表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

アズ・ザ・ラブ・コンティニューズ

作者: Kesuyu

以前書いた超短篇。長篇のシステム・サクラメントの前身。システム・サクラメントはここから構想を膨らませました。

「《そこ》ではボトルメールが唯一外部との通信手段だった」僕は言った。

「それで、そのボトルメールを私が拾ったわけね」彼女はテーブルに頬杖をついていた。「《そこ》であなたは日頃何をしてたの?」

「主に《デジタル家畜》の世話だよ。《デジタル家畜》たちは表向きは変調を見せないけれど、ずっと放っておくと突然発狂して暴れ出すんだ。冬眠から覚めた空腹のクマみたいに」

「可哀想なクマさん」彼女の顔に同情の色がよぎった。指先のネイルにちらっと目をやる。ふと自宅の鍵を確認するみたいに。視線を戻すと彼女は訊いてきた。「発狂したクマさんはその後どうなるの?」

「麻酔を打ってまた眠らせる。それでも大人しくしないようなら《廃棄》だよ。そして外部からなるべく大人しくてよく眠る《デジタル家畜》を捕まえるんだ。それは《ハンター》の仕事さ。《ハンター》は狡猾で、外部とだって連絡も取れる。ただ金と権力に弱い。彼らは基本的に《管理者》の顔色を窺うことしか知らない。助けを求めるのは無意味だった。僕にあるのは特定の分野に限られた《技術》だけだったから」

「あなたの手紙は素敵だったわよ」彼女は恍惚として言った。「懐かしい詞の一節みたいで、初恋のような味がした」

「君が迎えに来たときは驚いたよ」

「私もよ」

「信じていいんだね?」

「もちろん」彼女は鷹揚に頷いた。「まずは身を休めたほうがいいわ。宿に行きましょう」

 ホテルで宿泊の手続きをする際、我々は夫婦のふりをした──彼女がそのほうが怪しまれないのだと。エレベーターで上がっている間も、彼女は僕の腕をしっかりと掴んでいた。

 シャワーを浴び、ベッドで戯れた後、我々は真実を持ち寄った。

「実は僕は《ハンター》なんだ。ボトルメールも誘い水だよ」

「私も《ハンター》よ。迎えに来たのは誘い水よ」

 我々はそのことを察していたので特に驚きもしなかった。しかし互いに本当の名前をはっと思い出し、呼び合った。

「《そっち》の世界はどう?」

「大目に見て」彼女は目を細めた。「最低だわ。《まとも》でいると身を投げ出したくなるくらいにね」

「目が覚めたら一緒に逃げ出さないか?」

「いいね」彼女は微笑んだ。「でも本当に逃げられるかしら? すでに《奴ら》は嗅ぎ付けているかもしれないわよ。訓練された犬みたいに」

「もし目が醒めたなら、もう恐くはないさ」

「そこに愛が続く限りね」彼女は目を閉じた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ