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第94話 隠し事

「そろそろ見えてきましたね」


終業式から五日。


お土産を買い終えた後、すぐに帰りの支度をして帰路につく。


そして三日目。


久しぶりの公都が馬車から見えてくる。


帝都に見劣りしない高い城壁と立派な門。


僕は懐かしく思いながら、家に着くのを今か今かと待った。



公爵邸に着いた僕を出迎えてくれたのは、両親とアンナ、それに働いている使用人や護衛の騎士など。


「「「「「おかえりなさいませ、ルイ様」」」」」


息ぴったりの出迎えの挨拶をする。


その後、両親がこちらへと寄ってくる。


「ルイ、お帰りだな」

「そうですわね。おかえりなさいね」


母が僕を抱きしめる。


母の温もりが僕の心を温かくする。


「ほら、貴方達も」


そう言って母はアルスとレーナにも促す。


ここ数年、母は少しずつ変わってきており、段々とアルスやレーナにも普通に接するようになってきた。


父から諭されたのか、アルスに会った時の事を本人に謝りその後は親子―とまでは行かないものの普通に接している。


戸惑っていたアルスとレーナが順に母に抱擁をされる。


それを満足そうに父は眺め、今度は三人父とも抱擁をする。



そして少しの談笑の後、父にアルスとレーナと共に書斎へ来るよう言われる。


「何で呼ばれたか理解しているか?」


父はこちらを睨む。


流石に公爵家当主なだけあって威厳はある。


「もしかして旅行の件ですか?」


旅行とは、三日後に南方へ行くことだ。


精霊術を調べていく上で、歴史的に南方で度々目撃例が出ている。


また、南方の多くの村に伝わっている伝承についても気になっている。


その調査の為に行くのだ。


もちろん表向きは旅行ということになっている。


「まあ、それもあるがまずはアレックス皇子についてだ」


あの皇子のこと?


最近は全く関わりがないのだが。


「自覚は無いのか?初日からお前がやらかしていて、こちらとしては胃が痛むようなことだったぞ!」


はて、初日・・・


「もしかしてクラスリーダーの事についてですか?」


僕は思い出して、父を見る。


「そうだ。何で皇子が推されていたにも関わらず奪い取った?」


流石公爵家当主、そこまで知っているのか。


「別にそこまでおかしなことではありませんよ。家柄的に、血統的にも僕の方が上じゃないですか」

「お前・・・」


父は言葉を失う。


「あの皇子だってやりたそうではなかったですし、良いですよね?」


父はしばらく口を閉じてから、答えた。


「俺が言いたいのはそういうことではない。向こうの顔を立てろということだ」

「?」


どういうことだ?


「主君の子だぞ。顔を立てるというのが臣下の務めでもある。まず公爵家自体お前の力ではない」

「でも父上、僕は領地を持っています。そういう意味ではクラス内で権力は最もあります」


父が口を噤む。


「一番力のある、かつ強い僕がリーダーになっても問題ありませんよね?」

「・・・はぁ〜〜〜。分かった。このことについてはもう何も言わない」


よし、お叱りはセーフ。


「次はお前が隠していた力についてだ」


隠していた力?ああ、無詠唱魔法か。


「何故親に無詠唱魔法という重要なことを隠していた?自分の子が使えることへの嬉しさと同時に、寂しさも感じたぞ」


父がしょんぼりとして、僕は何となく気まずくなる。


「無詠唱魔法は凄い発明だ。だからこそ保護しなくてはならない」


父が言葉を続ける。


「どれだけ魔法協会から圧力が掛かったと思っている。お前を守るのに苦労したぞ」


なるほど、それでほとんど手を出されなかったのか。


「何故言わなかった?」

「セバスには話しましたが・・・やはり重要なことで隠すべきと僕自身が思いまして」

「二人ともそう思ったのか?」


僕の後ろに控えているアルスとレーナに顔を向ける。


「「申し訳ありません」」


二人が頭を下げる。


「いや、怒っているのではない。何か理由があるのは分かっている。旅行に行くのも含めて」


まあ、旅行自体も怪しまれているか。


「不問とする代わりにその無詠唱魔法を見せてくれないか」


父が目を輝かせながら言う。


なるほど、結局見たいだけか。


不問にされるなら喜んでお見せしよう。


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