表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
230/256

第230話 初日

他の会場で行われた結果も合わせて、午前の部は全体で2位。


1位ともそれほど大差無く、初日の前半を終わらせられた。


ただ、午後の部のほうがクラス対抗が多く、得点も高いから油断ならない。


さて、まず一発目に行われるのが、魔縄引き。


綱引きに似た競技だが、名前の通り縄に魔力が込められている。


これは一定の魔力を注ぎ込みながら引っ張らないと持つことが出来ない縄であり、代表者それぞれ十人で行われる。


この競技の難しいところは、やはり一定の魔力を注ぎ込みながら、縄を思いっ切り引くこと。


力みすぎると魔力の流れが乱れて、かと言って注ぎ込むのに集中しすぎると縄を上手く引くことが出来ない。


魔力を上手くコントロールするという授業の一環でもあるから選ばれた競技だ。


「アルス。この競技には誰が出るんだ?」

「私よ!!!」


僕の隣にいるアルスではなく、背後から聞き覚えのある声がして振り返る。


「・・・何だ、ナータリか」

「何よ!私じゃ駄目だっていうの!」


確かに仮にも魔法の名家の出身であるから魔力のコントロールには長けているだろうけど、力はあるのか?


代表者は十人とはいえ、一人でも機能しないと負けるおそれのある競技。


しかも点数もそれなりに高いから、本当にナータリに任せて良いのだろうか?


「ルイ兄様、心配は無用ですよ。ナータリはこの競技を得意としておりますから。そもそも、この競技のもう一つの暗黙のルールがあるのを知っていますか。・・・まあルールっていうほどでも無いですが、所謂裏技です」


???この競技の裏技???つまりずるか。


僕は何とか捻りだそうとするが、全く出てこない。


「試合を見れば分かりますよ」


答えを言わず、アルスはニコニコとする。


少しうざいが、答えが気になるので試合を真面目に見ることにした。



入場して位置に着いた僕らのクラスと敵の4年生のクラス。


相手は明らかに力のありそうな巨体を持つ生徒で構成されている。


こちらは女子四人と不安しか無く、若干苛立ちながら試合の行方を見守った。


始まり合図とともに全員が縄を触る。


次の瞬間、何人かの生徒が魔力を流すのに失敗して尻もちをついた。


だがそれでも4年生は半分以上が成功し、一方でこちらは三人しか縄を持っていない。


負けを確信した時、突然ナータリの魔力が膨張し始める。


大きくなった魔力は縄へと行くこと無く、自然に体へと巡っていく。


そのままナータリが力を入れて引っ張ると、体のでかいはずの男子たちがズルズルと引きずられてなすすべもなく僕らのクラスの勝利となった。


唖然とした表情を浮かべる4年生を前に、自信たっぷりに笑みを浮かべるナータリ姿はまさに女王。


「!!!そういうことか!身体強化魔法を使ったのか!」

「そういうことです。この競技では、そうすることでより力を出せるのです。ルールには魔法を使ってはダメなどとありませんし」


???だが、どうして4年生は使わなかったのか?


「使わなかったのではありません。使えなかったのです」


僕の心を読んでか、レーナが答えてくれる。


「そもそもですが、あの魔縄を触りながら他の魔法を使う。それ自体、難易度が高いのです」

「そうなのか?僕にその難しさが分からんが?」

「まあ、ルイ兄様ですから。そうですね、片手で皿回しをしながらもう片方の手で難解な問題を解くと思っていいです」

「???」

「つまりです、集中して行わないといけないことを一緒にやると言うことです。ルイ様は出来ますか?皿回しをしながら、紙に書かれた問題を解くということ」


出来ないことはないが、確かに難しそうだ。


皿回しは安定してないとすぐに落ちてしまうから集中しないと駄目。


だが難しい問題もまた、問題文を読んで答えを導き出すという難しさがある。


「なるほど、だからほとんどの人が出来ないと」

「ええ、基本的には腕力頼みとなります。ですが、ナータリは出来てしまうんで」


だから出場したと。


確かに己の力のみで頑張っている中で、身体魔法を使えばナータリぐらいだと百人と同程度の力で引っ張れる。


「何だ、この競技って面白くないな」

「片方にしか扱える人がいなかった時には一方的です。ですが、それぞれにいた場合は結構見ごたえがありますよ」


そんなもんなのかな?



その後もナータリは順調に勝ち進んだようで、見事に優勝したらしい。


僕は一試合目を見終わると、すぐに違う会場へ行って別の競技を見ることにした。


それは大玉ころがしのような競技だが、大玉に一定の攻撃を与えないと進まないようになっているこれまた不思議な競技。


みんなが攻撃を入れながら前へと進ませる。


曲がるときとかは横から攻撃したりと、意外にも面白かった。


この競技のリーダーとしてアレックスの取り巻きの一人、眼鏡をかけているハンネスが出場していた。


中々の統率力を発揮して勝ち進んだが、結果は4位。


その後に行われた障害物競争の決勝戦では、テラは優勝でフレッドが7位となって終わった。



そして初日最後の競技である、全クラスリレーが遂に始まる。


現在の順位は、クラスは1位。


だが、次のリレーの順位によっては5位まで転落する可能性もある混戦状態。


何としても勝たなければならない!そう意気込んで作戦会議を始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ