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第243話 依頼

帰国編3章開始!



体育祭が終わって10日後、夏休みが始まった。


恒例の妹アンナへのお土産を買って、久しぶりに実家へと帰省した。


相変わらず街も屋敷も変わっておらず、いつものブルボン領だった。


去年は留学していて帰省できず、一昨年は色々と調べごとで忙しかった。


今年こそ帝国の各地を旅行して夏休みを満喫するぞ!と意気込んでいたが・・・・帰ってきてすぐに父に書斎へ呼ばれた。


嫌な感じがしたから逃げ出そうとしたが、オールドに捕まって無理やり連れて行かれた。




「・・・久しぶりの帰省なんだから、ゆっくりさせてくださいよ!」

「入ってきていきなりその言葉か。ただいまぐらいは言ってくれると嬉しいんだが」

「はいはい、ただいま帰りました!じゃあ失礼しま―――」


頭を下げて部屋を出ようとするが、オールドに引き止められる。


「ルイ、座れ。オールドは少し部屋を出ていてくれ」

「承知しました」


オールドは深々と頭を下げて部屋を出る。


珍しく父と二人っきりになる。


「どうだ、学校は楽しいか」

「ぼちぼちですよ。そんな前置きはいいですから、本題を話してください」


こちとらアンナに早く会いたいんだ!


「ハハハ、相変わらず治っていないな」


父は軽く笑う。


「それで、用は何ですか?」

「体育祭の時に、アルスを通じて手紙を送っただろ?」

「ええ、覚えております。確か、帝立博物館に保管されていたとある資料が盗まれたという事件のことでしたよね」


父が頷く。


これを読んだ時から嫌な予感はしていた。


ただ僕とは特に関係ないし、そこまで大きな事件には見えない。


「この事件がどうしたのですか?」

「お前に見つけてきて欲しいんだ」

「はぁ???」


そんな雑務をなんで僕がやらなければならないんだ?


「一から話そう。その盗まれた資料というのが国の一級国宝に指定されている」


一級国宝は、限られた人しか見ることができない特別な遺産のことだ。


「一冊の本らしいが、どうやら初代皇帝陛下の日記だと言われている」

「父上も見たことはないんですか」

「ああ、そもそも存在すら知らなかった」


皇族や権威ある歴史家しか中身は見れない物だからかな?


「あの体育祭の一週間前に盗まれたらしく、必死に探しても見つからなかったらしい。だから博物館館長が秘密裏にブルボン家に依頼してきた」

「皇族には知られたくないと」

「たぶんな。それで、そこに記されている内容を聞いたんだが答えてくれなかった。何か怪しいと思って本の捜索と並行して内容について調べてみた」

「どうだったのですか?」

「精霊術と大きく関係があるかもしれないないんだ」


!!!!なるほど、確かに父は内容を知れないな。


初代皇帝は精霊術と関係が深い可能性は確かにあるかも。


関係があるか分からないが、一昨年調べていた時に精霊術によって滅びた可能性があるマジルレイ王国が頭に浮かんだ。


帝国が生まれる少し前に突如として消えた王国。


滅ぼしたのは精霊術士、と考察している。


となると、初代皇帝が関わりがあってもおかしくもないかも。


「それで、捜索はどうなったんですか?」

「盗んだ奴がいる場所は特定できた。だが、そこで捜索隊との連絡が途切れた」

「連絡が途切れた?」

「正確に言えば、一人だけ帰ってきた。腹に傷を負っていて、帰ってきて2日後に亡くなった。その隊員が言うには、見たことのない魔法にやられたと」


・・・精霊術か。


「盗んだのが精霊術士なら、厄介だ。何しろ戦闘経験がない。そこで、お前に頼みたいということだ」

「いや、なんで僕なんですか?」


そんなのアルスとレーナで十分では?


「もちろん、オールドやアルス、レーナ、テラには行ってもらう。すでに了承してくれている」

「なら、僕が行く意味がありません。配下に全てを任せますんで、僕はのんびりと観光でも―――」

「魔法協会が裏で動いている」


その言葉に言葉を止める。


「何故魔法協会が?」

「館長が業を煮やして、あっちにもお願いしたらしい」


魔法協会がそう簡単に動くわけがない。


つまり、精霊術と関係があると睨んでいるのでは?


「まあでも、アルス達が先に見つければ問題ありません。あんな腐った組織よりは優秀ではありますよ」

「ルイがアルス達を褒めるとは、珍しいな」

「まだマシだと思っているだけです」


僕のほうが百倍も優秀だからな!


「では、これで―――」

「待て、やはり不安は拭いきれない。だからお前も行ってくれ」

「嫌です、僕が何しようが父上にとやかく言われたくはないです」

「はぁ〜〜〜、やっぱりお前は親泣かせの子だな」


いつ泣かせたと言うんだ?


「自覚は無いのかよ!」


僕の心の声にツッコミ入れられる。


「分かった、報酬を出そう」

「報酬ですか?そう簡単に僕が靡くと―――」

「まず、バレずに本の内容を見ることを許可する。そして全てが終わったら、全員で家族旅行をしよう。そうだな、海にでも行くか。もちろんアンナも一緒にだ」

「父上、何処に行けばよろしいでしょうか?」

「・・・・相変わらず変わり身の早いやつだな」


だってアンナの水着姿だぞ!泳いでいる姿だぞ!遊んでいる姿だぞ!


天使により磨きがかかるんだ!絶対に行かなければならない!


「アンナのことになると、お前は・・・」

「それで、何処に行けばいいんですか?」

「マーセルっている南の大きな商業都市だ」



マーセル、その名前に僕は聞き覚えがある。


何しろ、あの小説において主人公リリスが師匠と共に過ごした街だからだ。




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