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第227話 叔母

青く光る髪を後ろで結ぶドレスを着た貴婦人。


どこか見覚えがある気がするが・・・・


「あの方は、ルイ兄様の叔母であるレイナ・ロシュフォールです。前当主様の次女で父様の妹にあたります」

「ロシュフォール?確か侯爵だった気がするが・・・」

「その通りです。帝国政治において、財務大臣を多数排出している名家の一族です」


なるほど、僕の叔母か。どうりで父に少し似ているわけだ。


それにしても、ロシュフォールに嫁いだというのか。


「だが、何で侯爵夫人があんなところで賭け事を取り仕切っているんだ?」


「それはだな、レイナが大の金好きだからだよ」


後ろから突然現れて答えてくれたのは、紛れもなく父だった。


「げっ」

「おい、ルイ。げっ、て何だよ!俺がここにいてはいけないのか!」

「いいえ、そんなことはありませんよ父上。それよりも、お金好きとあそこにいるのはどういう関係があるのですか?」

「久しぶりだというのに素っ気ないな。まあいい」


父はごちゃごちゃ言いながら説明をしてくれる。


「レイナは昔からお金稼ぎが好きなんだよ。金金金と毎日言っている有り様だ。最初はアッセンバルド家に行かせるのもいいと思ったんだが、結果的にロシュフォール家から縁談が来たからそっちに行かせたんだ」

「嫌がられなかったんですか?」

「ロシュフォール家とは仲は昔から良い方だし、婚約相手とはお互い顔見知りだったらしい。レイナが一部の家計を自由に使って良いという条件で了承したんだ」


・・・そこまで金が好きなのか。


「で、何であそこで取り仕切っているかというと、そもそもこの名物となっている体育祭の賭け事はレイナが作ったんだよ。しかも学生のときに」

「・・・本当ですか!」

「元々学生時代に勝手にやっていたらしいが、それをゴリ押しで名物化した。集客という意味では大きく貢献しているから、学園も何も言わないんだよ」


そんなことがあったなんて。


「確かそれは十数年前だったかな」

「結構歴史は浅いんですね」

「でも、その短期間で大行事として帝都で広まった手腕は、俺の妹ながら褒めざるをえないな」


どんだけ金が好きなんだ。


僕たちが話していると、やっとこちらに気付いたのか叔母が走りながら駆け寄ってきた。


「お兄様、お久しぶりでございますわ」

「ああ、中断させてすまないな。久しぶりだ、レイナ」


近くで見ると意外にも高身長で、その佇まいは綺麗だった。


流石ブルボン公爵家の出だな。


「初めまして、叔母上。ルイ・デ・ブルボンでございます」

「お初にお目にかかります。ルイ兄様の異母弟で従者をしております、アルスと申します、レイナ様」


僕とアルスの顔をじーっと見た後、突然頭をワシャワシャと撫でてくる。


「へぇ〜〜、中々立派な二人じゃん。それで二人とも、金は好きかい?」


・・・・・はい???


「まだまだ君たちは子どもだから金というものの魅力に気付いていないようだね。だから、これからたっぷり教えないとだな」


急なことで困惑して父の方を見ると、やれやれと言った感じで肩を竦める。


きっとこれが平常運転なんだろう。


「そもそも、この世で最も偉大なる発明は貨幣制度。物というものに価値をつけ、物々交換という何とも公平性にかける時代から進化させたのだ!」


熱く語っている姿は、貴婦人から全くかけ離れている。


「それで、叔母上」

「さっきから気になっていのだけれど、私はまだ30よ。叔母と言われるほどの年じゃないわ」

「いいえ、僕から見たら叔母ですよ」


じとーっと見られたが、すぐに目を逸らされた。


「そうそう、こんなことをしに来たのではなかったのね」

「???」

「さて、早速だけど試練を始めるわ」


試練???


「当主になる同意をかけての勝負。ずばり、今回の賭け事で私に勝てば同意してあげる」


急展開すぎなんだけど。


「どうして急になんですか!」

「いや、貴方が弟を倒したと聞いたからね。本当はまだ早いと思ったけど、あの試練を乗り越えたなら大丈夫だと思ったのよ」


だとしても、試練が運頼みっておかしすぎだろ!


もっと大事なものじゃないのかよ!


「チッチッチッ、甥っ子よ。君は分かっていないわね。体育祭の賭け事よ。貴方の資質が試されるのよ」


どういうことだ?


「私と貴方はどこのクラスが勝つかとかそういう賭けをするわけじゃない。ずばり、貴方のクラスが優勝するかどうかの賭け事。貴方は勝つ方に、私は負ける方に」


へぇ〜〜随分簡単だ。でも、それなら、


「僕が全部出れば勝ち確だ!」

「ふふふ、それはありえないわ。追加ルールとして、貴方とアルス、そしてもう一人の魔法を使える従者ちゃんは出てはだめよ」


な、何だと!


「これは当主としての資質を試すものよ。貴方の頭と統率力で勝たなければいけないの」


中々の難問が来たな。


「父上、こんなんでいいのですか?仮にも次期当主を決めるものですよ」

「まあ、普通はこんなもんだ。それぞれに任せられているからな。俺の時だって、釣り対決をさせられたんだぞ」


なるほど、それと比べればまともかもしれない・・・のか?


まあ、いい。これに勝てば次期当主に一気に近づけるというわけか。


それなら出てやるのもやぶさかではない。


「いいですよ、受けて立ちますよ。まあ、仮にもSクラスですから、簡単だとは思いますけど」

「ルイ兄様、それは違います。今年の4年生はかなりの強敵です。昨年までは第二皇子殿下のクラスの影に隠れていましたが、全体のレベルでいうとかなり高いです」


体育祭なんて見たことも聞いたこともないからそんなことは知らん!


ただ目の前の奴らを踏み潰していくだけだ!



こうして体育祭が幕を開けた。



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