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第190話 交渉③

まず最初に話をするのは僕寄りの議員代表。


「こんにちは、ルイ様。この度はお招きしていただきありがとうございます」


脂ぎった顔から滴り落ちる汗を拭きながら挨拶をする。


「私は外務大臣をしているタルハンドと申します」


気持ち悪い笑みを浮かべながら自己紹介をする。


見た目は脂ぎった豚そのもので・・・いや豚に失礼なぐらいに太っており、帝国でもそうそうお目にかかれ無い巨体だ。


成金趣味の下品にド派手に宝石を散りばめたジャケットを着ているが、パッツパツで思わず笑ってしまう。


「で、僕にいったい何の用で来た?」


僕は目の前のド派手脂野郎を一瞥して聞く。


どうせ向こうは僕を生意気な糞ガキだと侮っているのだろう。


だったらこっちだって相手を侮ってやるさ。


どうせ民主主義を語る偽善者たちだ。


「なるほど、直ぐに本題に入りますか」

「ああ、そうだ。僕も時間が無いのでね」


ピキッと何かが切れる音がしたけど気のせいだろう。


まさか僕に向かって怒鳴り散らかす奴なんていないもんな!


「それで、用件を早く言え」

「は、はい。実は私めの政敵がおりまして。法務大臣の男なのですが・・・・」

「そいつを蹴落としたいと?」

「はい、そうです」


本当に自分の欲望に素直な奴だ。羞恥など微塵も感じられない。


そこは褒めてやる。


「どうして僕なんだ?」

「それはもちろん、ルイ様が重要な秘密を握ってらっしゃるとお聞きしたので、はい」


どこから漏れたんだ!!!・・・・まあ僕が敢えて漏らしたのだが。


「いいだろう、その代わりの対価だが・・・我がブルボン家との貿易拡大でどうだ?」

「それはそれはもちろん!貿易担当大臣は私の身内の者なので直ぐにできますよ!」


ニヤニヤとする。


どうせ心の中でほくそ笑んでいるのだろう。


自分の懐が痛まずに利権を拡大できると。


貿易をこちらが独占したところでド派手脂野郎は何も言われないからな!


とんだクズだ!



さて、交渉が成立して三時間後。


今度はメガネを掛けたキリッとした男が入室してくる。


先程の奴とは違いスラッとした体つきで正装をしっかりと着こなしている。


「で、お前は誰だ?」


先程と同じような態度でそいつと対面する。


相手は姿勢を正し綺麗に頭を下げる。


「ルイ・デ・ブルボン様。お初にお目にかかります、外務大臣補佐を務めますアズマルトと申します」


相手は先程の脂野郎の側近である。


そんな奴がどうして個人的に僕を訪ねてくるのか?


まあ、答えは簡単。


「外務大臣、タルハンドをどうか引きずり下ろすために力を貸してください」


もちろん政争だ。


僕寄りではあるが、今の上司に不満を抱いている優秀な男。


僕がタルハンドの弱みを握っていると聞きつけてコソコソとやってきたのだろう。


もちろん、それは僕が漏らしたことだ。


「どうして引き下ろしたいんだ?」


僕は分かっていながらも聞いてみる。


するとアズマルトは姿勢を正し、こちらを真っ直ぐ見て延々とタルハンドの悪口を言う。


よっぽど溜まっていたのか段々と口が悪くなる。


「以上のことから、私は―――」

「いいぞ、ただし準備が諸々と必要だ。一週間ほどしたら証拠を送ってやる」


即決されたことに驚く。


「対価はいらん。まあ、もしなにかしてくれると言うなら後で連絡してくれ」


対価もいらないと聞いてますます目を大きく開くアズマルト。


傍らにある分厚そうな資料を見るに、どう説得するか何時間何日もかけて考えたのだろう。


まあ、そんな僕にとったらどうでもいい。



交渉が終わりアズマルトが帰っていくと、傍らで聞いていたテラひょっこりと顔を出して質問をする。


「何でさっきの男には無償で渡したニャ?」

「ふっ、猫は全く分かっていない」


僕は仕方無しに説明をする。


「いいか、僕はこの国を荒らすために奴らと交渉をした。疑問に思うべきなのは何故無償情報を渡したかじゃない。何故一週間も待たせたかだ」


首をしばらく傾げるテラ、だが、不意に耳をピンと立てる。


「まさか!」

「そうだ、あの脂野郎が法務大臣を失脚させて貿易担当大臣にブルボン家との貿易を拡大させる、までをやるのが一週間ほど。そしてその後あいつを引きずり下ろす」


こちらは何も痛まない。


貿易は拡大できるし、アズマルトが後継として外務大臣になれば大きな貸しができる。


「だから無償で?」

「そうだ、ああいう真面目な奴ほど恩を大きく感じるからな」

「でも、貿易ってそう簡単に変えられるの?」

「できるんだろう。それだけこの国は腐っている」


よし、じゃあ、次に行こう!


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