第233話 思い
『異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜』を連載を始めて一年経ちました!ありがとうございます!
これから活動については近況ノートに書いたので、ぜひ読んでみてください!
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リレー終了後。
僕はクラスメートが集まる輪へと向かって行く。
「ふん、まあ誰かさんの失敗はあったが見事に一位になったわけだ。褒めて遣わそうではないか」
「お前は相変わらず偉そうだな。全員で勝てたんだ!誰かを責めることをするべきじゃない!」
なんか正義感出して歯向かってくるアレックスを無視して、リリスに何度も頭を下げる一人の女子生徒を睨みつける。
するとこちらの視線に気付いてか、顔が真っ青になるが、すぐにリリスが割って入ってきた。
「ルイくん。これ以上彼女を責めるのはやめて」
「どうしてだ?そいつのせいで負けるところだったぞ」
途中まで一位だった順位は、一人の生徒が転んだことによって大きく順位を落としてしまった。
それでもリリスとテラの終盤での活躍もあって、結果的にはリレーは一位でフィニッシュ。
だが、結果だけが重要じゃない。
失敗は責めるべき・・・・俺がこれまでされて来たように。
「ごめんなさい・・・」
「ルイくんはどうしてそこまで人を侮蔑するの。失敗は誰にだってあるし、今回のことも彼女のせいだけじゃない。この体育祭において大事なのはチームワークじゃない。だから私が挽回した」
「ルイ、お前は今回走っていない。リリスは走って挽回した。どちらの言葉の方が支持されるか言わなくてもわかるだろ?」
アレックスが睨みつけてくる。
何人かの奴らも僕の方をじーっと見つめてきて、どうしてだか居心地が悪い。
「ふ、ふん。弱者はそう言ってろ、明日もしっかり勝てよ、じゃあ、」
僕はそう捨て台詞を吐いてその場を後にした。
「ルイ兄様、どうされたのですか?らしくないですよ」
「確かにそうね。アルスの言うとおり、ルイ様ならもう少し冷静に返せたんじゃない?」
後ろから付いてくるアルスとレーナの言葉が耳障りでしょうがない。
だが、その通りである。
自分らしくないのは分かっている。
だが、どうしてだかあの女子生徒の失敗を見てからずっと、心がチクリとする。
何でかは分かりきっている。
自分の昔と重なって見えたから。
大事なところでいつも失敗して、気付いたら後ろの奴らに抜かされる。
そして自分が下に見ていた奴に手助けされる。
前世で何度も経験したことだ。
今世では無かったはずなのに・・・どうしてだか重ねてしまった。
弱く情けなく見搾らしかった自分に。
『あんたは血筋を残すぐらいしか役に立たないわ』
母から言われた呪いの言葉がまた、頭に響いてくる。
でも、あの時とは違う。
僕は強い力を手に入れた。
努力もある程度はした。
家柄、血筋という力も持っている。
だから強くあれる。前へと進める。
あんなことで変に昔のことを思い出していても仕方がない。
僕は何度も大きく首を振った後、思いっきり両頬を叩いた。
変な邪念を振り払うために。
今一番大事なのは、領主になるための権利を手に入れること。
「僕のことは気にするな。それよりも、明日の武闘大会について説明してくれ」
「・・・分かりました。明日の武闘大会は予選、本戦がそれぞれ行われます。予選は午前中にグループごとで別の運動場で行われます」
「それで?」
「本戦に出れるのは16名まで。予選には各クラスから二人の代表を出すことができます」
結構スケジュールがキツめだな。
「ルールは?」
「魔法と剣、何を使ってもいいです。勝敗は片方の気絶又は降参」
「ふむふむ」
「ただ予選には十分という時間制限があって、それを超えるとドローとなります」
「どうなるとどうなるんだ?」
「勝ちは3点、負けは0点、引き分けは1点貰えます」
「なるほど、総当たり戦か。それで、誰が出るんだ?」
まあ流石にアルスとレーナだろうと思ったが、
「いいえ、この競技にも自分たちは出場できません」
「はぁ!?」
おいおいマジかよ、終わったじゃねえか。
「一応聞くが、誰が出るんだ?」
「リリスとテラです」
僕が驚いて後ろから付いてくるテラを振り返ると、
「何ニャ!文句あるのかニャ!」
と髪を逆立てる。
「いいや、意外だと思ってな。てっきりアレックス殿下が出場するのかと」
「アレックス殿下は他の競技に多く出場しているため、出場権が無いんです」
「???」
「この体育祭では一人二種目まで出ることができ、最低でも一回は出場しなければならない。あ、全員リレーは除きますよ。それで、アレックス殿下はすでに二回出ています。一方でリリスとテラはまだ一種目しか出ていない」
「そういうことを同じ様に他クラスがやれば、自然と出場者は猛者たちなのではないのか?」
「その通りです」
・・・つまり今まではそれなりに強いやつがいなかったから勝てていたのか。
僕はじーっとテラを見てから一言言う。
「絶対勝てよ。負けたら明日から猫小屋生活だから」
「ニャ!ひどい仕打ちニャ!」
「主人の言うことは絶対だ!」
「絶対覚えておけニャ!」
そんな二人の言い合いを見て、(いつも通りに戻った)と感じたアルスとレーナだった。




