第229話 障害物競争
第二運動場に着くと、多くの観客で溢れかえっていた。
行き交う人々は、皆楽しそうに雑談をしながら席に座り、始まるまでの時間を待っていた。
「ここで行うのは、確か障害物競争だっけ?」
「ええ、そうです。毎年最初に行われる人気のある競技です」
僕は質問を続ける。
「なあ、アルス。どんな競技なんだ?」
「・・・聞いていなかったんですか?」
「少しは知っているぞ。確か、トラック四周のタイムを競うんだっけ?」
「はい、一周ごとに障害物が変化していくのがこの競技の何よりの特徴です」
僕はそれを聞いて首を傾げる。
「一周ごとにと言っても、どうやってだ?そんな魔法があるのか?」
「あるんですよ、そういうアイテムが」
「具体的にはどんな仕組みだ?」
「最後尾の人が通ったところを瞬時に変化をさせるのです」
「???だが、先頭を走っている人が、最後尾に追いつくなんてことはあるんじゃないのか?」
「それ対策として、障害物は2つのルートがあるんですよ。どちらかを通ればいいというルールで、難易度は変わらない。もし、先頭が最後尾に追いついたとしても、別のルートが選択された時点で、変化します」
「つまり、大丈夫だと」
「・・・まあ、そんな感じです」
詳しい仕組みは分からん。
大事なのは、そこら辺がしっかりとしていることだ。
もうそろそろ始まるということで、僕達は最前席へと座る。
目の前で準備が整えられる中、選手たちが入場する。
入場した選手たちには盛大な拍手が送られた。
選手数は、16人。各教室から1人〜2人が出場する。
8人ずつの2レースで行われ、その中で上位2人ずつが決勝へと行ける。
第一運動場でも同じ数が行われている。
それと合わせて、決勝でも8人で争われる。
さて、準備が整うと、早速出走者が位置に着く。
テラはどうやら第1レースからのようで、内側から三番目の位置にいる。
全員が位置に着くと、スターターの合図とともに出走する。
「なあ、今回はどんな作戦なんだ?」
「まあ、作戦というほどではないですが、なるべく内側を取るように指示しています」
このレースは身体強化魔法までなら使用してよく、魔法での妨害は禁止。
最初の障害物である、ボルダリングを全員が登り始める。
2つあるうちの、1つは直角になっているがホールド(ボコボコした物)の小さいコース。
もう片方はホールドは大きいが、若干斜めになっているコース。
どちらも難しそうだが、全員が1つ目の方に殺到する。
「やっぱり直角のほうが簡単なのか」
「ええ、経験すれば分かりますよ」
テラは先頭を走り、1つ目の壁を難なく越えると、2つ目の壁もササッと登る。
流石猫なだけはある。
さて、2周目に入ったテラを待ち受けていたのは、長い長い水平棒。
1つ目は真っ直ぐだが、幅5センチほどしか無い道。
もう1つは、幅は広いがジグザグとした道。
だがこの2つのコースの最大の特徴は、高さ5メートル場所にあって下には水が引かれていること。
「このコースは落ちてしまうと最初からやり直しになるのです。更に、中間地点を過ぎた場所からは、前の人を押すことも許されます」
中々のルールだ。
テラを見ると、若干青ざめているのが分かる。
どうしてかを考えてみると、理由が分かった。
「あいつ、水が苦手なのか?」
「・・・ええ、そうです。テラにとってこの競技の最大の難所です」
獣人のはずだが、猫である部分も持っているのか。
めんどくさいやつだな。
テラが一歩を踏み出すのに手間取っている間に、他の奴らが抜いていく。
テラは1つ目の方に並んでいるが、足がすくんで動けていない。
僕がイライラしていると、アルスが立ち上がって大声で声をかけた。
「テラ!恐れることはないよ!」
その言葉を聞いたからのか、遂にテラが一歩踏み出した。
かと思うと、そのまま強く踏み込んで高く飛び上がる。
そのまま対岸まで一飛びで着く。
「おいおい、対岸まで二百メートルはあるぞ!」
「テラが本気で身体強化を使ったからですよ」
だとしてもおかしすぎる。
まあ、そのことを今考えるのはやめよ。
3周目に3番目で入ったテラは、そのまま一人を抜き去って4周目に入る。
4周目は、走ると魔法が襲ってくるコース。
1つ目は火、2つ目は水となっている。
1位を走っていた4年生はテラの習性を理解してあえて1つ目を選んでいたが、逆効果だった。
水に絶対に触れたくないからか、目にも留まらぬ速さで避けていき1位でゴールをする。
逆に火を選んでいた4年生は思った以上に苦戦して3位まで順位を落とした。
ちなみに、、第2レースはアレックスの取り巻きの一人、フレッドが走った。
結果は2位で、これでSクラスからは2人の決勝進出者を出すことが出来た。
さあ、このまま勝ってくれよ!配下共!
また少し忙しくなってきたので、今年はできれば後1話投稿します。時間があれば、2話投稿するかもしれません




