アズ・ザ・ラブ・コンティニューズ
以前書いた超短篇。長篇のシステム・サクラメントの前身。システム・サクラメントはここから構想を膨らませました。
「《そこ》ではボトルメールが唯一外部との通信手段だった」僕は言った。
「それで、そのボトルメールを私が拾ったわけね」彼女はテーブルに頬杖をついていた。「《そこ》であなたは日頃何をしてたの?」
「主に《デジタル家畜》の世話だよ。《デジタル家畜》たちは表向きは変調を見せないけれど、ずっと放っておくと突然発狂して暴れ出すんだ。冬眠から覚めた空腹のクマみたいに」
「可哀想なクマさん」彼女の顔に同情の色がよぎった。指先のネイルにちらっと目をやる。ふと自宅の鍵を確認するみたいに。視線を戻すと彼女は訊いてきた。「発狂したクマさんはその後どうなるの?」
「麻酔を打ってまた眠らせる。それでも大人しくしないようなら《廃棄》だよ。そして外部からなるべく大人しくてよく眠る《デジタル家畜》を捕まえるんだ。それは《ハンター》の仕事さ。《ハンター》は狡猾で、外部とだって連絡も取れる。ただ金と権力に弱い。彼らは基本的に《管理者》の顔色を窺うことしか知らない。助けを求めるのは無意味だった。僕にあるのは特定の分野に限られた《技術》だけだったから」
「あなたの手紙は素敵だったわよ」彼女は恍惚として言った。「懐かしい詞の一節みたいで、初恋のような味がした」
「君が迎えに来たときは驚いたよ」
「私もよ」
「信じていいんだね?」
「もちろん」彼女は鷹揚に頷いた。「まずは身を休めたほうがいいわ。宿に行きましょう」
ホテルで宿泊の手続きをする際、我々は夫婦のふりをした──彼女がそのほうが怪しまれないのだと。エレベーターで上がっている間も、彼女は僕の腕をしっかりと掴んでいた。
シャワーを浴び、ベッドで戯れた後、我々は真実を持ち寄った。
「実は僕は《ハンター》なんだ。ボトルメールも誘い水だよ」
「私も《ハンター》よ。迎えに来たのは誘い水よ」
我々はそのことを察していたので特に驚きもしなかった。しかし互いに本当の名前をはっと思い出し、呼び合った。
「《そっち》の世界はどう?」
「大目に見て」彼女は目を細めた。「最低だわ。《まとも》でいると身を投げ出したくなるくらいにね」
「目が覚めたら一緒に逃げ出さないか?」
「いいね」彼女は微笑んだ。「でも本当に逃げられるかしら? すでに《奴ら》は嗅ぎ付けているかもしれないわよ。訓練された犬みたいに」
「もし目が醒めたなら、もう恐くはないさ」
「そこに愛が続く限りね」彼女は目を閉じた。