
レオナルはそっと魔法を使い、遠く離れた場所にいるビシアンの様子を探った。しばらくすると、驚いた表情でメロディスに言う。
「ビシアンは……ずいぶんと落ちぶれているようだ。街の片隅で汚れた服を着て、酒を飲んだくれている」
メロディスは様子を想像して、心の中で小さく呟いた。ざまぁみろと。
「愛人も彼のそばにはいないみたいだ。お金がなくなった男に、用はないんだろうね」
レオナルの言葉にメロディスはさらに溜飲が下がる。
自分が苦しめられた分、ビシアンもまた苦しんでいるのだと思ったら少しだけ気が晴れた。
「そう……それだけわかれば十分よ。ありがとう、レオナル」
メロディスはもうビシアンのことはどうでもいいと思った。
彼がどんなに落ちぶれようと自分の幸せには関係ない。大切なのは、今隣にいるレオナルと、この穏やかな村での生活なのだから。
「もう、彼のことは忘れよう。私たちは、私たちの未来を築いていくんだ」
レオナルはそう言ってメロディスを優しく抱きしめた。メロディスもまた温もりに包まれながら過去の影から完全に解放されたのを感じた。
それからしばらくして、村に小さな騒ぎが起こった。なんと、以前ビシアンの会社の取引先だったという男たちがビシアンを探して村にやってきたのだ。
「ビシアンという男はどこにいる!金を返してもらわねば困る!」
村人たちは困惑したがメロディスとレオナルは冷静に対応した。
「その男なら、もうこの村にはいません。どこへ行ったのかも、私たちは知りません」
レオナルがそう毅然とした態度で答えると、男たちは諦めて村を去っていった。
「ありがとう、レオナル。助かったわ」
メロディスはレオナルの頼もしさに改めて感謝した。
「当然だよ。君とこの村の皆を守るのは、僕の役目だから」
レオナルは優しく微笑んだ。この一件があってから、メロディスは完全に吹っ切れた。
ビシアンへの恨みも、過去の辛い記憶も、全て遠い日の出来事になったのだ。
彼女の心にはレオナルへの愛情とこの穏やかな村での幸せな生活だけが残った。二人はこれからも、この美しい村で、共に歳を重ねていくのだろう。
時折、過去を振り返ることもあるかもしれないけれど。その度に二人は互いの手を握りしめ、温かい眼差しを交わすのだ。
「あの時、全てを壊して、本当に良かった」
と心の中で呟きながら。
(ふふ、やっぱり最後に言いたいことを言えて、すっきりした!)
メロディスはレオナルの隣で、心の中でそっとそう呟いた。村での生活は、穏やかでゆっくりと時間が流れていく。
メロディスは村の女性たちに現代の料理を教えたり、子供たちと遊んだりして、すっかり村の一員として馴染んでいる。レオナルは、持ち前の魔法で村の作物の育ちを助けたり。
ちょっとした、困り事を解決したりして、村人たちから深く信頼されていた。
ある春の日、村の広場で小さな祭りが行われる。色とりどりの花が飾り付けられ、村人たちの楽しそうな笑い声が、響き渡る中。
レオナルと一緒に屋台を見て回ったり村の踊りに参加したりして心から楽しんでいた。
「メロディス、この花飾りよく似合っているよ」
レオナルはメロディスの髪に飾られた小さな花飾りを指さして言った。
「ありがとう、レオナル。この村に来て本当に良かった」
レオナルの優しい笑顔を見つめながら答えた。祭りの夜には大きなかがり火が焚かれ、村人たちは輪になって歌い踊る。
メロディスとレオナルも手をつなぎ、その輪に加わった。夜空には満天の星が輝き、二人の未来を祝福しているようだ。
そんな幸せな日々を送る中で前世でやり残したことを思い出す。自分が好きだった小説や漫画を、この世界の人たちにも紹介すること。
「レオナル、私、この世界の子供たちに、面白い物語を教えてあげたい。私がいた世界には、たくさんの不思議な話やドキドキする冒険の話があったから」
メロディスの目を輝かせながら話す様子を見て、すぐに賛成してくれた。
「それは素晴らしいアイデアだね、メロディス。きっと子供たちは喜ぶだろう」
それからメロディスは少しずつ自分の知っている物語を、この世界の言葉で語り始めた。最初は戸惑っていた子供たちもメロディスの語る魅力的な話に夢中になる。
物語に合わせて魔法で小さな光を出したり、音を奏でたりして、メロディスの語りを盛り上げた。メロディスの物語は子供たちだけでなく、大人たちの間にも広まっていった。
村の集会では、メロディスが語る新しい物語を聞くのが、みんなの楽しみになった。
ある日村の長老がメロディスに言った。
「メロディスさん、あなたの話は私たちの心に新しい光を灯してくれます。どうかこれからもたくさんの物語を教えてください」
人の心に自分の知っていた物語が響いていることを知り、大きな喜びを感じた。穏やかな村で互いを大切に思い、共に生きる喜びを噛み締める。
春には野花が咲き乱れ。夏には木々の緑が濃くなり。秋には紅葉が山々を彩り。冬には雪景色が静かに世界を包む。
そんな自然の移ろいの中で温かい場所で。二人寄り添って生きていく。メロディスが見つけた本当の幸せだった。
(もう、これで本当に終わりなのね。煩わしい人とも関わり合わなくていい)
レオナルの隣で心の中でそっと呟き、穏やかな微笑みを浮かべたのだった。
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