第221話 テラの模擬戦
久しぶりの投稿です!
さて、久しぶりの授業。
と言っても留学中もほとんど学習内容は同じだったため特に困るということはなかった。
座学は相変わらずつまらず、僕はあくびをしながら聞いていた。
二時間目に入ると、次第に眠気に襲われていく。船を漕ぐようになり、気付いたら授業は終わっていた。
さて、三時間目は実戦授業。
僕がいない間に全員上達していたらしい。まあ、僕には及ばないけど!
四時間目になると、一対一の模擬戦が行われることになった。
「じゃあ、誰かやりたい奴はいるか?」
「はい、僕がやります」
僕は真っ先に手を上げた。久しぶりに誰かをボコボコにできると思ったが・・・
「駄目だ、ルイ。お前は強すぎるから今後の模擬戦はやらなくていい」
アリオスがキリッと僕のことを睨みつけてくる。
「他にいないのか。あ、そうだった。新入生のテラがいたな」
「ニャ!」
急に名前を呼ばれてビクリとするテラ。
アリオスに手招きをされて恐る恐る前に出る。
獣人ということで皆が物珍しそうに見つめていて、より縮こまる。
「さて、テラとならやりたい奴はいるか?」
小賢しい魔法協会の手先教師め!
僕が新たに手に入れた護衛の実力を見極めよういう魂胆か!
「先生、俺にやらせてください!」
そこで勢いよく手を上げたのは、見覚えのある雑魚。
「お、カマセか」
僕の初模擬戦の相手、平民のカマセ。よく名前を覚えていたと自分で自分を褒めたくなる。
あまりここ二年で目立たなくなったが、一応はクラス内で中間ぐらいに位置する実力者。
流石平民にしてSクラスに入っただけはある。
まあ、雑魚なのは変わりない。
前へと出てきたカマセは自信満々で前へと出る。
いつも通り二人を囲うように結界が展開される。
「それじゃあ始めてくれ!」
アリオスの合図で二人が構える。
しばらく睨み合っていた二人だが、先にカマセが動き出した。
「二年前の恨み!」
そう叫んで剣を振り上げる。
一歩前に出るが、そのスピードは凄まじく二歩目でテラの目の前まで行く。
だがテラはすぐさま反応して、後ろへと避ける。それと同時に義手を戦闘モードにする。
「な、何だそれ!」
全員がテラの義手が変形したことに驚く。
テラはそのまま距離を取って魔法を発動させようとする。
そうはさせまいとカマセは空振った勢いのまま、闘牛のように突っ込んでいく。
だが、それは罠。
それに気付いた人は数人しかいないと思う。
詠唱するのをすぐにやめたテラは、突っ込んでくるカマセを避けて横からその無防備な体に一発お見舞いをする。
モロに拳を食らったカマセだが、食らう瞬間に身体強化をしたためダメージを軽減する。
それでも横へと吹っ飛ばされて苦しそうにしている。
だが、すぐに立ち上がって剣を構える。
「クソ・・・・???どこに行った」
試合を見ていた生徒たちもざわざわとしだす。
確かにさっきまでいたはずのテラがいなくなっていた。
忽然と消えたように、結界内にはカマセしかいない。
辺りを必死に探すカマセだが、見つけられない。
それもそのはず、あのセバスやこの僕でさえテラの隠密には手を焼く。
別に半径五メートル以内に来たのなら感覚的に見つけられるが、かくれんぼとなると無理。
テラの隠密スキルは、アルスが鍛えたおかげで世界一と言ってもいい。
まあ、僕には敵わないけどな!
「何処に―――」
次の瞬間、カマセの背後の虚空から突然テラが現れると思いっきりがら空きの背中を殴る。
「がはっ」
今回は身体強化も間に合わず、そのまま前へと吹っ飛ぶ。
結界に当たったカマセは、ピクリとも動かなくなった。どうやら失神したらしい。
「勝者、テラ!」
「おお〜〜!」と歓声が上がる。
それにしてもカマセはこれで二度目の失神だな。
無謀にも挑んだ報いだ。
テラの戦いを見て、アリオスは苦々しそうな顔を浮かべる。
目が合うと、気まずそうにため息をついた。
「テラ、すごかったよ!」
「ありがとニャ!」
えへへ、とアルスに褒められて嬉しそうに笑みを浮かべた。
一応勝ったのだ。主人としては褒めなくては。
何よりも僕の顔に泥を塗らなかった。
「よくやった。褒めて遣わす」
僕が褒めると、少し間をおいて返答した。
「・・・ありがとニャ」
どこかめんどくさそうな声色だ。
ムカつくが、そんなことでは怒らない。
使える駒である限りは僕は寛容だ!
こうして三年生の新学期の初日が終了した。




