第251話 答え
精霊術士どもに降り落ちた雷は辺り一面を更地にする。
更地となってしまった街の一部を見て、僕は思う。
「うん、問題なし!」
「いや、大アリですよ!」
こちらへと駆け寄ってくるアルスだが、若干怪我をしている。
大方、僕の魔法を防ぎきれなかったんだろう。
「ルイ兄様!どうして神級魔法を使ったのですか!予定では聖級魔法だったじゃないですか!」
「んなこと言われても、ただ打ちたかったから打っただけだ。何か文句があるか?」
僕の言葉にうなだれるアルス。
「ルイ兄様、盗まれたものを取り返すのが今回の任務です。こんなことをやって、燃えてしまったり場所が分からなくなったらどうするんですか」
・・・まあ、なんとかなるだろう。
「何とかなりません!そもそも、生きているのですか?」
「ああ、流石に僕でもそれぐらいは分かっている。上手く調節して、ギリギリ死ない程度で抑えてある。レーナの魔法なら、すぐに治るだろう」
僕だってただ打ったわけじゃないからな。
怒られない程度に自己満足をしただけだ。
「よし、じゃあこいつらを運ぶのは頼んだぞ」
「・・・はぁ〜〜、こんなに更地にしてしまって。本当に大丈夫なんですか?」
「問題ない、奴らは僕達に口答えできなくなるからな」
僕はにやりと笑う。
「相変わらずとんでもない作戦をたてますね」
「今回はしっかりと確証があったからな」
だから街を更地にしたんだ。
ちょうどよいお仕置きになるからな。
「さっきの爆音―――ニャニャ!何でこんな更地になっているニャ!」
「そんなことよりも、ちゃんと見つけてきたか?」
「え、ええ、しっかりと見つけてきたニャ」
驚くテラだが、しごとはしっかりとやってきたようだ。
「見せてくれ」
僕はテラからとある書類を貰う。
それを読んだ僕は、自分の考えに間違いがなかったことに安堵する。
「よし、じゃあマーセル侯爵邸に乗り込むぞ」
「ちょっと!何をやったのよ!」
ヒステリックに叫ぶ女狐―――ライネが現れる。
例の場所はオールドたちに任せて、僕達はマーセル侯爵邸に乗り込んだ。
通された客室で待っていた僕達を睨みつけてくる女狐。
「何をやったとは・・・何のことだ?」
「とぼけんじゃないわよ、クソガキ!北部で起こった一連の出来事、私の耳にも入っているわよ!」
そうかそうか、化粧を忘れて来るほど驚いたということか。
ご苦労ご苦労。
「まあ、あそこのことはいいじゃないか。スラム街で少し荒れていた、だから綺麗にしたんだ。ありがたいと思ってもらいたいね」
「・・・いい加減にしなさいよ!ここはあんたの場所では無いのよ!」
キーキー叫ぶな。雌猿にでも名前を変えようか?
「これを見てから文句を言いな」
僕はテラから受け取ったとある書類を女狐に突きつける。
意味がわからず手に取った女狐だが、すぐに顔を真っ青にする。
「し、知らないわよ!こ、こんなのでっち上げよ!」
大体悪いことをやってる奴はそうやって否定をする。
「お前たちと精霊術士が裏で取引をしていた証拠だ」
「せ、精霊術士!?そ、そんなのおとぎ話の話じゃない!」
「確かに精霊術士とはお前は取引をしていない。実際には精霊術士と繋がっている奴、又は魔法師に化けた精霊術士と取引をしたんだよ」
ポカーンとする女狐を見るに、精霊術士のことは知らないんだろう。
「正直に言え。取引はしただろ?」
「・・・・・・ええ、したわよ!私の父が元々していたからね!」
ほら、予想通り。にしても、あっさり白状したな。
色々と疑問に思っていたことが多くあった。
どうしてマーセルに隠れているのか?どうしてマーセル侯爵家は当主が若いのか?どうして精霊術士が多くいるのか?
その他にも小さな疑問がいっぱいあった。
それらの疑問は、マーセル家が裏で何かしら動いているということで片付けられる。
「お前の父親―――前当主は病死だと言われているな?実際はどうなんだ?」
「・・・行方不明よ」
「行方不明?いつからだ?」
「二年前からよ。その頃から怪しい組織と裏で取引をしていたのよ。その組織と行方不明が関係があるかもしれないと思ったから、私もその組織と接触したの」
その組織の中に精霊術士たちがいたとは知らなかったのか。
「今回の盗まれた書物の件。関わっているだろ?」
「・・・ええ、少しね」
そう簡単に帝国の重要書物を盗めるはずがない。
誰かが手引きしたとしか考えられない。
「報酬は父親の居場所か?」
「・・・・・・弟の安全の保証よ」
弟まで人質に取られているのか。
色々と分かってきたが・・・少し何かが引っかかるな。
「お前たち一家は脅されて精霊術士―――怪しい奴らを匿っていたのか」
「ええ、そうよ」
さて、証言は取れたな。




