第248話 計画
さて、尋問した五人のうち、喋ることのできない四人を解放した。
喋れるやつはまだ拘束しておいて、裏にいる奴らの反応を見ることにした。
そう、全ては作戦だ。
唯一喋れるやつは、きっと五人の中のリーダーのはず。
そいつが帰らないとなると、帰ってきた四人を疑うだろう。
寝返ったのか、何かあったのか?
そうすれば、自ずと尻尾を出してくれるだろう。
相手の疑心暗鬼を逆手に取る作戦だ。
「ルイ兄様、しかしこの作戦は本当に上手く行くのですか?」
アルスがいらぬことを言ってくる。
「何か問題でも?」
「もしかしますと、警戒して逆に姿を現さないかもしれません」
なるほど、確かにそれも考えられるだろう。
「だが問題ない。僕には最終兵器がある」
全員が首を傾げる。
確実に鼠を見つける、最高の手が。
「ルイ様、絶対に危ないことはやめてくださいよ」
オールドに注意されるが無視する。
「さて、罠の設置は終わった。次はあれに移ろうじゃないか」
「・・・ルイ兄様、お願いですからことを大きくするのはやめてくださいよ」
「アルスもオールドに似てきたな。心配するな、いつもの僕だ」
「「「そのいつもの行動をやめてください!!!」」」
アルスとレーナ、オールドの叫びがハモる。
「僕はブルボン家の嫡男だ。好きなように行動して、好きなようにやらせてもらう」
それが特権だ。
その日の夜、僕はとある邸宅に向かった。
マーセルの街の中で五番目に大きな建物の一つだ。
すでに行くことを連絡していたため、馬車で向かうと出迎えが待っていた。
使用人に連れられて僕とアルス、オールドの三人が中へと入れられる。
豪華な玄関を抜けて奥へと進むと、広間に通される。
その真ん中には大きなテーブルが用意されており、すでに三人の男が座っていた。
全員が高そうな服を着ていて、きらびやかな指輪をはめている。
僕の姿を見ると、同時に立ち上がって頭を下げる。
「「「お越しいただきありがとうございます、ルイ・デ・ブルボン様」」」
そして僕から見て右から順に挨拶をしてくる。
「マーセル五大商会、衣類を販売しておりますサラの代表のスレインと申します」
「同じく五大商会、宝石を販売しておりますリファーニの代表のアルカと申します」
「同じく五大商会、物流を事業にしておりますティー・エイチの代表のトルツと申します」
自己紹介をして、三人はもう一度頭を下げた。
そう、彼らはこのマーセルを支配する五大商会のうちの三つの商会の代表。
どの商会も一度は聞いたことのあるような有名どころだ。
「うむ、ルイ・デ・ブルボンだ」
僕は軽く挨拶をして彼らの正面に座る。
僕が座ったのを見て、三人も席につく。
すぐに出された料理を少し食べた後、いきなり本題に切り込むことにした。
「それで、連絡した通りだ。僕達の傘下に入らないか?」
僕の言葉に、三人は押し黙る。
目を泳がせているが、頭の中では”利”を色々と考えているのだと分かる。
少しちょっかいをかけたくなって、更に追い打ちをかける。
「そうだな、最初に付いてくれた所には高待遇をしてやるぞ」
その言葉に大人三人が汗を流しながら必死に考え込む。
僕が彼らを呼んだのは、ブルボン家へのお誘いについてだ。
あの女狐に脅されたことに腹が煮えかえるような怒りが込み上げていた。
だが、あそこで権力を振りかざしてもどうせああいう奴はすぐにチクろうとする。
だから、まずは裏から崩しておこうと思ったのだ。
「お話は嬉しいのですが、どのようなことを我々に提供していただけるのですか?」
商人というやつは、本当にがめついな。
「お前らが僕と対等だと?フッ、ただの地方商会風情がブルボン家と同じだと思うな」
そもそも、ブルボン家にはブルボン大商会が存在する。
こいつらと比べたら規模など段違いであり、僕が作ったルイHDを合わせたら一瞬で踏み潰せるレベルである。
「そ、そうですが、我々としましてもそう簡単に傘下に付くわけにはいかないのですよ」
全く、ブルボン家の庇護に入れるだけでありがたいと思えばいいのに・・・
まあ、ここまでは想定どおりだけど。
「なあ、ルイHDを知っているか?」
「え、ええ。確か、ルイ様がお作りになられた持株会社と呼ばれる新しい商会ですよね」
最近はより色々な商会を傘下に収めていて、そろそろブルボン大商会と肩を並べる日が近い。
「そこの傘下にならないか?」
「ですが、」
「最後まで話を聞け。こちらは経営に一切の手出しをしない、ただ名前をあげるだけだ」
「「「なるほど!!!」」」
名前―――ブランドは大きな影響力を持つ。
そこら辺の小さな会社の商品より、大手会社の商品のほうがよっぽど信用できる。
ブルボン家が背後にいれば、それだけ大きな影響力ともなる。
「どうだ、いい提案だとは思わないか?」
三人はすぐに答えを出さなかったので、時間の無駄だと思い、僕は帰ることにした。
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