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第245話 報酬

「報酬?何の話だ?」

「決まっているじゃないですか、今回来られた経緯を黙っておく代わりにですよ」

「・・・僕らはあくまで観光できたんだが」

「はいはい、そうですね。表向きだということも知っていますよ」


僕は睨みつけるが飄々とするライネ―――いや、女狐。


「すでにブルボン家当主様にはお伝えしております」

「・・・どうやって知った?」

「それはもちろん、商人の伝手ですよ」

「お前らの家は商人と関わっていないんじゃなかったのか?」

「表向きはそうですよ。裏ではがっちり繋がっております」


まるで前世の政府と企業みたいだな。


所詮、政治と経済は必ず繋がっている。


繋がらないと国がやっていけない。


「それを市民が聞いたら怒るだろうな」

「下民どもの言葉なんて価値はありません。彼らは私達の恩恵を受けているのです」


後ろからアルスの圧が伝わる。


アルスはブルボン家の一門とは言え、どちらかと言うと庶民よりだ。


「僕も大体同じ考えだ」


結局のところ、たとえ裏で繋がっていることを暴露しても少しの暴動にしか留まらない。


そんなのはこの世界や社会では痛くも痒くもない。


前世の世界なら少しは違ったかも知れないが。


「結局、庶民の中でも損をする奴と得をする奴に必ず分かれる。だから、どんな不祥事でも上に立つ者は生き残れるんだ」


貴族社会ならなおさらな。


「ルイ様、分かってるじゃないですか」

「上に立つために生まれたからな」


僕とライネは少し見つめ合う。


「それで、そっちはどんな要求を出したんだ」

「うちの弟とそちらの妹との婚約で―――」


ドガァァァーーーーンン


「!!!」

「気にするな、続けてくれ」


書斎の机と窓を吹き飛ばしてしまったが、怒りを抑えることはできた。(?)


「ちょ、気にするなじゃ―――」

「早く続けてくれる?」


僕はにっこりと言う。


「・・・まあ、その願いは叶うと思ってはいないわ」

「当然だろ、僕の可愛い可愛い妹をこんなド辺鄙で金にしか目のない蛆虫共がいる場所を支配するたかだか地方侯爵でしか無く全く釣り合わなく婚礼期を過ぎているような姉を持つ留学しているとはいえブルボン家が来てやったにもかかわらず顔出ししないような当主のいるコソコソと裏でしか動けない―――」

「ルイ兄様!」


アルスが呼びかけてきて、人差し指を口に当てる。


どうやらもう一度言ったほうがいいらしい。


「婚礼期を過ぎた姉を持つ―――」

「ルイ兄様!もう一度という意味ではありません!というか、その部分だけ言うということは絶対わざとですよね!」


なるほど、これ以上言うなという意味だったのか。


僕としたことが、うっかりと勘違いをしてしまった♪


「それで、代替え案とは何だ?」

「・・・いつか覚えときなさいよ」


顔を赤くして憎しみを込めた目で僕を睨みつけてくる。


目がつり上がっていて、狐の耳をつければ本当に女狐になるな。


「早く言え」

「貴方達が所有する金山の一部の譲渡よ」

「???」


僕が首を傾げると、オールドが答えてくれる。


「ブルボン家の飛び地とマーセル家の領地が一部接しているのです。その接している近くの山に、ブルボン家は金山を保有しております」


なるほど、そこを欲していると言うわけか。


「父上はなんて言っている?」

「検討していると」


僕は少し考え込む。


「報酬諸々の話は後にしてくれるか?」

「ええ、それはもちろん。でも、なるべく早くしてください。うっかり皇室に口を滑らすかも知れません」


バレてしまったら咎められ、ブルボン家へ皇室が付け入る隙を与えてしまう。


そうならないように上手く立ち回らなければ。




話を終えた僕たちはとりあえず夕食を食べ、その後はアルスとレーナを部屋に呼び寄せて今回のことについて話し合いをすることにした。


「ルイ様はどうお考えなのですか?」


レーナが聞いてくる。


僕的には侯爵家ごときに屈したくはない。


かと言って、向こうに弱みを握られたのは確かだ。


父を責めたい気持ちはあるが、館長から相談をされた時点で乗らざるをえなかっただろう。


もし乗らなかったら、後々何かを言われてしまうからな。


「さて、どうしようか」


今までは弱みなんて握られたことはなかったから思い通りに動けたが、今回は難しい。


かと言って、言う通りにするのも癪に障る。


・・・いや、僕は強者だ。


弱者のように媚びへつらうなんてやりたくない。


強者は強者らしい戦い方をしようじゃないか。


「よし、方針は決まった」

「どうするのですか?」

「この街を乗っ取ってやる」

「「???」」


僕はニヤリと笑みを浮かべて作戦を伝えた。


それを聞いた二人は少し驚いたが、すぐに頷いた。



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