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第18話 元ヒロイン(レーナ視点)

「「レーナ、おかえり」」

「ただいま、お父様、お母様」


笑顔で両親が私を出迎えてくれる。両手を大きく広げた父の胸の中に、私は飛び込んだ。


「お母様、今日のお夕食は何ですか?」


「今日、魔法のことで褒めてもらいました!」


「先月植えた花が夕方、咲いておりました!」


その日起きた出来事を両親に話すと、毎回大きなリアクションを取ってくれる。


それが私にとっての幸せだった。





『アルダリース伯爵家!脱税の隠蔽、密貿易などの罪で逮捕する』


一年前、突然帝国騎士が乗り込んできて両親逮捕。そして・・・


『アルダリース伯爵家の領地及び爵位の没収とする』


突然の没落。


幸せだった私の人生は終わりを告げた。




それから一ヶ月後。


路頭でひもじい生活をしていた私達家族の生活の金が無くなり、私は売られた。


両親は昔のように優しくなく、自分たちのために娘の私を金に変えた。




それを私自身も受け入れた。




奴隷になってからは常に牢の中に入れられた。


色々な市場に連れてかれたが、全く売られなかった。


だが、公都で売り物として出された。


そして、ブルボン家の嫡男に買われた。



私は奴隷になってから常に心を無にしていた。


いや、感情が無くなった。


元伯爵令嬢だった私にとって、奴隷生活は耐え難いもの。



最初の頃は両親の名前を呼びながら毎晩泣いて、その度にムチで叩かれた。


死にたい気持ちで一杯になり、でも死ぬ勇気もなく。


どこかで助かると、両親が買い戻してくれると、何処かで期待していた。


そして一年が過ぎ、私は他の人のものになった。



常に考え続けたことがあった。



どうして私がこんな目に遭わなければいけないのだ、と。


両親は何故不正という罪を被せられたんだろうか?


どうして両親はあんなにも変わったのか?


私はどうなってしまうのか?




何故何故何故何故何故何故




答えなんて辿り着けない。


探すことも許されない。


私はちっぽけな奴隷なのだから。



ブルボン家に来てからも感情は出さなかった。


言われた仕事をこなし、主の要望に応える。


奴隷として扱われてきた一年間で、私は生まれ変わってしまった。


他人の言う通りになる人間に。




主であるルイ・デ・ブルボンは少々変わっている。


二年前にあったダンスパーティーでは遠目で見たことはあるが、自尊心の高そうな顔をしており、擦り寄ってくる令嬢達を見て、当然とばかりの振る舞いをする。


私が嫌悪する貴族そのものだった。


大きな声で自分がどれだけ凄いのかを語り、褒められると気を良くしていた。



公爵家だったため、私も軽く挨拶に行った。


が、私のほうが歳上なのに上から目線で話してくる。


自分の生まれを鼻にかける、ただのボンボンクズ貴族と思っていた。


だが、奴隷として働いていて実際は少し違うと感じた。



人を見下す言動と家柄を自慢する所は変わらないが、凄い努力家だった。


毎日魔法の練習をして、勉強も毎日欠かさない。


特に魔法。


同じ年代ではずば抜けていて天才だと持て囃されていた私を凌駕する素質と実力を持っていた。


聖級魔法を使え、詠唱短縮も実現。


自分が下していた評価が表面だけしか見ていないと気付かされた。


そんな才能も家柄も家族も持っている歳下の主に、私は嫉妬してしまった。



私には、もう何も残っていない・・・


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