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第225話 屋敷 (アルス視点)

一学期が始まって一ヶ月。


「なあ、アルス」


ある日、ルイ兄様がふと何かを思ったように自分に言葉を掛けてくる。


嫌な予感がしたが、答えない方が面倒くさいので応じることにした。


「・・・何でしょうか?」

「何かさ、この屋敷って狭くないか」


自室の天井を眺めながら呟く。


「・・・ルイ兄様。冗談を言わないで手を動かしてください。やるべきことがたくさんあります」

「冗談を言っている訳ないだろ!本心だ!」


じーっとこちらを睨みつけてくる。


自分はルイ兄様の方に向き直り、事実を伝える。


「いいですか、ルイ兄様。屋敷を大きくするためには、別の場所買うか、周囲の土地を買って拡張するしか無いのです」

「それぐらい知っている」


・・・・・・


「いいですか、費用も多くかかりますし引っ越しも大変なのです」

「ああ、分かっている。だが、やっぱり小さすぎる」

「・・・ルイ兄様を入れてこの屋敷には20人ほどがいます。部屋数は40以上あります。庭は4つ、噴水5つ、運動場に舞踏会用の別館までもあります!どこが狭いのですか!」


使用人の数は足りないぐらいだ。


それぐらい大きいにも関わらず、


「普通はこのくらいの大きさはデカいという認識なのです!まずですが、この帝都で一番大きな屋敷ですよ!」


代々のブルボン公爵家が使っている歴史ある物。


「だが、王宮よりは小さいぞ」


この人は何と比べているのだ!


「王宮ほどの大きさの屋敷は無理ですよ!そのような空き地も売り出してある土地もありませんし、財力的にギリギリです」


・・・まあ、ルイ兄様の全財産を使えば行けなくもないのだけれど。


「そもそも、王宮に喧嘩を売るようなものですよ」

「大丈夫だろ、簡単には手出しをしてこない」


・・・そうかもしれないけど、


「とりあえず、この話はおしまいです!そんなことをしたら父様にも叱られますから!」


自分は何とか説き伏せようとした。だけれど、ルイ兄様が止まるわけがない。


「屋敷を大きくするには利点がある。まず、面会に来る相手を威圧できる!そして広くなれば新しい運動場を造れる」

「???運動場を作るおつもりなのですか?」

「ああ、今のところの二倍ぐらいの大きさだ。正直、今の大きさだと僕達が本気でやったらすぐに壊れてしまうからな。より強固で広々と使える高性能な建物に建て替える。プールや食堂、休憩室などを完備するぞ」


思わず聞き入ってしまう。


確かに今のところは学校にあるような構造で、更衣室とシャワー室しか無い。


だが、もっと大きくなれば・・・


「いやいや、そんな土地がまず無いじゃないですか!」

「お前は考えが甘いぞ。追い出せばいいじゃないか」


・・・そうだった、そもそも価値観も思考も全く違う人だった。


「隣は仮にも侯爵と伯爵家ですよ。そう簡単に応じはしませんよ」

「大丈夫だろ、なにせ僕は公爵家の人間だからな!」


また始まった。


「僕が一筆すればすればどこかに行ってくれるだろう。まあ流石に普通に追い出したら父になんか言われるから、場所ぐらいは用意してやれ」


・・・これって決定事項なの?



その後諸々を話し合った後、早速隣の屋敷へ交渉しに行った。


最初は難しい顔をしていたが、こちらが土地を用意することとちゃんとした値段で買い取ることを伝えたらあっさりと承諾した。


そもそもブルボン公爵家に逆らえるような貴族なんてまずまずいないから、まず断られることはない。


もう一つの方も同じく同意した。


その後はレーナと共に金の計算などをして、ルイ兄様の要望により二ヶ月で全てを完成させた。



「よくやったぞ、アルス!褒めてやろう!」


できたてほやほやの運動場内で大声を出すルイ兄様。


新品のため、木と石の混ざりあった良い匂いが鼻に届く。


「ルイ兄様、これ以上の無茶は言わないでください。こちらは振り回されてばかりで困っております!」

「それをなんとか頑張るのが配下の仕事だ」


・・・時々殺意を覚えるが、いつも何とか抑え込んでいる。


「さて、早速魔法を撃ってみるか!」

「あ、いや、ルイ兄様、まだ―――」


自分の言葉を最後まで聞かずに、普通に聖級魔法を放つルイ兄様。


魔法は止まることなく新築の建物を破壊する。


「・・・おい、耐久性はどうなっている」

「まだ結界を張っていないのですよ!今言おうとしたんですよ!」


はぁ〜〜〜また建て直さなくちゃいけないのか。



後日、父様からお叱りの手紙が届いた。


何も告げずに急に屋敷の拡張をしたことについてだ。


その手紙の中には、「自重させろ」と書かれているが・・・・父様は分かっていない。


ルイ兄様は自重させると何をしでかすかわからない、爆弾だ。


で、あるならば伸び伸びとさせた方が絶対安全。


自分はそっと手紙を暖炉に入れて燃やした。


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