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11 キニナルコト

 アンセム様とお別れして、夢見心地で学生寮へと帰りました。

 ベッドで横になり、今日の余韻に浸ります。


 それから、色々と彼との思い出を思い返して。


「あっ」


 気になる事があったのを思い出しました。


「アンネマリー様が『俺のお嬢様』って、どういう意味なんだろう?」


 気にしだすと中々、その事が頭から離れませんでした。

 夏季休暇なので、そう簡単にアンセム様と会って、お話しする事も出来ず、詳細を聞く事が出来ません。

 何か深い意味があったりしたら?

 実は、彼はアンネマリー様が好きで、ルシウス殿下に言い寄られる彼女を見て身を引いた、とか。

 そこにタイミングよく私が彼に声を掛けたから、都合よく付き合う事に……。


「いえいえ……」


 お付き合いしたばかりなのに急に不安になる事を考えてどうするんですか。

 また会った時に聞けば済む話ですし。

 ああ、でも本当にそうだったら、どうしよう。

 そんな風に悶々としてしまいました。


「つ、次に会った時に確認するから……」


 それから何を話したでしょうか。


「……伝説の鐘のお話」


 セリアは、伝説の事って知っているのかな。

 あんまり、そういう方面の話は聞かないよね。休暇明けになったら聞いてみよう。


 翌日、学生寮から少し外へ散歩に出かけていきます。

 夏季休暇で実家に帰る人も多いのですけど、私はそのまま寮で過ごす予定ですね。

 冬季休暇では、戻ろうと考えています。


 学生寮は、王立学園の敷地内ですが校舎からは少し離れたところにあり、朝の通学には困らない距離にあります。

 なので、学生寮を出ると学園の敷地の中をお散歩できるんですよ。


「にゃあ」

「あら?」


 今の鳴き声は、と。私は周囲を探してみました。

 すると、近くの木陰に猫が居ました。猫の鳴き声ですね。


「まぁ、可愛いです」


 野良猫かな? 首輪とかは付けていないみたいだけど。

 でも、心なしか毛並みがいい気がしますね。


「ご飯とか持っていないけど。どうしたのかなー、迷子?」


 私はなんとなく、しゃがみ込んで、その猫に手を振ってみました。


「にゃあ」


 すると猫が可愛らしく私の手の平にすり寄ってきます。


「可愛い」


 私は、しばらくその猫と戯れる事にしました。

 うーん、抱っこ出来るかなー。仲良くなれたら、ご飯ぐらいは食べさせても……いいかな?



「にゃあ」

「いいこ、いいこ」


 しばらく猫と戯れた後、抱っこにまで漕ぎつけて、私は猫を腕に座らせて撫でながら散歩を続けました。

 とても人懐っこい猫ですね。


「ん?」


 と、少し離れた場所には人が居ました。

 あちらは、まさか……ルシウス殿下?

 まさか、夏季休暇中でも、こんな場所でお見掛けするとは。

 どうやら、木剣を振るって鍛錬をしているみたいです。

 どうして学園でされているのでしょうね。


「お邪魔しては悪いですね」


 私は、もちろん殿下の邪魔をするワケにもいかないので、殿下からは離れる方向に歩き始めました。


「にゃあ!」

「あっ」


 すると、抱えていた猫が私の腕から飛び降りて、殿下の方へ走り去っていきます。


「残念」


 仲良く出来たと思っていましたけど、流石に野良猫がそこまで大人しくしてくれないですよね。

 猫がルシウス殿下を傷付ける事も出来ないでしょうから、ここは諦めるしかありません。

 無理をして追いかける事でもないですからね。



 それから、私は別方向へと歩いていき、また人を見つけました。


「あちらは……」


 バーメインさん、いえ、クラブ・バーメイン卿ですね。

 殿下の護衛騎士としての任務もあるようです。

 ですが今は護衛はされていないらしく、件の令嬢と仲良くお話ししていました。

 あちらのお邪魔も、もちろん出来ませんよね。


 私は特に目的もなく歩いているので、フラフラと歩いていきます。

 気まぐれなお散歩ですからねー。


「暑いなー」


 夏季休暇ですので、今は夏、つまり暑い時期です。

 水でも飲もうと『水飲み場』へ向かいました。

 魔法の浄水路があって、綺麗にされた飲み水を飲める場所が、いくつか作られているんですよ。

 もちろん、王族や高位貴族の方は、特別な水筒などをお持ちで利用しませんけどね。

 私たち下位貴族や、平民はこういった設備をありがたく使わせていただいています。


 貴族令嬢らしからぬ……という飲み方もしますよ。

 ずばり、噴水口から出て来る水を、直接に飲むスタイルです。


「んっ」


 きちんと冷たくて美味しいのですよね。どうなっているのでしょうか、これ。

 もう少し勢いを強めたら冷たいシャワーになって気持ちいいですかね?

 そうしますと、勢いがつき過ぎて服がびしょ濡れになってしまいますか。

 やってみようかな……、と。そんな『選択肢』を思い浮かべましたが。


「……流石に、はしたないよね。部屋に戻ってシャワーでも浴びよ」


 私は、ちょっとしたお散歩を終わらせて部屋へと帰る事にしました。


「あ、どうも」

「……どうも」


 すると、そのそばには、青髪のディスト侯爵令息、アランさんが居ました。

 やっぱり殿下の側近となると夏季休暇でも学園に一緒に来ているのでしょうか?


 私は、彼に会釈をして、学生寮に戻ります。


 お散歩をしてシャワーを浴びたら、ほんの少し悩んでいた事など、すっかり流せてしまったみたいです。


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フラグさん「お願いです、少しで良いので仕事下さい」
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