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第222話 報告会議 (三人称視点)

「それでは、報告会を始める」


太陽の光の入らない、地下深くの会議室。そこで、四人の魔法協会の幹部が会議を始めた。


「まずはテッペンから。アメルダ民主国での動向について報告してくれ」


会長のフアンズが進行をする。


「分かりました。アメルダ民主国でのルイの動向ですが、はっきりと言って報告することが多すぎますので順々にピックアップをしました」


一呼吸を置いて続ける。


「まずは奴隷を買ったこと。そちらは後ほどアリオスより報告があると思います」

「はい、後ほど」

「それからしばらく、大きな出来事は起こっておりません。ですが、相変わらず好き勝手やっていたらしいです」

「具体的には?」

「教師を金で買収したり、技師の人を脅したり色々と」


部屋には失笑が流れる。


「その後ですが、二学期になると色々と動きが大きくなりました。特に重要なのが3つ。1つ目はダンジョンの破壊です」

「ダンジョンの破壊!!!」

「驚かれるのは無理もありませんが、裏取りはできています。理由は未だに不明とのこと」

「・・・続けてくれ」

「2つ目はアメルダ民主国の選挙への介入」

「・・・アメルダ民主国が掲げているしょうもない民主主義は、簡単に介入されるのだな」


貴族出身だけあって、フアンズは隣国を嘲笑った。


「これに追加の情報ですが、どうやら政権にも介入されているとのこと。数人の大臣たちが不祥事などで辞職しているらしいです」


アリオスが付け加える。


「ルイがどうして介入したのだ?」

「それは残念ながら分かりません」


「話を続けます。最後のものですが・・・これが最も大きいかもしれません」

「何をやらかした?」

「留学した先のクラスメート全員と血の契約を交わしたらしいです」

「「「血の契約!!!」」」


無理もない。血の契約など、普通は行うことのできない禁句に近いものだ。そんなことは、このフランシーダ帝国でも過去に数例しかない。


「ははは、神への冒涜に等しいぞ。血の契約をクラスメート全員にだと・・・」

「噂ですが、進学コースとの決闘にも勝ち、彼らとも血の契約を交わしたらしいです」

「本当のことなのか?」

「正直、綺麗に隠蔽をされているため確証は得られません。ですが、行われていても不思議ではありません」


フアンズは天を見上げながら呟く。


「大きな問題になるぞ。スタンフォルス高等の進学コースと言えば、エリートを排出するところ。将来は国の中核を担う者たちばかり。そんな人達をもし手駒にしたのなら・・・」

「ええ、確実に脅威です。ブルボン公爵家にアメルダ民主国が加わればその戦力は計り知れない。帝国を脅かす存在になりかねないぞ」


男たちの会話に、不気味な笑みを浮かべていたイルナが入ってくる。


「でも、どうにもできないよね?だって魔法協会は先に手を出してしまったから」


苦々しく思いながら三人は黙り込む。


「ふふふ、本当に馬鹿よね。貴方達が手を先に出してしまったから、向こうには大義名分がある。自分たちの傲慢さにツケが回ってきたわね」


高らかに笑われる。


「あ、そうそう。リリスちゃんには特に変わったことはなかったわ。まだ、後ろに誰がいるか(・・・・・・・・)までは分からないわ」

「そうか、報告ご苦労」


「それでは自分から新たに加わった奴隷について報告を」


アリオスが立ち上がり、代わりにテッペンが椅子に座る。


「本日、模擬戦をやらせましたが・・・正直に申し上げますとかなり危険です」

「獣人族とは聞いているが、それほどまでにか?」

「まず、スキルに隠密を持っております。しかも、高度で自分でも認識できないほどの効果です」

「暗殺系統か」

「ええ、更にどうしてだか義手をしております。その義手も厄介でして、周囲から魔力を吸収して魔法を放てるような仕組みをしてると考えられます」


獣人は身体能力が高い代わりに魔力適性が人間よりも低く、高度な魔法を本来なら使えないとされている。


「あくまで予測ですが、その義手は聖級魔法までなら耐えうると思います」

「アリオスが認識できないほどの隠密スキルに聖級魔法まで使える義手」

「もう一つ言うと、身体能力も普通の獣人からは頭一つ抜けていると考えて良いと思います」

「・・・・はぁ〜〜〜」


フアンズは長いため息を吐く。


ただでさえ、ルイの周りの戦力は強力すぎる。


ルイ本人はもちろん、近接戦闘のアルス、魔法ならルイほどの実力を持つレーナ、帝国最強の騎士と言われているオールド、最強執事のセバス。


ブルボン家の地位に財力を付け足せば、魔法協会から見ると途方もなく高い存在となっている。


だが、彼らにも使命というものがある。


その一つが精霊術士の監視。それは数千年間受け継がれてきた伝統でもある。


「イルナ、引き続きリリスの監視を頼む。なにか変化がないか、誰かと接触はないか、問題を起こしてないか。随時報告をしろ」

「そうキツく言わないでくださいよぉ〜〜。私達精霊術士の一部はあなた達と組んで生存してきましたよぉ〜〜〜。ですからぁ〜〜、そう警戒しないでくださぁーい!」


延び延びと言うイルナを無視するように、三人は立ち上がって部屋を出ていった。




「何か前もこんなことあったなぁ〜〜〜」


またも会議室に取り残されたイルナは、テーブルへと腰掛ける。


手には隠し持っていた、精霊語の書かれた石板。まじまじと見ながらふと周囲を見渡した。


「相変わらず、この汚らしい部屋には精霊さんがいないのよねぇ〜〜」


決して言葉通り部屋は汚くなく、むしろ何も無い寂しい部屋である。


でも、精霊術士にとっては居心地の悪い場所。


「あんなクズ共と運命をともにするわけにもいかないし、そろそろ計画に移るかなぁ〜〜」


天井を見上げながら呟いた。


「『我々の希望は一つだけ。この世界を再び精霊術士の世にすること』だっけ?あの人が言っていた理想は確かに魅力的だけど・・・もっと面白いことをしないと。もっと、高みを目指さないと。ふふふ」


不気味に笑うイルナ。



ルイはまだ理解していない。この世界、精霊術士の闇の深さを・・・


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