第252話 計画④
さて、証言をとった僕は女狐を連れてとある所へと向かう。
「ちょっと、何処へ行くのよ!」
「いいから黙って付いてくるんだ」
後ろから文句を言いながら歩いてくる。
背後にはアルスとレーナが目を光らせていて、暴れようものなら取り押さえることができる。
「私をどうするつもり!場合によっては、今回の無くしたことについて―――」
「皇家に言うつもりか?言ってどうなる?」
「どうなるって・・・」
「たとえお前が手引したという証拠がなくても、お前たちは処罰される。確かにブルボン家は報告をしなかった罪で罰を受けるが、正直そこまで大きな痛手にはならない」
それだけブルボン公爵家は偉大で強大。
簡単に潰れるような家ではない。
「むしろ非公式なこととは言え、協力をしようとしないそっちの方が罰を受けるだろうな。ちっぽけな侯爵家だし」
父もそのことぐらいには気付いているだろう。
最悪チクられても大した罰を受けないから、バカバカしい脅しに返答をしなかった。
ブルボン公爵家を脅すなんて一万年早いんだよ!
「結局お前は馬鹿だったんだよ」
「な、年上に向かって失礼な!でもどういうことよ!」
「怪しい輩に利用されて、見返りが本当にあると思うか?大人しくブルボン家に従ってればよかったのに、脅しなんかして・・・もう選択肢はない」
ちょうど話し終えたところで、目的の部屋につく。
そこはこの屋敷の中では一番広い部屋。
中に入るとそこにはすでに五人の男たちがいた。
「どうしてあんたたちがここにいるのよ!」
部屋にいたのはマーセル五大商会の代表たち。
全員が神妙な面持ちで女狐を見つめる。
彼ら五人の正面に僕らは座る。
「これはどういうことよ!」
未だに騒ぐ女狐を無視して、僕と面識のない二つの商会の代表が挨拶をする。
「お初にお目にかかります、建築を事業にしているC&Cの代表のラッセルと申します」
「マーセル五大商会、カジノなどを運営しているカルトラの代表のルーブと申します」
深々と頭を下げる大人たち。
「ちょっと、早く説明しなさいよ!」
どうやら女狐と代表達は顔見知りらしい・・・まあそれもそうだろうね。
「さて、では皆様に提案した件について。答えが出たということでよろしいのですか?」
「提案していた件?答え?どういうことよ!」
さつきからうるさいやつだな。
「別に大したことじゃない。五大商会を僕の傘下にする件だよ」
「!!!それは本気で言っているの!」
「ああそうだとも。それだけの魅力を持っているからな」
何かを言いたげだな、反論しても無意味だというのは分かっているはずだ。
ブルボン家に経済やら政治やらの話をしても通じない。
だって最強だからな。
「さて、では答えを聞こうか」
「我々の返答については、ティー・エイチ代表のトルツがしたいと思います」
前回会った奴の一人が立ち上がる。
「結論としましては、受け入れようと思っています」
だろうな、予想通りだ。だけれど―――
「どういうことよ!あんたたち、それを本気で言っているの!」
一人ギャーギャー騒いでるやつがいるな。
「お嬢、これはこの街を管理している五大商会の決定でございます。誰だろうと覆すことはできません」
「・・・・・・」
押し黙るしか無いようだな。
「いいか、女狐。お前が敵に回したのはブルボン公爵家だ」
たかが地方貴族が国家を敵に回したようなものだ。
「あの、それで、ルイ様」
代表の一人が手を挙げる。
「街の件ですが・・・」
「何だ?説明されているだろうけど、あれは必要なことだった。ちなみに今回の件は国には言うなよ」
「え、ええもちろん分かっております!ですが、目的のものは見つかったのですか?」
・・・それについてはまだ報告を受けていない。
「おい女狐!場所は知っているか?」
「知るわけ無いでしょ!」
だろうな、ただ手助けをしていただけだろうし。
「ルイ兄様」
後ろで控えていたアルスが耳打ちをしてくる。
「何だ、見つけたのか?」
「それが、何処を探しても見つかっていないようで」
クソ、最悪の事態だ。
奴らを倒せば見つけられると思ったが・・・
「ルイ様、お客様がお呼びなのですが」
今度はレーナが耳打ちをしてくる。
僕に客だと?今は対応している時間はないんだが。
「それが―――」
何で言い淀んでいるんだ?
「とりあえず追い払って―――」
「大事な話があるので来たの!」
いきなり部屋の扉が開く。
振り向くと、そこには見覚えのある奴がにやりと笑って立っていた。
「マリー!何でお前がここにいるんだ」
客ってこいつのことかよ!
「大事な話があるからよ」
「こっちも今は大事な話をしているんだ」
「それよりも大事だと思うわ。お探しのものを見つけてあげたわよ」
マリーの手に持っていたのは古く歴史ある本だった。




