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第226話 体育祭

2章に入りました!



6月下旬。


その日は暖かな風の吹く、とても気持ちの良い朝だった。


眩しい太陽がカーテンの隙間から微かに覗き込み、僕を起こそうとする。


意識はあったが、それでもここで起きるわけにはいかない。


なぜなら今日は休日。


最近はマリーの監視などでゆっくりとした休みを取れなかったため、気が済むまで寝ることに決めていた。


もう一度意識を落とそう―――


「ルイ兄様!起きてください!」


突然アルスが僕の部屋に入ってくる。


苛つきながらも睡眠をやめるわけにはいかない。


「ルイ兄様!早く起きてください!学校ですよ!」


はぁ!?こいつは何を言っているんだ?今日は休日じゃないか!


カレンダーにも、学校の予定表にも書いてある!


「ルイ兄様、本当に学校があるのですよ!早く起きてください!」


遂には僕の肩を揺らしてきたアルス。


流石に堪忍袋の緒が切れて、僕は勢いよく飛び起きる。


「今日は休みだろうが!!!」

「いいえ、残念ながら休みではありません」

「はぁ!?カレンダーにも―――」

「それは自分が作った偽物です」


・・・こいつ、何を言っているんだ?カレンダーが偽物?


「ええ、そうです。今日と明日は体育祭の日でございます」

「た、体育祭だと?な、何なんだ?」

「はぁ〜〜〜、だから黙っていたのですよ。一昨年、勝手にサボりましたよね」


ギクリ!


「年に一度、2日間で行われる、学年クラス対抗で競い合うイベント、体育祭。多くの親が見に来て子どもの成長を実感するのが普通です」

「そ、そんなものがあったのか!」

「昨年、父様たちが来たにも関わらず、お一人で近くのダンジョンへと行きましたよね」


そんなこともあったな〜〜。


あまりにも面倒くさいからサボったんだった。


そもそも、どうして僕のような強くて高貴な者が下民と争わなければいけないんだ。


僕が負けることなど万に一つも無いんだから。


「はぁ〜〜、いいですか。今日はその体育祭がございます」

「騙したのか!」

「騙したことは謝ります。ですが、これは父様の、つまり当主命令でございます」

「ち、父上なんて、」

「奥様も来ております」


・・・母が来ているのか。だったら逃げ場など無い。


「ルイ兄様、それでは行きますよ!」


ニコニコの笑顔を向けてくるアルスを忌々しく思いつつも、逃れることができないと肩を落とすしかなかった。




さて、馬車で登校した僕たちはその体育祭の規模を実感した。


登校するときには多くの人たちが吸い込まれるように校門へと入っていった。


大人も子供も年代様々で、一昨年の学園祭を思い出す人混みだった。


「ふふふ、まるで人がゴミのようだ!わははは」

「・・・また言っていますよ」


僕の渾身のボケはやはり今回も理解されずスルーされた。


まあ、いい。


「それで、アルス。この体育祭はどんな競技があるんだ?」


なにせ去年参加してないからな。全く分かっていない。


「色々と行われますが、一番の目玉はやはり武闘大会です。それぞれのクラス代表者三名によるトーナメント戦を行い、順位によって得点が与えられます」

「得点?」

「全ての競技には順位ごとに得点が割り振られ、それによってクラス順位がつけられます。上位に入ると、色々と景品が貰えるのです」


なるほど、それを目指して皆が目指すというわけか。


と、言うよりもその栄誉が欲しいのかな?


「ちなみに一昨年はどこが勝ったのだ?」

「第二皇子殿下のクラスでございます」


二学年上のSクラスか。それは当然か。


よし、今年はぶっ飛ばしてやろう!


「体育祭に出れるのが四年生までなので、残念ながら今年は第二皇子殿下は出場されませんよ」


チッ、じゃあ楽しみが何も無いじゃないか。


「ルイ様、この体育祭ではとあることが行われているのです」

「何だ?面白いのか?」


レーナに質問をする。


「賭け事ですよ。それぞれの競技及びクラス順位の予想。それの賭け事が許可されているのです」

「だから大人も多かったのか」

「ええ、年に一度の大きなイベントですからね。皆が注目をするのですよ」


まあ、僕には関係のないことだ。


賭け事なんてやってもマイナスにしかならない。


勝ち組なんてほんの一握りだけ。


そんな不確定なこと、やるはずがない。


「ルイ兄様、じつはどうしても会わせたい方がいるのですよ」

「嫌だ、僕は帰る」

「そう言わずにお願いしますよ!」



僕は無理やりアルスに第一運動場裏へと連れて行かれる。


着くとそこには大きな人混みができており、皆が壁に貼られている紙を見つめながら真剣に何やら書き込んでいる。


「ここが賭け場です。ここでお金を皆が出すのです」


なるほど、だから活気に溢れていたのか。


「それで、会わせたい奴っていうのはどいつだ?」

「あの方です」


アルスが指さしたのは、大きな声で集客をしている貴婦人だった。


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