第87話 ゴーレム
ギガーーー!!!
大きな音を出しながらこちらへと歩み寄ってくるゴーレム。
足は人ほどの大きさで、ドンドンと歩くたびに地ならしを起こす。
「ま、まさかゴーレムだったのか!」
その姿を視認したラオスは唖然とする。
一方で生徒たちの混乱は尋常ではなかった。
「な、なんでゴーレムがいるんだよ!」
「もう戦えないよ!」
「太刀打ちできるわけない」
何人かは膝から崩れ落ち、その他の生徒はただただ立ちすくんでいた。
「み、みんな早く逃げるように!とりあえずここは俺が・・・いや、ルイ。君は体力が残っているだろ?できれば―」
「言われるまでもありません。久々の手応えある敵でウキウキしています。だろ、アルス、レーナ?」
僕は嬉々とした表情で振り返ると、やれやれといった感じで二人が戦闘態勢に入る。
「ルイ様は人使いが荒いです。これでも私は女子ですよ」
「自分も弟ですよ」
何を言っているんだこいつら?
「お前ら二人は僕の従者でしかないぞ」
「「・・・そういう意味で言ったのではありません」」
じゃあどういう意味だ?
「とりあえず、作戦はどうします」
作戦、か。
ゴーレムは確か上上級。
ゴーレムとは、土でできた大きな機械のような魔物と言われているが、諸説あり不明。
ただ、ダンジョンを何かしらの理由で守っていると言われ、二十〜三十階層でときたまに現れるらしい。
弱点は水魔法。
だが、ゴーレムは魔法を使える魔物のためシールドを張ることができるから厄介。
他にも土魔法なども上級を放つことができる。
さらに言えば、ゴーレムは集団でよく行動する。
最大で五体いると言われているからそれを気をつけなくては。
ギガーー!! ギガーー!!
「アルス、何体いる?」
「おそらく三体かと」
三体か。だったら行けるな。
「ルイ、お前は―」
「先生、心配しないでください。僕たち三人で倒せますよ」
僕らは一歩前へと出ていた。
「ちょっと貴方、本当に三人で行くつもり!」
先程まで怯えていたのか、足を震わせながらナータリが僕の肩に手を置いて言う。
僕はそれを振り払って、ニヤリと言う。
「当たり前だろ。あんな敵、三人で十分だ」
「でも―」
「負けると思っているのか?この僕が?」
「そうは言ってないけど」
不安そうに言う。
ナータリの気持ちを感じ取ってか、レーナがニッコリと笑って言う。
「ナータリさん、心配いりません。あれぐらいの敵でしたら倒すことができます。ですから後ろの生徒の事を頼みます」
後ろの生徒、つまり怯えている腰抜け共だ。
そう言えば忘れていた。
「まあ、とりあえず僕らが軽く倒す。行くぞ」
「「はい」」
僕らはゴーレムへと向かっていく。
「洞窟の幅的に一体一体と戦うことになるな」
「ええ。後ろへ攻撃がされないように注意しながらですから、自分が前衛、ルイ兄様が中衛、レーナが後衛でよろしいですか?」
「ああ」
アルスが前衛で剣を振るい、後方で僕が支援。それをさらに支援かつ腰抜け共への被害を抑えるのがレーナの役目。
「では行きます!」
そう言ってアルスがノロマなゴーレムの真下へと入り込む。
アルスは腰の剣を抜き、ゴーレムの大きな体を駆け上がる。
それに怒り狂ったゴーレムが自分の手を体へと打ち付けるが、そこにはもうアルスはいない。
「【ウォータレス】!」
僕はそのゴーレムが自傷した場所を狙い、上級水魔法を放つ。
ギガァーーー
自分の硬い手を打ち付けていた為、ヒビが入ってしまったその体に穴を開けるように当たる魔法。
当たった場所周辺は、水が土を溶かし、どんどんと穴を開けていく。
そこをアルスはもちろん逃さない。
ゴーレムの攻撃が来る前に、すでに離れていたアルスが再度ゴーレムの懐に入る。
そして身体強化魔法で一気に崩れかけの場所へと飛び上がる。
更に、剣に魔法を纏わせ、そのまま刃を入れる。
「あのものを、強化せよ、【ストレイン】」
振り切れなさそうと判断したレーナが身体強化をアルスにかける。
「いっけぇぇえーーー!!!」
大きな雄たけびとともに、アルスが思いっきり剣を横へとすべらせながら強固な硬い体を切る。
ギガァァァァ
魔物の源、コアまでも二分する。
これで一体。
まあ、楽勝でしょう。




