第241話 最後に・・・
「さて、総合優勝は・・・・三年S組です!!!!!」
その言葉に盛り上がるクラスメートたちを後ろから眺める僕の横では、悔しそうにハンカチを噛む叔母がいた。
「簡単な賭けでしたね」
「チェッ、可愛げのない甥っ子だわね。まあ、貴方の勝ちは認めるわ」
「どんな秘策があるのかと思ったけど、何も無かったですね!ハハハハ!」
僕が高らかに笑うと、もう一度大きく舌打ちをする。
「本当はね、一日だけでいいから貴方達の護衛であるオールドを編入させようと思ったのよ」
「・・・・・・はあ?!?!?」
この人は何を言っているのだ?
オールドは四十過ぎのおっさんだぞ。入れるわけ無いだろ!
「私の持っている色々な権限と家の力を使えばギリ、編入させれなくもないの」
「・・・その方法はぜひ知りたいですね」
「嫌よ」
このアマ!
「とりあえず、オールドを送り込もうと思ったの。でも流石にお兄様に止められたわ。オールドにも断られたし」
確かにやばかったかもな。
オールドが参加していれば、間違いなくあいつが一位だった。
何しろ、あいつは帝国最強の騎士だからな。
「はぁあ。賭けに負けちゃったわ」
「そうですね、貴方の負けです!」
俺は参加できなかったけど、意外にも楽しい2日間だったな。
それでだ。
僕は盛り上がっているクラスの奴らの中から、一人を呼び出した。
そいつは僕を見るとすぐにムスッとしたが、暴れること無くクラスの輪から出る。
「・・・ぷっ、まさか負けるなんてな!」
僕の言葉に頬を膨らませてそっぽを向くテラ。
やれやれと言った感じでアルスは、僕にこれ以上笑わないように言ってくる。
「奴隷が無様にも負けたんだ!これは笑ってあげないと可哀想だろ!」
「ルイ兄様、テラもよくやりましたよ」
ふ〜〜ん、お前はテラを庇うか。
敗者を庇うとは、アルスも落ちたな。
「まあ、煽るのはここら辺にしてやろう。アルスに免じて許してやる。次は、リリスなんかに負けないようにしろよ」
「わ、分かっているニャ!」
ぶっきらぼうに言ってまたそっぽを向く。
「さて、じゃあ帰ると―――」
「「待ってください!」」
もうやることもないし、さっさと帰ろうとした僕は背後から呼び止められる。
後ろを振り返ると、見覚えのある二人がいた。
「え〜って、確か・・・」
「スタールです」
「ラルクです」
「そうそう、敗者の二人だ!」
僕を呼び止めたのは、マリーに負けたスタールとリリスに準決勝で負けたラルクだった。
「ははは、その覚え方で構わないよ」
「それで、僕に一体どういう要件ですか?」
隣りにいたアルスとテラ、それにいつの間にかいたレーナも警戒する。
「そんなに警戒しなくて大丈夫です」
「ただ俺らは、ルイ君との手合わせをと思って」
その言葉に僕は目を輝かせた。
ここまで溜まっていた、誰かと戦いたいという感情が込み上げてくる。
そうかそうか、中々分かっているじゃないか。
「絶対にやめてください!」
僕の高ぶる気持ちを知っているにも関わらず、アルスは止めに入ってくる。
「アルス止めるな」
「アルス君、確かにルイ君は俺らよりも強い事は知ってる。でも、そんな相手だからこそぜひ手合わせをしたいんだ」
「自分たちの現在地が知りたい。だから、止めないでくれ」
うんうん、中々見どころのある奴らだ。
そんなに強くなりたい理由は分からないけど、その心意気は認めてやろう。
「じゃあ、早速やろうじゃないか」
「「お願いします」」
「二人いっぺんにかかってこい」
「ルイ兄様!本当にやめてください!」
うるさい奴だな。
あいつらの思いを踏みにじるのか?
まあ、ぎゃあぎゃあ言っているアルスは置いておこう。
僕は頭の中で巨大な水の流れをイメージした後、魔力を体へと取り込んでいく。
こちらへと走ってくる二人へ、僕は一言唱えた。
「【ウォールフェーブ】!」
「「・・・・え?!」」
高さ10メートルの魔法陣から、二人めがけて大量の水が襲いかかる。
迫りくる大量の水に手も足も出ずに飲み込まれる二人。
帝級(上から二番目)魔法が彼らを襲い、一瞬で倒してしまった。
「あれ、おかしいな」
まだまだ肩慣らしだと言うのに。
気絶する二人、唖然とするテラ、呆れるアルスとレーナ。
まあ、ある程度スッキリしたし良しとしよう!




