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第168話 主人公② (リリス視点)

所変わって、フランシーダ帝国帝立学園。


入学式が終わった後のこと。


「ど、どうして、マリーがいるの・・・」


私は自室に引き籠もるとすぐに毛布に包まる。


確かにあれは妹、マリーだった。


そして私の存在にはっきり気づいていた。


でも、話しかけてきたのはあの一回だけ。


こちらに悪魔のような笑みで微笑みかけてきて、そのまま入学式のセレモニーが行われる体育館の中へと消えていった。


生徒同士の噂では新入生代表の挨拶までしたとか。


確かに、マリーならやりそうだし、やれそうだ。


マリーの魔法の才能は、私が負けたルイくんと同じぐらいだろう。


流石に無詠唱はできないかもしれない。


だが、私が知っている時点ですでに上級まで使えていた。


[なあ、リリス。あの娘がお前を家から追放したんだろう?]

「うん」

[・・・震えているのか?]


フィーンの指摘で手元を見ると、自分でも気づかないうちにたしかに震えていた。


[武者震い・・では無いな]


そう、私はマリーアを恐れていた。


私が家族から見放された原因だったから。


小さい頃、マリーと私の仲は悪くなかった。


姉妹でよく泥だらけになっては両親に叱られたものだ。


その頃は、無能者である私を蔑む者もほとんどいなかった。


だがある日、妹マリーに覚醒が起こったあの日。


人が変わったよう(・・・・・・・・)に彼女は私を見下すようになった。


突出した魔法の力•才能の出現は、ときに、その人間の人格、そして周囲の人間関係まで変えてしまう。


マリーは無能な私を蔑み、家族の中で私を邪魔者扱いし始めた。


それ以来、一緒に遊ぶことも会話することもなくなった。


そして、今まで優しかった家族も、使用人も、友達も、


全員が私を邪魔者扱いにした。


気づけば部屋に閉じ込められ、使用人の仕事をさせられる日々が続いた。


そして、最後は捨てられた。


マリーは私を家から追放した元凶であるが、


私は恨んでいるというよりも、マリーに対して恐怖感がある。


今度は何をされるのか?何を失ってしまうのか?


心に植え付けられたトラウマのような植物が、今また自然と私の中で生い茂り、大きくなっている。


[リリス、大丈夫か?]


クロが心配そうに聞いてくる。


いつもなら強がる私は、どう答えていいかわからず小さく頷くことしかできなかった。


[リリス、お前の過去はある程度知っている。だけど、その心の内までは僕たち精霊にも推し量れない・・・]


クロは続ける。


[でも、一つだけ言えることがある。僕らは主であるお前を裏切らないから。傍から離れたりはしないから。いつも一緒だ。だから、安心してほしい]


フィーンもタルルも頷く。


「そう、だね。うん、ありがとう!」


少しだけだが、心が晴れた気がした。



次の日。


憂鬱な気分で学校に登校した。


足取りは重く、周囲を警戒しながら進む。


[リリス!]


クロに言われたが、遅かった。


「あらぁ、リリス先輩!なんだか、コソコソされてますが、どうされたのですかぁ?」


ニッコリと地獄の天使のような笑みでこちらを見つめる。


一歳差ということで背はあまり変わらない。


「何をそんなに恐れているんですか?」


そう言って、こちらを凝視する。


黒いダイヤのような目だ。


「マリーア!お願いだから、私にはもう関わらないで!」

「ほほほ、元お姉さん。今の私たちの立場は平民と貴族ですよ。そんな高圧的に上から言わないでください。傲慢ですわ!」


まるでルイくんと似たようなことを言う。


私は無視してその場から立ち去ろうとした時、最も恐れていたことをマリーアは口にした。


「あ、そうだわ!伝えないといけないことがあったの。あなたの噂、学校に流しておいたから」

「えっ!?」

「元男爵令嬢であったことを・・・ね。ただし、家の恥になるから無能者であったことは黙っておいてあげたわよ。慈悲の心!」

「・・・・・・」


やっぱり、逃がしてはくれない。


「さて、では質問です!無能者であったあなたが、なぜ今、Sクラスの生徒なんですかぁ?」


人をおちょくるような不敵な笑みを浮かべるマリーア。


「それは―――」

「理由は簡単!あなた、精霊術士だからでしょう?」


!!!!


「今、何でそれを?と思ったわよね!それは、昔の姉さまの発言、大昔の文献、そして精霊術の特徴・・・などなど。一年は調べるのに時間がかかったけれど、それでやっと私も納得できたわ」


[リリス、この娘は危険よ!]


私は体全体が震えた。


どうして、師匠は私をこんな所に入れたんだろう!?


私はマリーの言葉をそれ以上聞きたくなくて、そのまま学校へと逃げていった。



それから三日後。


噂は学園中に広がり、私はまた孤独になった。


留学編2章終

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