第183話 再再再再戦 (アルス視点)
「対象は風呂に入ったニャ」
「内通しているメイドが服を洗うと偽って着ているものは奪った」
自分とテラはお互い頷き合う。
「作戦を開始するぞ!」
「ニャー!」
一階と二階の天井に潜んでいた自分たちは急いで下へと降りる。
そして、急いで浴室へと入る。
しかし、そこにすでにセバスさんはいなかった。
浴室の窓が開いていたことから、あそこから逃げたのだと分かる。
「駄目か、流石に―――」
「対象が逃げているとは限りませんよ」
気付けなかった。
背後を取られた自分とテラはそのまま気絶をさせられた。
「前回の反省は油断だね」
「そうニャ。まさか戻ってくるとは思っていなかったニャ」
今回は食事をしているところを襲う。
前回はセバスさんの動きを確認しきれていなかった。
だから、今回はしっかりと把握する。
扉の外で仲から合図を待つ。
前回も協力してくれたメイドの人が中でセバスさんのそばに控えている。
『最近はどうですか?』という言葉が聞こえたら―――
「最近はどうですか?」
中からその声が聞こえた瞬間、二人で一斉に中へと入る。
気配は消しており、万が一に備えてダミーを天井、隣の部屋に置いていた。
いくらセバスさんでも複数の気配を感じ取って見つけるのは無理なはず。
そう意気込んで、勢いよく入ってセバスさんがいるであろう場所へとナイフを投げた。
だが、そこには誰もいなかった。
代わりに部屋にいたのは協力してくれていたメイドだけ。
こちらに気がついて、いそいそと隅の方へと行く。
・・・そうなるとセバスさんは何処に―――
後ろを振り返ろうとした時には遅かった。
すでにナイフを構えていたセバスさんが立っていた。
そして目にも留まらぬ速さで掠るようにナイフで首を狙ってくる。
その瞬間、眠気に襲われた。
おそらくナイフに睡眠系の毒でも仕込まれていたのだろう。
体の自由がどんどんと失われていく。
「どう、して」
耐性のないテラはすでに眠りに落ちてしまっている。
「いいですか、その人が本当に自分の味方とは限らない。一番信用すべきは自分自身。これが重要です」
!!!!まさか、あのメイドはセバスさん側なのか。
・・・・・・確かに前回も失敗した。
あの時、服は奪っていたはずなのに着ていた。
つまり、服は奪っていなかった。
報告をしてきたメイドは嘘をついていた。
やっぱり敵わないな・・・・
「前回も失敗をしてしまったニャ」
「そうだな。出来れば今度は自分たちだけで倒したい」
「そうだな、あいつには死んでもらわないといけないからな」
テラの自室で話をしていた自分たちの背後にぬっと現れるルイ兄様。
驚いたテラは、思わず義手を戦闘モードにしてルイ兄様へと攻撃してしまう。
それをバリアで防ぎ、何事もなかったように話に加わってくる。
「・・・・どうしてルイ兄様が?これはテラとの連携を高めるためにやっていることなのですが」
「そんなの知らん。僕がやりたいだけだ。あの小煩いジジイを殺したい!」
まあ、ルイ兄様らしい。
ルイ兄様嫌いのテラは警戒を解かないが、話を進める。
「参加したからには策があるのですか?」
「ああ、あるとも。僕がすれ違いざまにセバスへ魔法を一発お見舞い。その隙にお前らが倒す。それだけだ」
まあ、単純だけどルイ兄様を最大限に活かせる。
「本当に参加されるのですか?」
「ああ、参加するぞ!何なら僕の魔法で方を付ける!」
・・・不安でしかない。
そして作戦の日。
自分とテラは廊下を通るセバスさんに気付かれないように屋根裏へ待機。
魔力、気配を消すのに全集中する。
「お、セバスじゃないか」
「ルイ様、こんにちは」
下で二人が話しているのが聞こえる。
「そうだ、セバス。お前にプレゼントを送ろうと思っている」
「プレゼント?」
「ああ、【ライトブレス】!」
・・・・ちょっと待て!
「テラ!ありったけのバリアだ!!!」
「え!?」
本来ルイ兄様の魔法は詠唱をしなくても放てる。
だが、唯一聖級だけは詠唱短縮をしないとできない。
今のは明らかな詠唱短縮。
つまり、ルイ兄様は広いとはいえ屋敷の通路で聖級魔法を放ったのだ。
ドガァァァァ!!!!!!!!
大きな音を立てて足元にヒビが入る。
この屋敷は強化魔法で普通よりも頑丈に出来ているが・・・それでもヒビが入った。
「お、セバス!死んでいないのか!」
壁越しでも分かる、楽しそうに言うルイ兄様。
「ルイ坊っちゃま・・・」
この後、三人がこっぴどく怒られたのは言うまでもない。
・・・何でだよ!!!!!




