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第231話 ルイ

「僕を抜いた全員が走らなければならない。そのためにも、走る順番はしっかりと決めなければならない」

「・・・・・・」

「アルス、勝てる策で組み立ててくれ。そうだな、例えば足の遅い奴を速い奴の間に入れたりするのはいいと思うぞ」

「・・・・・・」

「確か、リレーは魔法が禁止だったな。だから、これは個人の身体能力が鍵。全員が全力で走らなければ勝つことができない!」


僕の名演説も、ほとんどが豆鉄砲を食らったように驚いてこちらを見つめてくる。


「・・・ルイ兄様。今更何を言っているのですか?」


アルスが呆れ顔でこちらを向いてくる。


「指揮官として、士気を上げているんだ。あ、ダジャレじゃ無いぞ」

「別に気にしていませんよ」


未だに呆れ顔のアルスを睨みつけていると、別のやつが口答えをしてきやがった。


「なあ、ルイ」

「ん?ああ、どうした、アレックス殿下?僕に何か文句か?」

「当たり前だろ!そもそもお前は、今回のリレーの練習に参加したことがあったか!」


練習に参加?


確かに無いが、それはアルスに騙されていたんだ!


「お前がサボっている間にも、俺達は毎日練習をしていた!」


クラスメイトのほとんどが頷く。


「アルスもしっかりと個々の実力を見ながら綿密に順番を考えてくれた。時に議論しあい、時に一からやり直したり。どれだけ大変だったか分かっているのか!」


ぐっ、確かにこいつらが何か議論していたのは知っているが、元々参加する気が無かったからずっと無関心だった。


「別にお前はクラス代表だからある程度偉ぶっているのはいい。でも、他人に任せっきりで手柄を奪うようなことは許さないぞ!俺達は団結してきたのに、お前のようなやつにこの競技を仕切らせてたまるか!」


アレックスがそう言うと、味方は大勢いると言わんばかりに取り巻きのハンネスとフレッドが横に並ぶ。


アルスは大きく頷き、レーナは顔を背けて肩を震わせ、テラは顔を綻ばせ、ナータリは困ったような表情を浮かべる。


「ルイ兄様。それでは続きを話してよいでしょうか?」


アルスのニヤけづらがうざい。


だが、確かにアレックスの言葉には正論も含まれている。


独り占めは良くない。人の手柄を盗むなんて以ての外だ。


僕は奴の言葉で気付かされた。


どれだけ周りが大切であるかと。


僕のするべきことはただ一つ。


「よし、殿下の言葉はよく理解した!そこまで言われたら仕方がない。今回の優勝することができたら、帝都の中央広場の掲示板に優勝者一覧としてクラス全員の名前を載せてやる!」


「「「!?!?!?!」」」


何故そこまで驚くのか?あ、そうか、一番大事なことを言い忘れていた。


「優勝した暁には、お前らに金貨一枚(二十〜三十万)を褒美として出してやる。そうだな、功労者にはプラスで一枚やるぞ!」


どうだ!僕がどれだけ慈悲深く太っ腹であるか理解できただろ!


ありがたく思い給え!


アレックスの言葉は、僕に手柄を取られたくない=名声が欲しい=褒美をくれ!という解釈でいいはずだ。


さすがのアルスも僕の慈悲深さに唖然としてるな!


「・・・ルイ兄様。申し訳ありません、自分はルイ兄様を見誤っていました」


お、珍しくアルスが素直だな!


「まさかそのような解釈をするだなんて。常人には理解できない思考です」


ん?これは褒めていると捉えていいんだよね?


「ルイ・・・君はそれを本気で言っているのか?」

「ああ、本気だとも。ブルボン家の名において嘘はつかん!しっかりと報酬は弾むぞ!」

「いや、そういうことではないんだが・・・」


どうしたんだ、アレックス?もっと金が欲しいのか?


強情な奴め。


「お前は勘違い―――」


アレックスは何かを言おうとクラスメートへと振り返った瞬間、彼らの目を見て固まる。


リリスとナータリ、配下二人以外のグラスメート全員が目の色を変えている。


中には僕に羨望と尊敬の眼差しを向けてきたり、「ルイ様ルイ様・・・」と連呼するものまでいた。


特に女子は凄まじく、何やら指を折り曲げて何を買おうか考えているやつが多数を占めている。


そう、彼らは金に釣られたのだ。


やはりこの作戦は上手く行く。


ただ名誉だけを求めていては士気は上がらない。


肝心なのは人参をぶら下げること。


結局人を強くさせるのは、各々の欲。


誰だって目に見える何かが手に入るとなると、やる気は出てくるのだ。


「もう一度言う。嘘はつかない。全員に金貨一枚!更に名誉として帝都全員から注目されるようにしてやる!どうだ、やる気になっただろう!」


「「「おおおおお!!!!」」」


拳を高々と上げながら、雄叫びを上げる。


ほとんどの奴らの目は金色に変わり、周囲から見ると異様な集団に思える。


「ルイ兄様は賢いんだか馬鹿なんだか・・・」

「アルス、不敬だぞ!ルイ様になんて言い草だ!」

「そこまで言うんだったら、金を出せ金を!」


僕がなにか言うまでもなく、周りの奴らがアルスに詰め寄る。


結局みんな欲には勝てない。そして金という一番の人参に誰もが食いつく。


これで強力な手下共を作ることができた。


「さあ、アルス。改めて作戦を教えてくれ」

「・・・分かりました。一回しか言わないのでよく聞いてくださいよ」


それから十分ほどの説明を受けていると、遂にその時がやってきた。


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