表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

02 平穏な学園生活

 ありがたい事に生徒たちは、やっぱり大きな建物の中に居たみたいです。

 クラス分けとかは、まだ? かな。並んでいる生徒たちの列に私も入り込む。

 後は、怖くなさそうな先生に話を聞いて貰えればどうにかなるかなぁ。


 学園長っぽい人が話しているみたい。

 そうして、しばらくすると……この国の王子様が壇上に現れて挨拶を始めました。


「皆さん、ルシウス・セルデウスです。新入生の代表として、そして王族として皆さんに挨拶します」


 王子様とか居るんですよね。しかも同学年。

 とても外見が綺麗な人です。遠目から見て、ですけど。

 今も、そこかしこから女子生徒たちの黄色い声が上がっていました。


「あれが王子様……」


 王族なんて、男爵令嬢の私に関わる機会は、ありません。

 ですが、同学年に在籍されているので……近くには居るのですよね。

 私としては、殿下の覚えめでたくなって家門に有益な何かをもたらす、という事は考えていません。

 ハートベル男爵家は、目立った特色のない領地ですからね……。

 むしろ、王家のご意向などの影響を受けた日には『てんてこ舞い』というものです。


「……てんてこ?」


 私は、自分の中に思い浮かんだ言葉に対して、はて、と首を傾げました。

 それをいうならば『ラサエル舞い』では? と。

 お祭りで有名なラサエル伯爵様の逸話から来る言葉です。まぁ、些細な事ですよね。



 それから、優しそうな教師を見つけて遅刻した事を詫び、自分が居るべき場所を案内してもらいました。


「ふぅ……」


 無事に自分が所属するクラスの教室に辿り着く事が出来て、一安心です。

 そして、担任の教師の挨拶から始まり、クラスメイトとなる皆さんの自己紹介が順番に行われます。


「私は、カレン・ハートベルと言います。ハートベル男爵家の娘です。皆さん、よろしくお願いします!」


 元気よく挨拶を済ませ、頭を下げました。

 ちなみに教室の形状ですが、生徒たちの席が階段状になっている、縦長の教室です。

 目が良くないと、困りそうですよね。

 でも、席は固定ではなく、自由席みたいです。

 授業の度に変わってもよくて、皆が好きな席に早く来た順番に座るようです。


「……僕は、アラン・ディスト。ディスト侯爵家、次男だ。よろしく」


 長めの青い髪と青い瞳をした、眼鏡をかけている男子生徒が挨拶すると、また女子生徒たちから黄色い声援が飛びました。彼もまた、王子に負けないぐらい整った顔立ちなので、気持ちは理解できますね。

 眼鏡を掛けているので、前の方の席が良いのでしょう。前列に座っていました。


「……知っている?」

「え?」


 興味もそこそこに前列の彼を見ていると、隣に座っていた女子生徒が話し掛けてきました。


「彼、アラン様。ルシウス殿下の側近になるよう、内定をいただいているらしいよ」

「そうなんですか? それは、とても凄いですね」


 殿下の側近という事は、将来は国王の側近。宰相の座も夢ではないと思います。

 彼は、それほどに優秀なのですね。でも、私が今、気にするべきなのは彼ではありません。


「えっと、貴方は? あ、私はカレン・ハートベルです」

「うん、自己紹介は聞いていたよ。改めて私も名乗るね、カレンさん。私は、セリア。セリア・ティーチ。子爵家の次女よ。将来は家を出て新聞記者になろうと思っているの!」

「新聞記者……ですか?」


 子爵令嬢なのに、と私は首を傾げました。


「うん! 私の家は、兄が継ぐ事が決まっているからね。政略結婚の相手も、特に決まっていないし。それに、あまり令嬢の生活が……ね?」

「ああ……」


 合わない、という方も、居ますよね。

 私の家は、貴族といっても家族仲が良くて、いい雰囲気ですけど。

 いざ、社交に出た時にそれが通用するかというと厳しいものもあります。

 家を出て職を得る、と考える人だって、もちろん居るんですね。

 家督を継がない男性は騎士や文官や、他の職を目指したりするそうですし。


「だから子爵家と男爵家だけど。将来、カレンさんは家督を継ぐ『女男爵』。私は平民になる予定だから。そこまで、身分差は気にしないで話してくれると嬉しいわ」

「はい、そういう事なら。私も仲良くしてくれると嬉しいです」

「私の事は、セリアでいいよ」

「では、私もカレンと呼んでください」

「うん! 何か知りたい事があったら私に聞いてね、色々な『情報』を追いかけていくつもりだから!」

「ふふ、はい。何か知りたくなったら聞きますね」


 私は、クラスメイトと、良好な交流をする事が出来ました。

 それは、とっても大切な事ですよね!


「おーい、そこの。他の奴の自己紹介も聞いてやれー」

「す、すみません、先生……」


 怒られちゃいました。私とセリアさんは、互いに顔を見合わせて苦笑いです。


「…………」


 まずは、クラスメイトの女性生徒たちと仲良くしたいな、と思います。

 将来の結婚相手を探す、といのは、まぁ、その。

 クラスメイトから探すものでもないですからね。

 ですので、ひとまず私は友人作りに集中したいと思います。



 それから、授業が始まりました。

 各種の教科の授業、運動の授業、それから魔術の授業!

 王立学園では、様々な分野の教育を受ける事が出来ます。


 私は『セリア』と仲良くなり、その後も一緒に過ごすようになりました。

 学生寮でも部屋が近くて、話しやすいんですよね。

 ちなみに、学生寮の部屋は、それなりの広さで個室です。

 これは私が特別というワケではなく、皆さんの部屋も個室になっています。


 運動系の授業では、実際に木剣を持っての鍛錬があったりします。

 魔法系と運動系は、野外で授業が行われ、隣のクラスと合同です。


「では、バーメイン君。前へ出て、手本を見せてみなさい」

「ウーッス!」


 先生に名指しされたのは隣のクラスの男子生徒でした。

 赤色の短い髪と赤い瞳、そして背丈の高い、体格のいい男子です。


「彼は、クラブ・バーメイン。バーメイン伯爵家の次男ね。見た通りの無骨な人。バーメイン騎士団長のご子息ね」


 セリアが、すかさず『情報』を教えてくれます。


「王宮騎士団長の?」

「そう、彼も実はルシウス殿下の近衛候補って噂よ」

「へぇ、凄い人なんですね」

「うん、同じ世代だと右に出る者のいない実力者なんだって」

「それは凄いです」


 学園には、本当に色んな人が居ますね。王族や、王族に縁のある方が、たくさんです。


「……カレンは、婿入りしてくれる相手を探しているのよね?」

「うん、だけど、まだ焦ってはないの」

「そう? 実は、あのクラブ様も婚約者はいないみたいよ」

「へぇ……」


 でも、将来は近衛騎士になろうっていう方ですよね。

 男爵家を継ぐ私としては、そういう方とは縁を結べません。


「脈ナシ?」

「え? うーん、まぁ、流石に将来的に……」

「それはそうね、情報を間違ったわ」

「ううん、ありがとう、セリア。いつも楽しく聞いているよ」

「ふふ、カレンはいい子よね」


 セリアってば、私の心配をしてくれているのだと思うけど。

 自分が貴族との結婚を諦めているからって、その情報を持て余している気がする。

 私は、特に、バーメインさんと交流を取る事はなく、授業もセリアと一緒にペアになって木剣の授業を受けました。


 バーメインさんは、実力が抜きん出ているせいか、一人だけペアが出来ず、余ってしまったみたいです。

 彼は教師と組んで授業を受けていました。

 私は、剣も使い慣れていないし、実力が同じぐらいのセリアと組めて良かったです。


 先生が、バーメインさんの有り余る力で、ほんのり『かすり傷』を負ったみたいですけど。

 もしも、ペアを組んだ相手が自分だったら、あの一撃で気を失っていただろうなぁ……。

 そう思うと、やっぱり友人が居る事の有難さを、私は噛み締めるのでした。


 そうして剣の授業は、無事に終える事が出来ました。

 私の学園生活は、順調に、そして穏やかに過ぎていくみたいです。


 うん! 何事も、平和が一番ですよね!


ノーイベントデー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これ騎士団長の息子とペア組んでたら一撃で気絶して保健室まで介抱されるフラグとかだったのかな?
[良い点]  前世の記憶が蘇りそうになってもスルーし前回の王子含め攻略対象者と思われる人物には「下位貴族としての当り前の感覚」でこれも接触スルー。  サポートキャラと思われるクラスメイトとは普通に友人…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ