第250話 計画③
大きな爆音を聞いた僕達は、すぐさま支度をした。
支度を終えた頃、見張りをしていたテラが報告をしに帰って来る。
「何処らへんだ?」
「北西の方角からニャ」
僕達は急いで馬に乗って、音の方へと向かう。
すでに敵は罠だと気付いて、逃げようとするはず。
「オールド!」
「ええ、分かっていますとも!」
オールドは大きく頷くと、馬から勢いよく飛び起きる。
そして地面に着地すると、まずは口笛を吹いた。
その特殊な口笛を聞けるのは、オールドの部下たちだけ。
ブルボン家の護衛しか知らないため、意味はほとんどの人には分からない。
街に潜ませていた護衛たちが笛に反応して、おそらく次の行動を動く。
オールドを中心に、街の北側を閉鎖するように特殊なシールドを貼る。
これはあまり知られていないレアな魔法で、敵対心を持つ奴らを閉じ込めるもの。
それ以外の人達はすり抜けることができる優れモノだ。
こちらに敵対心を抱いているはずの精霊術士達は閉じ込めて、一般人は逃がしてやる。
「ルイ兄様!一人こちらに襲いかかってきます」
どうやらアルスの探知に引っかかったようだ。
アルスの探知は【サーチ】をよりも強化されたもので、よりはっきりと相手を認識できる。
これはあいつの生まれ持ったものだ。
「レーナとアルスはそのまま進め!テラは始末をしろ!」
「「「分かりました(ニャ)!」」」
全員が散らばると、僕一人だけになる。
馬に乗りながら路地裏へと入って、僕は西へと行く。
ちょうどそこには高台があり、街を一望できる。
そこに登って上から街を見下ろす。
「うむうむ、シールドはしっかりと展開できているな」
北部をぐるっと覆う大きな水色の檻に、僕は感心する。
さて、一般人たちはと言うと・・・こちらも避難をほとんどが完了している。
元々北部にはあまり人がいないので、そこまでは時間をかけれていない。
「お!あそこにいるぞ!」
どうやら僕のことがバレたらしい。
と、言うよりも僕のところへと奴らを集めている。
アルスたちや他の手下どもを北東から追い込み漁のように、精霊術士を西へと逃させている。
僕のいるこの高台は、ギリギリシールドの中。
つまり、彼らは追い詰められている。
一人、二人、三人と続々と集まってくる。
大漁、大漁!
二人がいきなり襲いかかってきたので、僕はひらりと交わす。
すると突然後ろから別のやつが奇襲を仕掛けてくる。
それを【ワープ】で逃げる。
全員が見たことのない魔法に驚いている隙に、弱そうな奴を襲う。
僕に襲われた奴は精霊術を発動させようとするが、こちらのほうが一歩早い。
なすすべなく僕に斬られた。
精霊術士相手は、発動させる前に倒すのが一番良い。
どんな精霊術があるかも分からないからな。
これは魔法師相手にも仕える。
今度は屈強そうな男が一人で襲いかかってくる。
どうやら身体強化系の精霊―――いや、魔法だ。
魔法を極めているから分かるけど、明らかに魔法を発動させている。
つまり、魔法師と組んでいるということなのか?
まあ、そんなことは後ででいい。
振り下ろしてきた剣を受け流すと、腹に蹴りを入れて仰け反らせる。
体勢を整えようとするが、そうはさせまいと【ワープ】で背後へと移動する。
いなくなった僕を目視すること無く、男は僕に斬られる。
流石に仲間が瞬殺させたため、間合いをとって様子を伺ってくる。
こうしている間にも、僕を囲む人数は増えている。
「ルイ兄様!」
と、ちょうど遠くの方からアルスの合図の声が聞こえた。
僕は瞬時に上へ飛び上がると、詠唱を唱える。
「神よ神よ雷神よ、その怒りを降ろせ、【ゼウスフォール】!!!」
短縮させた神級魔法を詠唱する。
最近覚えたばかりで、まだ無詠唱まではいかない。
この世界に存在する魔法中で最高峰の一つである神級魔法の威力がどれぐらいか?
僕はまだ人には試したこと無いからな。
今がちょうど良い機会だ!
周囲からなくなるまで魔力を体に取り込む。
空は暗く染まり、金色に光る魔法陣がどんどんと展開されていく。
誰もが唖然と上空を見ていると、突然雷鳴がする。
そして次の瞬間、大量の雷が降り注ぐ。
目を開けているのが辛くなるほど降り注いだ雷。
マーセルの北西部一帯が更地となってしまった。




